物語アイデア その2の2
題名(仮)「剣の王(忍の郷 修行編)」
~物語アイデア その2の1~ の続き
あらすじ
①ダニエル・エベレットは手持ちの物品を全て隠し、里を見渡せそうな一番高そうな山の頂上を目指す。頂上到着後すぐに郷の“荒賀衆”に捕まる。荒賀衆の村は郷の監視部隊に監視されているため、監視対象になってない山の炭焼き小屋に閉じ込められる。ダニエルはそこで村人数人から尋問を受ける。尋問内容などから郷の者は外の世界を知らず、それは何らかの理由から伏せられている可能性が示唆された。そのため受け答えは外部から来たことを伏せた内容にした。
②炭焼き小屋の主人、穂村明膳が村人から呼ばれ、小屋に来る。明膳はかつて郷の要職に就いており、そのためこの小屋は監視対象から外れていた。明膳は尋問内容を村人から聞き、村人を小屋の外に出してから、もう一度ダニエルに何処から来たのかを問うた。しかし、ダニエルからすると「分からない」の一点張りで押し通す他なく、村人の尋問内容と同様の答えを返すしかなかった。明膳は火遁の使い手。火での拷問もやむなし、と右掌をダニエルに向けた。その時、ダニエルの目に幼い頃見えていた虫の様なものが穂村明膳の手から現れ、その口から何かが吐き出されようとするのが見えた。咄嗟に身を捻り、吐き出された火を寸前でかわす。かわす様子を見て違和感を覚えた明膳は、
「ぬしは、理霊が見えるか?」
と問うた。ダニエルは
「理霊?手から出てきた虫みたいなもののことですか?」
と答えた。明膳は少し考え込んで
「ぬしは、命拾いしたぞ」
と言い、続けて
「外から来たのか?」
と小声で聞いた。ダニエルは黙って頷いた。明膳は
「やはりあったか」
とどこか残念そうに呟き、小屋の外で待機している村人に
「この者はわしが預かる。以後手出し無用」
と伝え、ダニエルを縛っている縄を切った。
③夜になってからダニエルは明膳とともに郷の中心地、帰雲城へ密かに向かう。道中は土不要一族が空を飛び運んだ。主要五遁(風遁、水遁、火遁、土遁、躯遁)を使う一族の代表が務める“五老代”(風魔、霧隠、猿飛、百地、服部の代表5人が務める郷の最高意思決定機関)と面会する。猿飛の長老が
「何故この者を我らに生きたまま引き合わせた?浮浪者など即刻始末し、下の者に見聞させればよかろう」
と明膳に詰問した。明膳は
「この者、顕者ゆえ、一度ご相談してからが良いかと思い、生きたまま連れて参った次第。」
と返した。これを聞いて五老代は、あからさまに色めき立つ。
「ぬしは下がっておれ。」
と風魔の長老が明膳へ言い、ひとしきり人払いが済むとダニエルの品定めが始まる。ダニエルは郷に入ってから人に取り憑く理霊なるものが、子供のころよりもはっきり確認できるようになっていた。しかもここの理霊は取り憑くというよりは、人と一体化している。五老代は理霊が見えていることの確認が済むと、ダニエルの出自についての確認に移った。ダニエルはここに連れて来られる前、明膳から
「外から来た旨、その経緯を含め、五老代には全て正直に話せ。」
とアドバイスを受けていた。このアドバイスを信じ、経緯も含め全てを伝えた。服部の代表はダニエルから受け取った勾玉を眺め、
「まずいことだが、この者は受け入れる他あるまい」
と言い、ダニエルは名を「弾蔵」に改め、明膳預かりとなった。
④明膳のもとでの修行が始まる。“顕者”とは理霊が見える人間のことを指し、努力によって得られるものではなく、かなりレアなスキル。弾蔵が殺されずに済んだのはこの能力のおかげ。顕者は修行を重ねると理霊を手で掴めるようになり、そうなると“大顕”と呼ばれ、郷で重要な任務を任されるようになる。いくつものラッキーが重なり、弾蔵は期せずして忍者になる夢が叶った。
⑤修行の内容は、概ね以下の通り。
その1:大地から放出される“理気”なるエネルギーを体に蓄えられる様になること
その2:そして蓄えられる量を多くしていくこと
その3:さらに蓄えた理気を体の何処からでも自在に放出できるようになること
これは基本中の基本らしく、郷の者は10才になるころには皆マスターしている。蓄えた理気を、自分に取り憑いている“理霊”に浴びせることで、様々な理術を発動させることが可能になる。理霊には、もともとは自然界などにいたが特定の者を気に入って取り憑いたヤドカリタイプ(取憑霊)と、生まれながらに体に宿り、人と一体化している寄生タイプ(自在霊)とがある。取憑霊は、取り憑かれたあとに理霊と誓約を結ぶ必要があり、誓約後から手で印を結ぶことで理術が発動する。自在霊は理術の発動に誓約も印も不要。理術には火を操る火遁、水を操る水遁など様々あり、火遁、水遁、風遁、土遁の四遁を金剛界の遁色、躯遁、臓遁、識遁、心遁の四遁を胎臓界の遁色と呼ぶ。この他にも遁色には蓮華界の結遁(土不要一族)といったレアなものなど様々ある。個々の理霊には決まった遁色があり、1体の理霊は一つの遁色しか持たない。自在霊は遺伝性があり、血縁関係のある集団は一つの遁色の理術を得意とする集団(一族)を形成している。
⑥基本の修行は明膳の孫娘の明麗が担当。理気を感じる取る所から始まる。感じ取れるようになるだけで、一年かかる。ただ出雲での五年を経験している弾蔵にとっては充実した時間だった。明麗との修行で驚いたのが、その身体能力の高さだった。その理由は“鍛錬霊”という理霊によってもたらされている。胎臓界の理霊は誰もがその体に持っており、通常の生命活動を担っている。この通常の生命活動を担うものは活動霊と言う。日々鍛練を積んでいると、時として誓約を交わした取憑霊のように、印を結び理気を浴びせることで理術を発動できるようになる。この理術を発動できる状態になった活動霊のことを鍛練霊と呼ぶ。鍛錬霊の理術の出力は自在霊には及ばないが、それでも常人の能力を凌駕する。明麗は躯遁の鍛錬霊を有しておりパワー、スピード、持久力の全てで弾蔵を上回っていた。明麗は火遁の使い手。その能力を活かし明膳とともに鍛冶屋と炭焼き小屋を営んでいる。明麗は火遁の使い手としてハイレベルらしく、その出力は本気を出せば鉄を一瞬で融かしてしまう。明麗は見た目は20代前半だが実年齢は59歳で、来年還暦を迎える。郷の者は一様に長命で成長速度は郷の外の人間と変わらないが、大人になってからなかなか老けない。そのせいか外の人間の3倍ほど長く生きる。これは郷の者が鍛練を欠かさず、活動霊に理気を与え、常に活動霊を活性化させているからではないかと弾蔵は考えている。明麗はなぜか荒賀衆の一部から観音様と密かに呼ばれている。ただ、本人はこの事を知らない。
⑦炭焼で使う薪割りをしてる最中、10歳前後の三人組が弾蔵をからかいに来た。始めのうちは適当にあしらっていたが、あまりの悪態に堪忍袋の緒が切れた。弾蔵は薪として集めた枝の中から手頃な棒を選び木刀として構える。悪童たちも一斉に身構えバトルの火蓋が切って落とされた。結果、弾蔵は10歳たらずの悪童三人にボコボコにされる。一応大学時代に古流剣術を習っており、子供なら三人相手でも十分懲らしめるくらいはできると思っていた。が、甘かった。
⑧弾蔵はゲガの治療のため明麗に連れられ、午黄華羽のもとに向かった。午黄華羽は女性の医師で、臓遁の使い手。弾蔵のゲガの治療を行う。治療中に
「あの子たちは、荒賀の出身でな。習錬場(郷の子が通う学校)では肩身の狭い思いをして、居場所がない。許してやってくれ。」
と言われた。
⑨“荒賀”は罪を犯した者が送られて住まわされる場所。送られる際は自在霊と取憑霊を大顕によって剥がしとられる。つまり、理術が使えなくなる。現代人が科学技術に頼って生活しているように、郷の者は理術に頼って生活している。理術を取り上げられるのは、現代人から科学技術を取り上げる様なもので、生活は困難を極める。そのせいか荒賀の村は貧しく荒んでいた。罪人を隔離しないのは、自在霊と取憑霊とではその出力が違い、戦闘における実力差が大きいから。さらに同じ遁色でも自在霊所持者の術は取憑霊のみ所持する者へ効くが、その逆だと効かない。一度荒賀に送られると生まれた子も荒賀に住み続けなければならず、その地位は世襲される。郷において、自在霊所持者同士の戦闘は堅く禁じられ、もしこの禁を破ると両者とも荒賀送りとなる。一方、自在霊所持者と荒賀の者との戦闘では、荒賀の者のみが罪に問われる。荒賀の者はこのような差別的な扱いを受けていた。
⑩弾蔵の中で悪童への怒りは消え、あの戦いを冷静に見つめ直していた。映画やドラマでありがちな、敵を逃がさぬよう取り囲む、といったことはしようともしない。三人とも常に正面に対峙する。だから分散した相手を「各個撃破」といった作戦を採りようがない。さらに戦いの中で、三人は必ず同時に攻撃してくる。同時に繰り出される三つの攻撃を1本の木刀で捌くのは困難。それでもなんとか三つの攻撃に対処しようと目を凝らせば、注意力が散漫になり、それ自体が隙になる。数の利を決して手放さず活かし続ける。極めて合理的。やはり忍者は戦闘集団なのだ。弾蔵は忍者の中で自分が最弱という現実を受け入れた。だからといって忍者をやめようとは微塵も思わない。ならばやるべき事は一つ。“強くなる!”
⑪弾蔵が山で修行中、あの悪童3人組がまたやって来た。弾蔵は木刀を手にすると、おもむろに3人の前に歩み出る。そしていきなり、土下座した。
「先日の御三方の見事な立回り、感服いたしました。つきましては大変恐縮ながら、わたくしを弟子にしていただきたい。どうかわたくしにその技の極意を伝授していただけないでしょうか。」
3人は想定外の展開に驚く。3人の中で緊急会議が開かれ、協議の結果、菓子の差し入れを条件に弟子入りが認められた。
⑫ある日、炭焼き小屋に行くと明麗が炭焼窯の前に座っていた。弾蔵が声をかけようと近づいたとき、目にしたのは明麗が理霊と戯れている様だった。しかも理霊を指で掴んでいる。明麗は弾蔵の存在に気づくと、気まずそうに
「このことは、誰にも言わないでくれ」
と言った。なぜ大顕であることを黙っているのか?と問うと
「爺さまから黙っておくよう言われているんだ」
と。顕者や大顕は多くの優遇を受けれるが、刑の執行役を担う。明麗は優しく、人当たりが柔らかい。明膳は、明麗のその人柄が顕者や大顕の役割に合っていないと思ったのかもしれない。さらに今はなおのこと言い出せない事情があった。
⑬弾蔵の師匠となった三悪童の1人は高目鳶といい、識遁の使い手。高目一族は瞳術を得意とする。ある日、鳶は最近習得した理術“千里眼”で遠くを見て遊んでいた。もっと見易い場所で使いたいと言って、かつて弾蔵が捕まった山の頂上へ行く。郷は海に囲まれた島で、その海をリング状の島が囲み、さらにその外側を海が囲むといったリング構造が、交互に果てしなく続いている。不思議な形だ。弾蔵は師匠たちに
「あの輪っかの島はどんな所ですか?」
と尋ねた。すると
「あれはここだよ。」
と言われる。
弾蔵は「?」となるも、さらに
「あの北の港から出て、対岸の岸に着いたらそこは何処ですか?」
と尋ねなおす。すると、今いる島の南側を指差して、
「あそこ」
と返答された。弾蔵はようやく合点がいった。この世界は海のある線を境にループしている。ちょうど合わせ鏡の間に物を置くと、いくつもそれが見えるように、島と海のリングがいくつも続いているようにみえるようだ。
⑭頂上で三師匠と遊んでると
「鳶!こんな所で何してる!」
と怒鳴り声が聞こえた。声の方を向くと明麗と同い年くらいの女が、すごい剣幕でこちらに向かって来た。
「姉上」
鳶は、弾蔵への態度とはまるで違う怯えた表情だった。
「習錬場をサボって何のつもりだ!お前は荒賀の者。人一倍努力し鍛練を積まなければ認めてもらえない。このままずっと荒賀にいる気か?」
そう言うと、鳶をひっぱたいた。倒れた鳶の元に寄ろうとすると、次は弾蔵に向かって
「弟に触れるな!」
と弾蔵の胸座を掴んだ。その表情は変わらず怒りに満ちていたが、弾蔵に向けるそれはなぜか殺意をはらんでいるように見えた。女の目はオッドアイで、絵に描いたような三白眼。怒りを向けられていることを、一瞬忘れてしまいそうなくらい美しく鋭い目だ。
「燕十郎を殺したのはお前だろ!上に取り入ってうまく隠してるようだが、私の目は欺けんぞ。」
「はっ?!何のことですか?」
身に覚えのない殺人容疑に弾蔵は慌てる。弾蔵が次の言葉を発するのを遮るように女が
「識遁、覚術、“帳”(とばり)」
と言うと、弾蔵の視界は突然真っ暗になった。弾蔵が更なるパニックに陥ったなか、
「姉上、弾蔵を戻してあげて」
と何度も懇願する鳶の声が遠くに消えて言った。
⑮弾蔵に理術を掛けた女は、高目梟といい、鳶の実の姉。明膳によると、弾蔵にかけられた理術は梟本人にしか外せないとのこと。
明麗と梟は同い年の幼なじみ。梟は荒賀衆出身だが、懸命に修行して郷の監視部隊“夕霧”に入ることが認められ、荒賀を出ることが許されている。燕十郎とは遠野目燕十郎のことで梟とは恋仲。梟が荒賀出身であること、また遠野目家が瞳術使いの名門一族であることから、燕十郎の親族から結婚は反対されている。だがその交際は黙認されていた。燕十郎はちょうど弾蔵が郷に現れた辺りから行方不明になっており、梟は両者の関連性を探っていた。弾蔵に理術を掛けたのは、関連性が判明しないうちに逃げられたり、弟が犠牲になったりすることを畏れてのこと。燕十郎はかなりの手練れであることから、弾蔵相手に不覚をとるようなことはない、と明麗、明膳、鳶は思っている。
⑯弾蔵は盲目のまま理気の修行に打ち込むことになる。盲目での修行は捗る(ように感じた)。日常生活で視覚以外の感覚を研ぎ澄ませなければならないため、理気への感度が上がった(ように思える)。三師匠もちょくちょく様子を見に来てくれ、不便だが寂しい思いはしなかった。一年も経つと近所への外出くらいなら1人でできるようになった。聴覚が鋭くなったせいもあるが、理気の揺らぎを感じることで人や動物、木や草の位置や大きさを把握できた。さらに理気の揺らぎには個性があることに気付き、人を見分けられるようになり、周りを驚かせた。
⑰理気の取り込みの修行中に、この郷の環状構造について考えた。幼い頃、星の観察に行った時、引率の先生が「あの明るい星は10万光年、つまり光の速さで10万年かかるくらい離れた場所にあります。だから今見えているあの星は10万年前の姿になります。」と言っていた。だとすると今見えている、一番内側の輪っかは、今より少しだけ過去を見ているわけか。と考えていた。このとき弾蔵は、あることに気づいた。このことに居ても立っても居られず急いで明麗のもとに向かった。弾蔵は明麗に会うと、燕十郎が居なくなった理由がわかるかもしれないことを伝えた。なぜ分かるようになるかの原理については腑に落ちてない様子だったが、とにかく弾蔵に会うよう梟に話をつけてくれることになった。
⑱弾蔵は梟に会うなり
「鳶が使っていた千里眼は、梟さんも使えますか?」
と聞いた。
「当たり前だ。千里眼は瞳術の中で基礎的なもの。瞳術の使い手なら誰でも使える。」
「それなら、もしかしたら燕十郎さん失踪の真相を、過去に遡って見ることができるかも知れません。」
「本当か?!」
梟は怪しみながらも、弾蔵の言うとおり、山の頂上へ向かった。頂上に着くと
「あの輪っか状の島について、できるだけずっと先にあるものを千里眼を使って見て下さい。」
と言った。
「あれは、ここの島だ。そんなことをしても何の意味もない。」
「確かにそうなんですが、ずっと向こうの島については過去が見えるんです。どうか信じて下さい。」
弾蔵に懇願され、さらに明麗の手前、無下には断れず
「もし見えなかったら、お前の目は一生戻さん。」
と言い、千里眼を開始した。
⑲開始して10分ほど経ったとき、梟の目には昨日の自分が見えていた。弾蔵の言ったことは本当だった。弾蔵はこれを聞いて胸を撫で下ろす。一方で、果たして二年以上前の過去までたどり着けるか心配していた。
「もし、燕十郎さんが居なくなった日まで辿り着けたら、雑賀の集落を見下ろせる崖の上辺りを探して下さい。」
「分かった。」
そう言った梟の目は、辿り着くまでは帰らないという意志が宿っていた。
⑳弾蔵がこの郷に来たとき、勾玉の穴に何度も指を突っ込んで元の世界に戻ろうと試みたが、できなかった。その時は一方通行の扉みたいなものかと諦めた。ただ燕十郎の話を聞いたとき、もしかしたら、たまたま扉が開いたときに指を突っ込んでしまい、この世界に入り込んだのではないか?そんな可能性に思い至った。だったら燕十郎は弾蔵がこの世界に入り込んだ直前まで、雑賀集落の崖の上に居たのかもしれない。
㉑夜が開けようかというとき、不意に梟が術を解いた。纏う理気に生気がなく焦燥していたため、疲労の限界かと思った。しかし梟は力無く
「分かった。下手人は、宇野重幸だ。」
と呟いた。梟がそう言った瞬間、明麗の理気が緊張の揺らぎを示した。梟は続けて
「燕十郎は、死んでいた。」
と言うと、その場に泣き崩れた。
ダニエル・エベレット(弾蔵)
五年の歳月をかけて忍びの郷にたどり着く。素性不明の浮浪者として捕まる。罪人として扱われてもおかしくなかったなか、たまたま運良く顕者の能力を持っていたため助かる。
理霊(りれい)
・理霊と理術
理術を生み出す精霊。大地から吹き出す理気を自らに取り込み、この取り込んだ理気を、自分に取り憑いている理霊に浴びせることで理術が発動する。
・理術の種類
理術は火を操る火遁、水を操る水遁など様々あり、火遁、水遁、風遁、土遁の四遁を金剛界の遁色、躯遁(くとん)、臓遁(ぞうとん)、識遁(しきとん)、心遁(しんとん)の四遁を胎臓界の遁色と言う。遁色には他にも蓮華界の遁色である結遁(けっとん)といったレアなものなど様々な種類がある。
・遁色と理霊
個々の理霊には決まった遁色があり、1体の理霊は一つの遁色しか持たない。
・自然霊と取憑霊
金剛界と蓮華界の遁色の理霊は自然界にも存在し、様々な自然現象に携わっている。この自然界にいる理霊のことを、自然霊と呼ぶ。この自然霊は、気に入った場所に取り憑く習性があり、気に入れば人にも取り憑く。人に取り憑いた自然霊のことを取憑霊(とりつきれい)と呼ぶ。
・取憑霊と理術
取憑霊と誓約を交わせば、他に勝手に移らなくなり、取り込んだ理気を浴びせることで理術を発動させることができる。ただし、取憑霊を用いた理術の発動には、発動前に必ず印を結ばねばならないという誓約がある。
・活動霊と鍛練霊
胎臓界の理霊は誰もがその体に持っており、通常の生命活動を担っている。この通常の生命活動を担うものを活動霊と呼ぶ。日々鍛練を積んでいると、時として誓約を交わした取憑霊のように、印を結び理気を浴びせることで理術を発動できるようになる。この理術を発動できる状態になった活動霊のことを鍛練霊と呼ぶ。
・自在霊
取憑霊や鍛練霊を用いた理術よりも遥かに強力な理術の発動が出きるものを自在霊と呼び、郷の者は必ず1遁色の自在霊を持って産まれて来る。自在霊は浴びせる理気の量が同じでも、取憑霊や鍛練霊より遥かに強力な理術を発動できる。さらに発動に印を結ぶ必要がない。同じ遁色の自在霊を持つ者へは、その遁色の理術は効かない。
・自在霊と取憑霊・鍛練霊
自在霊と取憑霊・鍛練霊とではその出力が違い、戦闘における実力差が大きい。さらに自在霊所持者の理術は、相手が取憑霊または鍛練霊のみ所持する者なら同遁色であっても効くが、取憑霊または鍛練霊のみ所持する者の理術は同遁色の自在霊所持者には効かない。
・自在霊と一族
自在霊は遺伝性があり、血縁関係のある集団は一つの遁色の理術を操る集団(一族)を形成している。同じ遁色の自在霊を持つ者へは、その遁色の理術は効かない。そのため、仮に他遁色の集団と戦闘になったとき、相手集団に同遁色を持つ者がいると、「こちらの攻撃は相手の一部に効かないが、相手の攻撃はこちらの全員に効く」という状況が生まれる。そのため、それだけで戦いが不利になる。この事から同遁色を持つ者は一つの集団を形成し、一部が他遁色の集団に移らないよう固い結束で結ばれている。
荒賀
郷で罪を犯すと、大顕により自在霊と取憑霊を全て剥がし取られる。その後、強制的に住まわせられる場所のことを荒賀といい、郷に数ヶ所存在する。荒賀に送られた者を総称して荒賀衆と呼ぶ。荒賀衆は強制的に農作業や土木作業に従事させられる。理霊を全て失ったあとに自然霊が取り憑き、取憑霊となった場合は、再び罪を犯さない限りその取憑霊の所持は認められる。剥がし取った自在霊や取憑霊は、帰雲城の蔵に厳重に保管される。
顕者と大顕
顕者は理霊を見ることができ、とても希少な能力。修行などで後天的に身に付けることはできない。顕者が通常の忍術修行を積んでいると、理霊を触れるようになることがあり、理霊に触れるようになった者を大顕と呼ぶ。
穂村明膳(ほむら めいぜん)
火遁の使い手で物を燃焼させ灰にする炎術に長けている。鍛冶屋と炭焼き小屋を営んでおり、罪を犯したわけではないのに荒賀に住んでいる。かつて郷の要職に就いていた。
穂村明麗(ほむら めいれい)
火遁の使い手。その能力を活かし明膳とともに鍛冶屋と炭焼き小屋を営んでいる。明麗は火遁の使い手としてハイレベルらしく、その出力は本気を出せば鉄を一瞬で融かしてしまう。明麗は見た目は20代前半だが実年齢は59歳で、来年還暦を迎える。明麗はなぜか荒賀衆の一部から観音様と密かに呼ばれている。ただ、本人はこの事を知らない。
風魔の長
代々風魔一族の長は、風魔小太郎と名乗る。風魔は風遁使いの一族。
霧隠の長
風魔同様、代々霧隠一族の長は、霧隠才蔵と名乗る。霧隠は水遁使いの一族。
猿飛の長
代々猿飛一族の長は、猿飛佐助と名乗る。猿飛一族は火遁使いの一族。
服部の長
代々服部一族の長は、服部半蔵を名乗る。服部一族は躯遁使いの一族。
百地の長
代々百地一族の長は、百地丹波を名乗る。百地一族は土遁使いの一族。
高目鳶(たかのめ とび)
習錬場に通う10歳の男子。瞳術使いの高目一族で荒賀に住んでいる。弾蔵との喧嘩を経て、弾蔵の師匠となる。
高目梟(たかのめ きょう)
鳶の姉。荒賀出身ながら懸命な努力で、郷の監視部隊の夕霧へ入隊が認められた。瞳術使いとして郷でトップクラスの実力を誇る。高目一族が使う千里眼は、非常に高性能な望遠鏡のようなもので、視点の自由度が乏しい。
遠野目燕十郎(とおのめ えんじゅうろう)
夕霧所属の瞳術使い。瞳術使いの中でNo.1の実力を有する。遠野目一族の千里眼は視点そのものを遠くに飛ばすもので、視野の自由度が高い。
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