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ちいさなイルカ(日記)

少し前に友達と江ノ島にいって、スーパーボールの中に魚のおもちゃ?が入ってるガチャガチャをしたら、欲しかったイルカがでた。

photo by Mikan Sawayama

小さな球体の中の、1匹のイルカ。

空に透かすと雲の間を泳いでるみたいになるのがうれしくて、こっそりといつもかばんに忍ばせて、たまにひとりで空に透かして遊んでいた。

話は変わってこの前、家の最寄り駅近くの繁華街で、迷子の子どもを保護した。

猛烈なスピードで人混みを駆け回り、赤信号を無視して車に轢かれかけ呆然としていたところに慌てて声をかけて、「こんにちは。もしかして何か困ってるかな?」と訊くと、堰を切ったように泣き出してしまった。お母さんとはぐれてしまったらしい。

手を繋いで交番まで連れていくと、背の高い男性のお巡りさん2人がいて、私に連絡先とか事情を一通り聞いた後「ありがとうございます。もう帰っていただいても大丈夫ですよ」と言うのだが、迷子の子が相変わらず泣きながら(というかほとんど絶望的な表情で)こっちをじっと見て、その表情がいかにも置いていかないでくれと言っていたので、時間があるので一緒に待たせてもらえますか?というと、お巡りさんは快く了承してくださった。

お巡りさんが親御さんを探してくださっている間、その子が不安にならないようにぽつぽつと話をした。でもやっぱり元気が出ないので、なにか励ませるものないかな……とカバンを漁ったら、件のイルカのスーパーボールが出てきた。おおっ、なんと良きものを、と思った。

「お魚好き?」と聞くと、その子はこくんと頷いた。「じゃあ、イルカって知ってる?見たことある?」と聞くと(今思うとイルカって魚じゃないな〜)、今度はぱっと表情を綻ばせて「見たことある。水族館で見た」と答えた。「じゃあいいもの見せてあげる。ほら」とスーパーボールをその子に見せた。「お空に透けさせると青空の中を泳いでるみたいになるんだよ〜」と言うと、なんと可愛らしいことでしょう、さっきまで泣いていたのに、ぴょんと立ち上がって私の手からスーパーボールを掴み、交番の外に出て陽の光に当てていた。

そうこうしているとお母さんが迎えに来た。お母さんも、その子もわーんと大泣きしながら再会を喜んでいた。私はよかったな〜と思いながら、お礼を言われたりするのがなんか照れくさかったので、「それあげる。じゃあね!」とだけ言ってその場を後にした。

今日、前回とはまた別の友達と江ノ島にいった。

その時、スーパーボールのガチャガチャがまたあったので、「聞いてよ〜この前善行詰んだんだ〜へへ〜」と一連のことを話すと(我ながら、話さない方がかっこいいのにとは思いつつ……照れ)、その子はなんか本当に、ほんと〜に嬉しそうに「あんたのそういうとこマジ好き…」と言ってくれて、Love…となった。

そしてそして、「じゃああたしがスーパーボールのガチャガチャおごっちゃろう。イルカより絶対いいもん出るよ」と言ってくれた。

スーパーボールのガチャガチャの中で、私の中でイルカはかなり上位のあたりである。それよりいいものかあ……と考えつつ、でもそれ以上に友達の心意気がとてもとても嬉しかったのでお言葉に甘えて、その子に200円をもらって回してみると、



ちいさなイルカが、なんと3匹も中に入っているスーパーボールが当たった。

私は、ガチャガチャの筐体からころんとこのイルカたちが転げ出てきた時、なんかうまく言えないど、世界にきらきらの粉が舞ったような感覚になった。

そして神様とか仏様とか…なんかそういう漠然と大きなものに可愛がられたという気持ちになって、横で「すご!イルカ3倍じゃん!大当たりじゃん!」とわけわからん言葉ではしゃぐ友達を横目に「え〜!?」って笑いながらも胸がいっぱいになってしまった。

スーパーボールを夏の陽射しに当てながら海岸沿いを歩くと、海の家のキャッチのお兄さんお姉さんたちがただ「わ、スーパーボールだ!」「いいっすね、それ!」と笑ってくれて、なんかそういうのもまた嬉しかった。

最初に江ノ島に行った時にガチャガチャをやったことも、そこでイルカが当たったことも、迷子の子どもをたまたま保護してあげられたことも、その子がイルカを見たことがあって、だから笑顔にしてあげられたことも、その経験を聞いてくれてほめてくれる友達がいることも、その友達とまたガチャガチャをしたことも、その結果今度は3匹のかわいいイルカが当たったことも。

うれしかったな〜。

そしてそして、このこと全部ぜ〜んぶ、いつかしわしわのおばあちゃんになった時にふっと思い出して、ふふふって笑いたいな〜、なんて思うのでございました。

そんな夏の日の日記でした。

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