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忘れないように書いておくこと。

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最近の記事

21時のサンセットタイム

今この瞬間はかけがえのないものだとわかることがある。 ただ、平凡な私はきっと全ては覚えていられないので、ここに記録する。 サンセットライブの翌日。 私はパラリンピックマラソン女子道下選手を応援するパブリックビューイングにいた。 結果は4位。後に繰り上がり銅メダルとなる。 最後にはビールが配られた。 もっと知りたい人がいて、(受け取らないこともできた)飲まないビールを2本も受け取ってその人の店に向かう。 お客さんにも1本渡したビール。溢れたそれがコンクリートの床に染みる。齢

    • 部屋

      朝には大丈夫になっていると言い聞かせる。相手の手の感触がどんなだったかもうわからなくなっても朝は来る。乾涸びたトカゲの尻尾をトカゲが覚えていないのと似ている。 真っ暗な隣の部屋にいる自分より弱い生き物に意識的な愛情を向けることが日課。生きて、と願う。これが呪いのようになれと思う。 この家を自分の心象風景にしてはいけない。抱っこしていい?ゲームをしている背中に呼びかけて抱き締める。ゲーム画面は止まらない。私は蘇生をされていないのに生きている。このゲームにクリアはない。これはバグ

      • 新生活

        新生活をはじめた。 全く新しく、初めての生活である。 一人暮らしはしたことがなかった。 実家に住み、大学の4年間はそこから通った。 社会人になってからもそれを続け、やがてできた恋人と同居し、結婚した。その結婚生活は1年だった。 その1年後に結婚した、今の夫との生活は約4年間。あと1週間ほどで、婚姻関係を終えようとしている。 お互いがお互いを想い過ぎ、憎悪のようになる瞬間が積み重なり、帰る場所ではなくなった。 それは生活として継続することはできないが、愛を交換した素晴ら

        • 太陽を迎えて

          子どもはいなくても大丈夫。 でも、いつか猫を飼いたいね。 上は結婚の条件のようなものだった。 下のひとつは、はたしていつ頃から言い始めたのか。 猫か、猫ね、といつの間にか譲渡希望の保護猫をチェックするようになっていたし、保護団体のインスタをフォローしてストーリーを見るのが楽しみになっていた。 いつ、どんな、はあまりない。 ただ、「大丈夫」になったら、私たちは猫を迎えたかった。 ことが動いたのは11月だった。 フォローしていた団体のストーリーに、新たに3匹の猫を捕獲

        21時のサンセットタイム

          7月のこと

          足元に脱がれていたセミの抜け殻に、さすが7月、と喜んだ。 最近は早番が多い。 「閉館まであと42日」の表示をなんとなく通り過ぎ、鍵を開ける。まだ誰も出勤していない。 棚を拭き、ガラスと鏡を拭き、掃除機をかけて、神棚の恵比寿様の水を替える。 手を合わせる。 今日も売れますように。 ひどいときは、何か、売れますように、と思う。 何かしら考えたり、音楽を聴いたりしながら、のんびり過ごす開店前のこの時間が私にとっての価値のある時間だと気付いたのは最近だった。 初対面の人

          7月のこと