「ライブ配信によるオーディション」という夢の作り方に対する違和感、そして配信を鑑賞して応援する時に僕が考えていること
僕がライブ配信を見るようになったのは、コロナに罹患して危篤状態にあって、同室の方がどんどん亡くなった2021年の夏のこと。自分も翌朝目覚めるかわからない不安を抱えた午前3時にスマホを開いたら、配信している方がいらしてホッとしたのだ
コロナ病棟に隔離されてからは主治医にも会ったことがないような状況で、素敵な女の子と言葉を交わして、人の気配を感じてすごく救われた。だから僕は彼女に、ライブ配信に生かされたと思っている
本格的に応援を始めたのは退院後。すぐに違和感を覚えて、ミクチャのプロフィールにこんな文章を書いた。この文章は思いのほか多くの方に読んでいただき、大きな反響があった
ライブ配信は本来楽しいお喋りの場だと思っています。ライブ配信をオーディションと絡めて課金を集めるビジネスを考えた人が怖い
芸能って「人間の身体を使った芸術」のことなんです。だから芸の才能や将来性で評価するのが本筋で、「石油王を捕まえられるかどうか」「枠周りと呼ばれる根回しが上手いかどうか」で評価するべきではありません
ライブ配信を巡って苦しんでいる方の話をよく聞きます。本来の夢から離れてポイント集めのゲームに翻弄されて、ライバー同士、リスナー同士が疑心暗鬼になって、怖い思いもして
セクハラ、パワハラ、 詐欺、枕営業、ずさんでアンフェアな審査の実情。イベント中は楽しいお喋りをする余裕はないし、本来の芸を磨く時間も削られる。そして最後は狡い人が勝つ
僕にも「アイテムを投げに来てください」という誘いや枕営業の誘いがあります。僕はサンタさんでも前澤友作でも秋元康でもないんだよ。自分が応援したいと思える方を応援します
交流のメディアとしてのライブ配信には大きな可能性があります。そのマネタイズについて、みんながハッピーになるように仕組みを根底から考え直したほうがいい
これが僕の考え方の大前提だ。ところが何年も応援しているうちに、また違う違和感を覚えるようになった。これをライバーさんが言ってしまうのは難しいと思う。のでリスナーとしておそるおそる言うなれば
ライバーさんはリスナーさんとの会話を楽しみつつ、オーディションに受かるために配信をしている。だから楽しいコメントで配信を盛り上げてくれるリスナーさんの存在はありがたいと思う
ただ、審査員さんが常にすべての配信を見て審査してるわけではないので、残念ながら合格・不合格は主にリスナーさんからのポイントで決まる。さらに残念ながら、ポイントは主にリスナーさんの課金額で決まる
僕はかなり多額の課金をして、ライバーさんを応援してきた。といっても決して大富豪ではない。むしろ長年重い病気と闘って、復職も難しい状況にある。自分が頑張りすぎて人生を不意にしたからこそ、夢を持つ素敵な若者を応援したいのだ
課金で人の夢を買う仕組みに大きな疑問がありつつ、これしか応援の方法を知らないのでポイントを投げてる(どこから資金を調達しているのかについて、悪意のある憶測が飛び交っているので、あとで説明する)
リスナーさんの中には、まったくポイントを投げない方が見受けられる。それぞれの考え方や経済事情があると思う。配信アプリには「無料ポイント」というものがある。課金ポイントに比べると少なくはなるけど、それでもすべては積み重ね。オーディションによってはWEB投票での応援もできる。それをしないリスナーさんもいる
配信を観ていると、リスナーさんに対して、疑似恋愛的な甘い冗談をコメントして楽しんでいる方がいる(僕もする)。頼まれてもいないのに、配信の仕方について上から目線で「指導」のコメントをする方もいる
つまりそのライバーさんに、特別な意味でなくとも好意があったり、合格して欲しいと思っているわけだ。それでも楽しむだけ楽しんで、具体的な応援をしない方々について、違和感がある
これはライブ配信オーディションの抱える問題だけじゃなくて、もっと大きな問題かも知れない。人間の抱える狡さや弱さの問題かも知れない。僕はリスナーとして長く生きてきた部類なんで
僕が若い頃に比べて、日本は経済的にも文化的にも精神的にもどんどん貧しく生きにくくなった(そして最近の夏はあまりにも暑すぎる)。その代わり、理不尽なモラハラや古い根性論といった悪しき考え方はずいぶん減った
そういった変化を感じていない世代にとっては、与えられたものが「当たり前」だ。例えば30年前だったら、スクールカースト的にとても気軽にお喋りできなかった素敵な異性とお喋りできてしまう。さらにはマウントを取って「指導」までできてしまう
「人のことには関わらない」という風潮も出てきた。具体的な例は「政治の話はタブー」。かくして日本は老人にばかり都合がよくなり、民主国家として成立しているか危ういほどに腐敗し、みんなで貧乏になった
30年前にはバイトをしない学生がいた。生活費も学費も飲み代も親の仕送りで、親に買わせた高級車で遊びほうけてる人もいた。いまだに一部でバイト禁止という校則が残っているのは、バイトしなくても困らなかった時代の名残りだ
僕が応援しているライバーさんのファンは、自分が顔を突っ込まなくてもどうせスキルが課金するから、叩かれないように静かにしているのかもしれない。夢を見ているライバーさんのことも、自覚なくリアリティがないと感じているかもしれない
かくして石破氏が徴兵制を口にする時代になって、あなたは戦死するかもしれない。一方で意見を言ってきた老人たちは、若い頃は遊びほうけて老後は年金が貰えて困らない。権利を手にいれる、未来を掴むって痛みと引き換えなのだ
また別の話。例えば僕は音楽が大好きで、何万枚ものレコードやCDを所有してる。中古で安く手に入れたものも、プレミアがついて高く手に入れたものもあるけど、おおよそ1枚3000円。これも僕が大富豪だからではなく、体を壊すほどに働いた対価で購入したものだ
音楽を作るには大変な費用がかかる。音楽理論や楽器演奏やDAWや録音などの技術を学び、大変な時間と高額な機材を使って形にする。そうして作られたコンテンツに対価を支払うのは、僕の世代にとっては当然だった
いまでは世界中の珍しい音楽が、YouTubeや Spotifyの無課金ユーザーなら無料で楽しめてしまう。つまり、コンテンツに対価を支払うという感覚がなく、誰かが勝手に楽しませてくれると思っているのかもしれない
ライバーさんも時間と機材を使い、夢を叶えるために歌やダンスや演技やいろんな鍛錬を積んでる。仕事や勉強の合間に、寝る間も削って配信をしてる。そうしてやっと成立しているライブ配信に対して、自分が何かお返しをしなければという感覚が希薄なんだと思う
できる範囲でいい。楽しませてくれるライバーさんや彼らの夢に、無料ポイントでもWEB投票でもいいから応援をしてみない?
余談:僕の資金源について
悪意のあるライバーさんやリスナーさんが、僕のいないところで噂をしているのは知っている。それは「ぜんぶ遺産」という噂だ。遺産で遊びほうけてる放蕩おじさん、というわけだ
確かに僕は両親をとても早くに亡くし、祖父母も亡くし、相続した遺産がある。しかし病で働けなくなってしまったため、その遺産と一生懸命働いていた頃の、同世代の方よりは多かった収入を削って暮らしている
親を持たずに生きてきた苦しみと、体を壊すほどの過労との引き換えだ。年齢的にも病気的にも、子孫や家族を持つ可能性もなくなったので、保険を解約したお金もある。そしてそれは遠からず底を尽く
預金がなくなりライバーさんの夢を応援し尽くした時、やっと僕が生まれてきた理由ができるのかなと思っている
さらに余談:人権について
僕の抱える病は、重度の双極性障害と発達障害だ。つまり精神障害者だ。これは「脳という臓器」の病気だ。という意味で「心臓という臓器」や「肝臓という臓器」の病気と変わらない。しかし精神疾患だけは差別や侮蔑をしていいことになっている
応援していたライバーさんの出演するイベントで、ほかのリスナーさんに「キ◯ガイが来るな」と追い返されたことがある。応援していたライバーさん本人から、「キ◯ガイは何を言っても通じないから大嫌い」とブロックされたこともある
ほかの内臓器、あるいは四肢に病や疾患を持つ方に、あなたは同じことを言えるだろうか。そういった深刻な人権侵害との引き換えであることも、ついでにご理解ください