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脈は途絶えた。

暗くなった夜道を街灯が照らす。ほのかに感じていた、自分の体で脈を打つリズムが「ありがとう、でも...」の切り返しと共に聞こえなくなっていた。

寒くなるこの秋の季節が嫌いだ、何かが終わったような気がするから。僕は少し乾いた気持ちにさせられた、彼女が言った「ありがとう」の言葉にありがたみが感じられなかった。期待みたいなものが明確に裏切られた気がして、脈があったと思えていたようなものは突然にも途絶えたかのように。

勇気は振り絞ってから、後悔に変わったりもする。穏やかに続いていたと思えていた日常も、どこかの拍子には終わりが告げられる。「でも...」の後に続いたのは、そんな惨めになった僕を励ますような言葉だったけど。そんなものは、後の方になって聞こえなくなっていた。

この関係に誤りとか。間違いのようなことはなかったのだと思うけど。いくら繰り返したとしても、必ず訪れていた結末だったのかもしれないのだと思う。これが自然的な流れで、特別おかしなことはないと思い、生い茂っていたものが全部枯れていく自然摂理と同じなように。

嫌われてなんかいなかったけど、好かれてもいなかったって。そんな曖昧な関係性たったと明確に分かってから、でも、それが明確になったおかげでハッキリ言えば諦めて欲しそうな表現を耳にして。後戻りとか、そういうのも何も無いのだろうと思わされた。

最近は、ますます空気が冷たくなってきた気がする。少し前までは、馬鹿みたいに暑い時期が続いていたのに。それに終わりを告げるような、そんな秋が来たのだと感じていた。季節は裏切ることがないように、一方通行に進んでいって、気がつけば必ず次の季節が来る。

何かが終わらせられる気がする秋は、もうすぐ冬が来るのだという知らせのようなものだ。

あの夜に、枯れた気がしたのだ。ふと芽生えた気持ちなんて、季節の移り変わりみたいなものだったのだと思う。ずっとそうした状態が続くわけでもなく、なるべくしてそうなったようなもので。それには逆らえることもなく、枯れる芽は必然的に枯れさせられたようなものだから。

暖かい時期を終えてから、肌寒い時期に変わっていく。何か情熱的なものが、じわじわと冷めていくような感覚になる。

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