スパイスと仏像と君のにおい

好評につき、アプリで知り合った人と異国の料理を食べるシリーズの話を書きたい。

※とはいえ完全に後付けである。

フォロワーさんに言われるまで気づかなかったのだが、私はアプリで出会った人と異国の料理を食べる率がかなり高い。そして毎度何かしらのエピソードがある。

これは私が手当たり次第に人と会っていた2018年の夏のこと。

お洒落な人、と一言で言っても世の中には色々なお洒落な人がいる。

きれいめファッションなのか、ラフだけどお洒落なのか、はたまた個性が強いのか。

かつて、関ジャニ∞のファッショニスタ、安田章大担だった私は、今でも個性的な服装の人に憧れる傾向がある。

その男性はアシンメトリーなトップスに、ゆるめのサルエルパンツで現れた。「いい安田章大感」だった。

初めましての挨拶を終え、さて何を食べようか、となったとき。彼は「気になっていたカレー屋さんがあるんです」といいながらスマホでなにやら検索し始めた。

30近い年上男性が最初のデートでカレーかぁと思わなくもなかったが、たまたまネイビーのシャツを着ていたことにほっとしていると「あ、日曜日は閉まってました。」と残念そうに言う。

よし、カレーじゃないものが食べられる!と思っていたら「スリランカカレーって食べたことありますか?」と先に聞かれてしまった。どれだけカレーが食べたいのだ。

スリランカカレー。

スリランカは知っている。

昔はセイロンと言われていた、紅茶の産地。

と、その前に大好きなドラマのひとつ、『ラブレボリューション』。そのなかで、世界を飛び回るキャビンアテンダントの米倉涼子に、押尾学が地球儀を持ちながら、いろんな首都を聞くというシーンがあった。どこの首都を聞いても答える米倉涼子。

でも「スリランカの首都は?」と聞かれて止まってしまう。

そこで押尾学が「スリジャヤワルダナプラコッテ」と言いながら、何故か長めのキスをするという謎の演出があり子供ながらにこれはなんなんだと思っていた。

(諸事情で再放送が無いため細かいセリフは違うかもしれないが、スリジャヤワルダナプラコッテでキスをするという部分は記憶に自信がある)

そんな謎の思い出のスリランカのカレー、食べてみたい。

初めて会ったのにカレーかぁなんて思ったくせに、もう心はスリランカだ。

まあるく盛られたご飯にかけられた、さらさらとした液体のようなカレーはかなり辛い。辛いけど独特のスパイスの香りがたまらない。初めて食べる味だけどおいしい。

辛いねと言いながら、食べたことのない味のカレーをはふはふ食べた。

デザートのアイスを食べながら、おしゃべりをしているうちに、博物館に仏像の展示を見に行こうという話になった。

私は三十三間堂も興福寺にも行ったことがあり、知識はないが仏像を眺めるのが好きだ。電車にゆられ、博物館へ。

その展示はほとんど解説がなく、ただただ仏像が並べられていた。

彼も私もほとんど何も話さず、大事に時間をかけて仏像をひとつひとつ見た。

全部見終わったあとで、いやー、一人一人表情も、服も全然違った、服のしわ凄く繊細だったね、筋肉の表現がすごいね、と見たままの感想を言い合った。

観賞スピードといい、無駄に話しかけてこないところといい、本当に居心地がよかった。

そのあともなんだかんだで楽しく夜ご飯を食べたのだが、ここでこの話はおしまい。

私には「品性見極めレーダー」はもちろん、「既婚者見極めレーダー」も搭載されている。

彼からは確実に既婚者のにおいがした。

これはうまくは言えないのだが、何とも言えないこなれ感と安心感、重すぎない絶妙な彼女いなくて寂しいんですアピール。

絶対にあやしい。

そんなことを思っているうちに自然と彼との連絡は途絶えた。それからまもなくラインのアイコンは生まれたてホヤホヤの彼そっくりの赤ちゃんに変わっていた。

うむ、アプリではたまにあることである。

でも、この日私が出会ったのは、スリランカカレーだと思えばめっけものだ。それからも時々、ひとりで、誰かと、スリランカカレーのお店に行く。

アプリは人間だけではなく、私の知らないおいしいご飯にも出会わせてくれるのだ。

くらいのパトロンになりたいという奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。その際には気合いで一日に二回更新します。