マーサ・ロスラーの写真めっさいいから✨
最近新しい本棚を買いました。
まだ届いてないんですけどそれでなんとなく本の整理を始めてます。
今日はその片付けで見つけたマーサ・ロスラーというアーティストの写真集『irrespective』のなかに入っている「Air Fare」という写真作品のシリーズのことを書いていきます。
この人がマーサ・ロスラー、ウェブサイトのポートレイトからの抜粋です。
そのサイトにある同作品のページも載せます。
サイトで見てもらってもわかるように、この「Air Fare」というシリーズは、機内食を写真に撮っただけのシンプルな作品です。
作品タイトルの「Air Fare」は、直訳すると「航空運賃」、つまり、飛行機の料金に含まれる食事の写真というふうに一旦は解釈することができるでしょう。
しかし、ここで重要なのは、複数の写真を見比べてみることで、それぞれの食事のレベルが違っているということが浮かび上がってくるということです。
ファーストクラスがテーブルクロスにグラスワイン付きのエレガンスある食事なのに対して、エコノミーはサンドイッチのような、お弁当のような、なるべく手間のないメニューでパッケージも熱を逃がさないようにフォイルで包まれた状態で配膳されています。
また、夜間のフライトのせいか、周囲は真っ暗闇ですが、機内備え付きの天井灯が、一方でプラスチックやアルミホイルの包装、他方で陶器・金属製のカトラリーやワイングラスをキラキラと輝かせていることがわかります。
すなわち、ロスラーは、飛行機内という一時的にあらゆる人々を閉じ込めた空間のなかで、クラスの異なる食事を撮影することによって、乗客間の経済的なヒエラルキーをまさに暗闇からスポットを当てるかのように照らし出してみせるのです。
ちょっと話が飛びますが、この写真を見てRafał Milachというポーランド出身のアーティストのことを思い出しました。以下にその写真も貼ってきます。
リンク貼っておきます。
このブックは2020年にポーランドで起こった「Women's Revolt」という抗議運動を記録した写真集。当時のポーランドで司法決定された人工妊娠中絶の禁止に対するデモの様子が収められてます。
コロナ禍だったのでみんなマスクしてますが、バッキバキのアイライナー、つけまつげ、カラフルなメイクを強調しててすごいオシャレです。
この写真からもわかるように、アルミホイルは、デモや災害のような非常事態の際に、身体に巻き付けることで体温を逃さない、外気から身を守るものとして使われることがあります。
何が言いたいかというと、人間もまた、機内食と同じように熱を逃さないためにアルミホイルを巻き付ける。このようにしてアルミホイルでパッケージされた機内食は、非常事態下のわたしたちを象徴したものとして考えることもできるのではないでしょうか。
まとめます。
ロスラーは今年で80歳、現在もアートワールドで輝き続ける巨星なわけですが、このシリーズ「Air Fare」では、世界各地で開催される展覧会の多忙なスケジュールの合間の、移動中のささやかな楽しみを切り取りながらも、そこに現実世界の残酷なヒエラルキーを照射してみせてしまうという彼女の作家性と審美眼の一端を見ることができるわけです。
特に初期のコラージュはそうですが、ロスラーの作品は、政治色の強いプロパガンダを特徴としています。それに加えて、彼女は空港を舞台とするような写真作品の制作も続けてきました。だからこそ、この機内食の写真作品は、彼女のこれまでの強烈な政治性が重低音を響かせるようなシリーズになっているのです。
その人が自分のキャリアを通して提示してきた問題意識=作家性を考えると、一見するとただのスライスオブライフな写真でも、そこに写っているもの、シリーズだったらそれぞれの写真の違いに目を向けてみて、いろんなことを考えることができたりするよねーって思ったところで今日は終わります。
またね!
あ、最後に気付いたことを追記。
この記事を見返してロスラーの作品の配置があんまりよくないなって思いました。作品集だともっとInstagramみたいにグリッドがあるので、この記事の配置の仕方よりもそれぞれの食事の差異がハッキリ出てると思いました。一応その部分を分かるように載せますね!バイバイ!
ね、これだけ見るとただの機内食写真集みたいっしょ。
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