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新生活

新生活をはじめた。
全く新しく、初めての生活である。



一人暮らしはしたことがなかった。

実家に住み、大学の4年間はそこから通った。
社会人になってからもそれを続け、やがてできた恋人と同居し、結婚した。その結婚生活は1年だった。

その1年後に結婚した、今の夫との生活は約4年間。あと1週間ほどで、婚姻関係を終えようとしている。

お互いがお互いを想い過ぎ、憎悪のようになる瞬間が積み重なり、帰る場所ではなくなった。
それは生活として継続することはできないが、愛を交換した素晴らしい経験になった。

この人のために生きたいと思う出会いだった。

本当は自分のために生きるべきだった。



なにはともあれ、始まったこの生活の責任は全て私にあり、暮らしに関して他者への責任は生じない。
また、他者が私に対して感じる責任もないだろう。
そんな、心地良さがある。

初日こそ不安で安眠できなかったが、その後は毎日日差しで目覚める。
これ以上ないほど、良い朝の迎え方をしている。

その中で早速、体調を崩した。

気管支炎だった。

身体が煙草の煙を受け付けないせいで、煙草の煙を浴びる度に発作を起こしてきた。何度経験しても、呼吸ができないと生理的な涙が流れるものらしい。
「涙が出る」と、「泣いている」は同義ではないと思うが、泣いている気がしてくる。
泣いている感覚が、自分に覆い被さってくる。

来て、助けて欲しい、と言う勇気がない人間にとっての同居は、その言葉を言わないで済む気楽さになっていたかもしれない。

私が体調を崩すのはそう珍しいことではないが、そのときに寄り添ってくれる人がいない寂しさと辛さを知った。

私はひとりだと知ることが、今は大事なことだと思う。




自分が選んだ生活の甘さと苦さを、早めに味わうことができ、むしろ幸運だった。
この生活には私の意思しか存在していない。
辛さすらも、それを選び取った私によるものだと確認することができた。

私はひとりでは生きていけないかもしれない。

だからこそ、自分から誰かに隣にいて欲しいと求めることはもう積極的にはしたくない。
自分から自分を弱くすることはしない。

この気持ちは揺るぎないものにしたい。





Netflixを繋いだばかりのテレビで、小学生の頃から好きなアニメを観た。

私はここにいていいんだ。

きっとずっと、行き場を失った子どもだった私へ。


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