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2010年 千葉ロッテマリーンズ(3位・日本一)

「プロ野球最大の下剋上」2010年の千葉ロッテマリーンズはまさにこの言葉通りシーズンは3位ながらCSで2位の西武、優勝したソフトバンクを倒し日本シリーズへ進出。さらにセ・リーグ覇者の中日を激しい戦いの末下し日本一を掴みました。そんなドラマチックな2010年のロッテを見てみましょう。


ボビー政権から西村政権へ

2009年限りで6年間ロッテを率い、2005年の優勝・日本一を達成したボビー・バレンタイン監督が退任。またこれに関連してロッテの私設応援団のMVPも解散。後任は西村徳文1軍ヘッド兼外野守備走塁コーチが就任。

さらにこの年はチームを支えてきた小宮山悟、高木晃次が引退。ベニー・アグバヤニも退団、またツープラトン体制の一角・橋本将がFAで横浜へ移籍。さらにエース格の清水直行を横浜との1対2のトレードで放出。横浜からは那須野巧・齋藤俊雄を獲得しました。

一方KBOから金泰均、オリックスから川越英隆、阪神から今岡誠、そしてメジャー帰りのかつてのセットアッパー藪田安彦といったビッグネームを相次いで獲得。橋本の退団で空いた捕手にはソフトバンクから的場直樹を獲得。
ドラフトでは即戦力期待で1位・荻野貴司、2位・大谷智久のトヨタ自動車コンビを獲得、3位で大嶺翔太(八重山商工高)、4位で清田育宏(NTT東日本)とこの年は比較的少ない4選手を指名しています。

スタッツ

打撃陣

2010ロッテ 打撃陣

2010年のロッテは708得点、打率.275とリーグ1位の攻撃力を持った攻撃陣でした。
1番の西岡剛は打率.346で206安打を放ち首位打者、最多安打を獲得。また22盗塁を決めてOPSも.904とまさに切り込み隊長でした。
ドラフト1位指名の荻野貴司も怪我で早々に離脱しましたが46試合で25盗塁という異次元のスピードを見せました。
クリーンアップも素晴らしく、井口資仁は3割に迫る打率で103打点、さらに出塁率4割超えでした。4番の金泰均もこのチームで唯一20HR超えを記録するなど前評判に違わぬ活躍。大松尚逸も2桁ホームランを打ち、下位打線に行ってもサブロー、福浦和也、里崎智也と長打力にも出塁力にも優れたバッターが続き、9番には打率.331 10HR 176安打 そしてOPS.800超えの今江敏晃が座ります。まさにどこからでも得点が期待できる打線です。
一方捕手の里崎智也がよく離脱していたときは新加入の的場直樹が埋め、根元俊一、今岡誠といったベンチメンバーもチームを支え、ドラフト4位の清田育宏もクラッチヒッターとして大活躍しています。

投手陣

2010ロッテ 投手陣

この年規定到達したのは成瀬善久、渡辺俊介、マーフィーの3人。
特に成瀬は200イニング以上を投げて13勝,192奪三振、K-BB%も19.3%ととても高いです。
また若手の活躍も光りました。22歳の大嶺祐太(ドラフト3位で入団した大嶺翔太の兄です)、21歳の唐川侑己が70イニング以上を消化しています。
救援陣は帰ってきた藪田が63登板で28H、古谷拓哉も58登板で防御率2.91、伊藤義弘も65登板で3.48・30Hとフル回転。抑えの小林宏も安定感あるピッチングで29Sを挙げていますが、救援防御率は4.21とリーグ5位、チーム防御率は4.10とリーグ5位。打撃陣はリーグトップレベルで素晴らしいものの投手陣が比較的低調で優勝を逃す要因だったのかなと思えます。

史上最大の下剋上(~CSまで)

開幕当初からチームは絶好調で大型連勝こそないものの3・4月は19勝12敗1分、5月は13勝8敗と大きく勝ち越します。交流戦は貯金3で4位で終えますが、その後は停滞。首位浮上のチャンスはあれど掴めず、9月7日からの5連敗で優勝争いから脱落。結局優勝したソフトバンクと2.5ゲーム差で3位でシーズンを終えます。(とはいえ4位日本ハムとも1ゲーム差であり、かなりギリギリの戦いだった。)

しかし5年前に2位からCSを勝ち上がったチームです。その力をここでも発揮しました。CS1stステージの相手は2位の西武。1戦目は4点ビハインドの9回に前年ロッテから西武に移籍したB.シコースキーを捉え、一気に4点差を追いつき5-5の同点とすると11回に福浦和也のHRで勝負あり。2戦目は1点ビハインドの9回、里崎智也が長田秀一郎からHRを放ち試合を振り出しに戻すと2戦連続の延長11回、井口資仁のタイムリーで勝負あり。ソフトバンクが待つCSファイナルステージへ駒を進めます。
迎えたソフトバンクとのCSファイナルステージ。1戦目は成瀬善久が9回1失点に抑え杉内俊哉との投げ合いを制すると2戦目はこの年最多勝のソフトバンク・和田毅が9回13奪三振でロッテ打線を抑え、3戦目もソフトバンクが勝利、日本シリーズへ王手をかけます。
しかしここからが凄いです。4戦目に今岡のHRで先制すると渡辺俊介が8回を投げ抜き、そのまま勝利。5戦目は1点ビハインドからサブロー・福浦・里崎のタイムリーで3点を挙げ逆転。清田育宏の2号HRも飛び出し、ロッテが逆王手をかけます。
天王山の6戦目は成瀬がソフトバンク打線に1度も得点圏に走者を許さない投球で9回完封すると、ロッテは杉内俊哉から4回で4得点とKO。さらに金泰均のタイムリー・大松の2ランで勝負あり。CSでは初めての3位の球団が日本シリーズへ進出しました。

激闘 西村ロッテvs落合中日

(左)西村徳文ロッテ監督                                      (右)落合博満中日監督

下剋上を果たした西村ロッテを迎え撃つのはセ・リーグの強力打線を抑えて優勝した落合博満監督率いる中日。
1戦目は和田一浩・谷繁元信のHRで逆転されるも清田のHR、今江のタイムリーで再逆転、西岡のタイムリー、井口のHRで5-2で勝利しました。
2戦目は序盤からマーフィーが乱調(2回途中で降板)、3回で10失点するなど1-12で大敗。本拠地千葉マリンスタジアムに帰った3戦目は渡辺俊介が相手を1失点で抑え無四球完投。満塁で清田の走者一掃のタイムリーや井口のタイムリーで一気に4得点。7-1で勝利しました。
4戦目は西岡のタイムリー、井口のHRで3点を先制するも追いつかれ、延長11回に大島洋平のタイムリースリーベースで勝ち越され3-4で敗戦。
5戦目は中日先発の中田賢一から今江・福浦・金泰均の3者連続タイムリーで4点を奪うと、そのまま15安打10得点の猛攻で10-4で勝利。日本一に王手をかけます。
ナゴヤドームに戻っての第6戦はまさに死闘でした。成瀬・チェンの両先発が好投。8回にサブローのタイムリーで同点にしますがそこからは救援陣が踏ん張り延長15回規定により2-2の引き分け。延長制限イニングを全うしたのはこの試合が初でした。(試合時間は5時間43分 これも日本シリーズ最長記録) ※2018年から日本シリーズは延長12回に短縮されている。
ロッテの3勝2敗1分で迎えた第7戦。ロッテが2点先制するも、その裏に森野将彦・野本圭のタイムリーなどで3点を奪い逆転しロッテ先発渡辺俊介を2回でKO。3回までに2-6と4点ビハインドになります。しかし4回に岡田幸文のタイムリー、5回には吉見一起から代わった河原純一を捉え、今江のタイムリー、里崎の2点タイムリーで同点にします。7回には金泰均が勝ち越しタイムリーを放つも9回裏、守護神・小林宏からT.ブランコが犠牲フライを放ち再び同点になり2戦連続延長突入。中日はこの年中継ぎながら12勝を挙げた浅尾拓也が9回から4イニングをまたいで登板するという戦略に打って出ました。12回表、先頭の今江が四球で出塁すると、伊藤義弘が送りバント。里崎が凡退して2アウトになり、迎えるバッターは岡田幸文。ロッテファンの熱い応援、当時の中継の実況の三宅正治アナの「千葉の風を尾張名古屋へ!」というフレーズに乗せて捉えた打球は右中間を割っていき決勝点となるタイムリースリーベースに。
その後伊藤が中日打線を抑え、最後は代打の藤井淳志をショートゴロに打ち取りゲームセット。2005年以来5年ぶり4度目の日本一を果たしたのです。
日本シリーズMVPはこのシリーズ期間打率.444だった今江敏晃。優秀選手賞は4登板7回無失点13奪三振に抑えた内竜也と新人シリーズタイ記録となる6打点を挙げた清田育宏でした。(2023年の日本シリーズで森下翔太[阪神]が7打点を挙げ更新した。)
↓第7戦の岡田幸文の日本一を大きく手繰り寄せる勝ち越しタイムリー

https://www.youtube.com/watch?v=t0INz2j_1Bo&t=237s


その後

まさにドラマチックな展開となった2010年のロッテ。
しかし先述したように首位打者、最多安打を獲得した切り込み隊長の西岡剛がメジャー挑戦。守護神の小林宏もFAで阪神へ移籍(なお阪神時代)。優勝メンバーが移籍しましたが来年こそ真の優勝そして2年連続の日本一へ そう意気込んで2011年シーズンを迎えるわけですが、まさかこんなことになるとは誰も思わなかったことでしょう…
(2011年のロッテの惨劇は下の記事で詳しく書いてます)


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