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数学の公式は「包丁」だという話

君の手にしている数学の教科書や参考書には、さまざまな公式が記されているだろう。そしてこれらの公式は、大きく太い字で書かれたり、色のついた枠で囲まれたりと、誰が見ても「この公式は重要ですから絶対に覚えなさい」という見せ方で示されることが多い。

そのためか、君たち学生の中には、「今度のテストでいい点を取るには、このやたら目立つ公式を全部暗記すりゃいいんだな」と考える人も多いことだろう。筆者も学生時代に、ノートに何度も公式を書き、なんとか記憶に定着させようとしたことがある。しかし、そんな努力をいくら重ねても、

「なぜか毎回数学のテストの成績が悪い…」

「一向に数学の偏差値が上がらない…」

といった人も多いのではないかと思う。

「先生が授業で『ここテストに出まーす』って黒板にデカい字で公式書いてたから苦労して覚えて、それからテストに臨んだのに、なんで35点なんだよ!」

って人、いるでしょう?

そうなる理由は明確である。「公式を使いこなせていない」のである。

たとえばの話をしよう。技術が未熟である駆け出しの料理人がいて、重要な料理コンテストを明日に控えている状況である、と仮定する。「なにかプラスになることをしないと…」と焦った彼がおもむろにスマホを取り出し、「ミシュラン三つ星シェフモデル 包丁5点セット」をAmazonお急ぎ便でポチり、「よっしゃこれでいい成績が残せる!」と自信満々にドヤ顔をしていたら、君はどう思うだろうか?彼を見た人は全員

「そんなわけないやろ!」

とツッコミを入れたくなるのは当然である。

数学のテストも全く同じである。駆け出しの料理人はもちろん、テストを控えた学生。包丁は、数学の公式である。そして、三つ星シェフというのは、公式を世に広めた存在、つまり、ピタゴラスやアルキメデスといった数学界の偉人たちだ。彼らが長い年月をかけ作り上げてきた最高の「包丁」、これを頭の中に(文字情報としてのみ)詰め込んで、試験場に“持参”する。たったそれだけで果たしてコンテストで優秀な成績を収められますか、数学のテストの点数が上がりますか、という話なのである。「そんなわけないやろ!」なのである。

ここでは、公式を「包丁」という「道具」にたとえて話をした。すなわち公式は、数学の問題を解くための道具に過ぎない。問題を解きテストの点数を上げるには、この「道具」を自分なりに使いこなすことが重要となってくる。

それはつまり

「事前の練習や準備が絶対に必要」

ということにほかならない。包丁であれば手に持って、さまざまな食材を繰り返し切り続けることで、徐々に技術が身についていくことだろう。数学の公式も、さまざまな問題を、時間をかけじっくりと解いてみて初めて「なるほどこうやって使うのか」と理解できるのである。

公式は、試験前日に“記憶”するものでなく、毎日の練習の積み重ねによって“体得”するものなのである。

このときにおすすめなのが

「問題を解く前や解く途中で、公式(特に公式の『文字』)を絶対に見ない」

という勉強法だ。授業で先生が話していたことのみを手がかりに解いてみるのだ。もちろん全く解けないことも多い。ただ、そんな状態でもできる限り手と頭を動かし、「おそらく答えはこんな感じだろう」と推測できるくらいには頭を悩ませるべきだ。

そんな悪戦苦闘を経たのちに、あらためて教科書を開いてみれば、そこには切れ味鋭い包丁がまばゆく光っているのが見えるはずだ。「うわっ…この包丁…めっちゃ便利やん!これさえあればさっきの問題もラクに解けたのに…!」となればしめたもの。これこそが公式"体得"の第一歩となるのである。

まずは、さまざまな食材を自力で切ってみることだ。この経験が、後々必ず効いてくる。

次のテストで君が「公式をぼんやりとしか思い出せない…」となってしまったとき、ピンチの君を救ってくれるのは、

「練習で指を傷だらけにした経験」

だけなのだから。

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