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無邪気な態度をとる悪魔。

「今度、彼と結婚するんだ」そんな報告を彼女から受けて、僕は突然のことでビックリした。こういう時、普通の友達の感覚なら、きっと祝福をしてあげるべきだろうと思うから。

簡単なお祝いの言葉を言って、いかにも心の底から喜んでいるような顔を作り、どんどん体が怠くなっていくのを感じていた。これは自分の為になっているのか、そうすることで彼女の為になっているのか、何の為に笑っているかさえ分からない。

何で、今の今まで、まだ彼女と友達の関係を続けていたんだろう。何が知りたくて関わって、何に期待して会っていたんだろうか。ただ、きっと自分にこの気持ちが無ければ、もう少しちゃんと祝えていた。

この関係から、辛い感情を沢山味わってた。いつの間にか自分の中で育んだこの感情は、そのうちにも消え去ってくれると思っていたから、ムリしながら続けられていたものの。結局、最後の最後まで懲りず消えなくて癒えることさえなかった。

それにしても、そんな本音も彼女に言わず、ここまで平常心のフリをしながら関わり合いを続けられた僕は、自分のことながらに凄いと思う。どこかで気持ちが漏れてしまわないようにして、よくもまぁ、上手く関われていたものだと感心をする。

むしろ何故、ここまで払拭できなかった気持ちを、漏らさなかったんだろうって。どっかでこの気持ちをぶち撒けるように零して、関係なんてどうにでもすればよかったのかも知れないと、今さらながら後悔をしたりする。

こうしてる間にさえじわりじわりと、期待なんか失われていく中で、これから先のことを勝手に想像なんかして。

なんか、このまま僕は思い残しながら、一人で死んでしまうような気になる。たった一度の無駄な人生を送りそうな、そんな悲惨で嫌気のさす未来を想像していて。

でも、それはなんか悔しいから、いつか忘れられる、そう思いながら。いつになったら、忘れられるのか分からない感情に振り回されてる。

強いのか、弱いのか、分からない自分の心を抑えて、気力なんて失いながらも、なんとか今日も生きて。いっそこのまま終わらせてしまえば、本当は気が楽な気がして。たとえば他に、幸せに思えることがあったとしても、やっぱり手に入らなかった、この幸せについて僕は当分の間は後悔するのだろうと思う。

もう幸せだとか、不幸だとか、今はどうでもよくなる。無難に生きて、何事もなく生きて、早く終わらせてしまいたくなる気持ちが湧いてくる。

こんな風にさせられたのは、幸せそうに笑う悪魔のような彼女のせい。彼女に執着するようなこの気持ちは、自分の人生をただ苦しめるだけにしかならないものにした。

あの時、僕が彼女に言った「お幸せに」って言葉に籠めていたのは、そんな淡い気持ちのようなものだ。

言いたくもなかった、祝福の言葉を捧げた僕は、彼女に呪いでもかけられていたんじゃないかって思えるほど、心が痛かった。

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