MASSIVE CHANGE

短歌を作っています。能因法師(988−1050)=数奇者に最近関心があります。西行も憧…

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短歌を作っています。能因法師(988−1050)=数奇者に最近関心があります。西行も憧れた漂泊の歌人。

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グーグル、モバイルから「AIファースト」2016年10月6日

#日経COMEMO #NIKKEI

    • 12月のうた

      山門も閉ぢられ庭に吾ひとり白砂に浮く石の夕影 海の凪ぎ浜に膝抱く児の影に西入る陽より光ひと筋 天井の高きに揺らぐ日の影を仰ぎ見てをり背泳ぎしつつ キーボード打つ音幾つ西向かふ列車は渡る木曽三川を 眠らむと閉ぢたる瞼に点滅の影のやはらに十秒ほどの 受け取りしメールの六文字は太字なり「会社やめます」女の強さか 霊地(パワースポツト)と称さる磯に幾つもの穹廬の並び人の陽を浴ぶ

      • 11月のうた

        この夏もプールの児らの声のなく蜻蛉の数多羽根を乾かす 渓流の底ひを縫ひて白鷺の夏の深みの森に消えゆく 藁を焼く農家のありや谷間の集落包む夜気を焦がす 故郷の仏間に独り寝る夜にこの先遠くを心に宿す 薄雲る光を透かす障子戸の向かうに祖母の吾の呼ぶ幻聴 渓流の水の渡りに冷やされて森の匂ひの肺腑を浸す 広島行き急行降りし父ありて吾の今あり八月六日よ

        • 十月のうた

          山門の閉ぢられ庭に吾ひとり白砂に浮く石の夕影 海凪ぎて浜に膝抱く児の影に西入る陽より光ひと筋 胃に落とすカフェイン一錠倦怠の闇の暗みに溶けてゆくもの 一(ひと)秋に二度花咲かす金木犀にわが身重ぬる君のまばゆし この夏に妻を看取りし上司あり後ろ姿を長く見送る 趣味持たず妻を頼りの来し方の君が背中に夕影深し 子のあらぬ暮しもありと独りごつ酒場の面影昔は遠く

        グーグル、モバイルから「AIファースト」2016年10月6日

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        • 令和2年(2020)の歌
          1本

        記事

          10月のうた

          山門の閉ぢられ庭に吾ひとり白砂に浮く石の夕影            海の凪ぎ浜に膝抱く児の影に西入る陽より光ひと筋

          10月のうた

          九月のうた

          山門の閉ぢられ庭に吾ひとり白砂(しろすな)に浮く石の夕影 海の凪ぎ浜に膝抱く児の影に西入る陽より光ひと筋 天井の高きに揺らぐ日の影を仰ぎ見てをり背泳ぎしつつ キーボード打つ音幾つ西向かふ列車は渡る木曽三川を 眠らむと閉ぢたる瞼に点滅の影のやはらに十秒ほどの 受け取りしメールの六文字は太字なり「会社やめます」女の強さか 霊地(パワースポツト)と称さる磯に幾つもの穹廬(テント)の並び人の陽を浴ぶ

          九月のうた

          八月のうた

          この夏もプールに児等の声のなく蜻蛉の数多羽根を乾かす 渓流の底ひを縫ひて白鷺の夏の深みの森に消えゆく 藁を焼く農家のありや谷間の集落包む夜気を焦がす 故郷の仏間に独り寝る夜にこの先遠くを心に宿す 薄曇る光を透かす障子戸の向かふに祖母の吾呼ぶ幻聴 渓流の水の渡りに冷されて森の匂ひの肺腑を浸す 広島行急行降りし父ありて吾の今あり八月六日

          八月のうた

          七月のうた(2021)

          この地では極楽浄土をローマとふ五島奈留島かくれの里よ 父母(ちちはは)に導かれつつ洗礼を受けし思ひ出語る校長 子や孫にかくれの文化を伝えたし古老の一人は海につぶやく 断崖にオラショ唱えし窟見むと泳いで渡るイタリアの神父よ 祖の継ぎしかくれの品々収めたる慎ましき小家の浜辺に佇む 独り居は死者に語らふ時多し幼の思ひ心に浮かべて 無観客の球場に白球転りて夏蟬かしまし五輪の夏よ

          七月のうた(2021)

          縄文の歌人 ゼロ稿

          2007年(平成19年) 風に舞ふ日傘を仰ぐ浴衣の人懈きうなじに汗の一滴 路地裏の子らの歓声時を経て人なき空き地に蟬の音響く 君が呼ぶ初盆の化身か縁側に桃を吸ふなり黒甲虫 海原を走る飛魚白しぶきこのひと時を風の満ちたり アパートの間より上がる小花火淡き饒抱きしめてをり サッシュより忍び込む温き湿気台風一過独り寝る夜に 児はゲーム少女はメークの電車内我も打つなり携帯メール 一日を千五百キロカロリーと吾の決め暫くは電卓傍らに食む あな愛し小窓を濡らす霧雨の彼方に輝く東京タワー

          縄文の歌人 ゼロ稿

          六月のうた 2021

          人等みなマスクの日常東京は二度目の夏をはや迎へたり スクランブル交差点のマスクらは黙して行き交ふ梅雨寒の中 梅雨空の雲諸ともに東京は二度目の五輪を迎ふることに 夏至近き渋谷の夕暮れ信号の青待つマスクの影長く延ぶ 新しき病の変へゆく日常の果たてを影等怠く進みぬ 人と口交はさぬ日々のこのわれをベランダの朝顔今朝も慰む 朝顔の一花の落つるベランダのいまだも昼の熱を持ちつつ

          六月のうた 2021

          最近の十六首

          緊急事態延ぶる日の午後海集ふ若きら数多江ノ島遥か 酔ひかすか眼を廻り頭を上げば商ひかこつ酒場の主 店閉むる話聞きつつフラスコの底舐むる炎しばし見守る 点滴の管に繋がれ同僚は日暮れの窓に寝返りをうつ 誰からとなく等間隔に距離保ちライブハウスに本ベルの鳴る 月(つく)読(よみ)の羞ぢるかのごと鈍色の薄雲まとひて月蝕進む オンライン会議は強ひる我が顔を九十分間目(ま)守(も)りゐること 大正に嫁ぎし祖母の手鏡の幻灯のごと吾を映せり 新しき出逢ひ失ふ一年(ひととせ)か

          最近の十六首

          縄文の歌人(第二稿)~場所・時間・季節etc.~

          ベランダ通勤電車職場胃潰瘍気の付けば天井見つむ吾のゐてトイレにしばしあかつきにひとり シャワー浴び入院準備整へて一一九番自らの呼ぶ 胃から鼻へ鮮血赤く吸はれゆく血圧計の数字下がりぬ 血へど吐く吾の現し身気のつけば幾多の【テレビ会議】にて最中さすらる 降る雪を窓に見遣りて薬飲む吾の意識の白く濁りぬ 目覚むれば吾はベッドにひとりゐて無音の中を雪は降り積む 病室の窓に雪降りわが胸の内の里にも白く積みゆく 混濁の意識の濁り目の覚めて降りゆく雪の白に重なる 吾よりも少な

          縄文の歌人(第二稿)~場所・時間・季節etc.~

          五月のうた

          緊急事態延ぶる日の午後海集ふ若きら数多江ノ島遥か 陽を遊ぶ水着の娘らはやもゐて梅雨入り匂ふ湘南の浜 釈迦牟尼の哀しき眼に心和ぐ雨の降りしく暗き御堂に 酔ひかすか眼を廻り頭を上げば商ひかこつ酒場の主 店閉むる話聞きつつフラスコの底舐むる炎しばし見守る 点滴の管に繋がれ同僚は日暮れの窓に寝返りをうつ 月(つく)読(よみ)の羞ぢるかのごと鈍色の薄雲まとひて月蝕進む

          五月のうた

          四月のうた

          在宅の作業に厭きて窓見れば萌黄の色は陰雨にくもる 幼きの青き匂ひの何処にか鉢の紫陽花匂はずして オンライン会議は強ひる我が顔を九十分間目(ま)守(も)りゐること 大正に嫁ぎし祖母の手鏡の幻灯のごと吾を映せり ダム周(めぐ)る新緑の道に風光り四つの窓開け四駆の走る ビル間に虹落つる午後渋谷ゆくマスクの群れの歩みの軽し 夕映えの桜散り敷く公園に重き鞄と我ひとりをり

          四月のうた

          三月の歌

          豪快に笑ふなかにも哀しみの眼差し添ふるK.Iさん 彼の日より十年のけふ日輪の虹の環持ちて東京包む 梅の香に歩みを留む庭愛す夫婦思ひて再び歩む 「ありがとう」母の口癖思ひ出づ苦労の果てにと今にし偲ぶ 一杯の煎茶を啜り一日(いちじつ)のこころを決めむ休日の朝 海鳴りを子守歌とも吾の聞く北陸育ちは哀しき性なり 新しき出逢ひ失ふ一年(ひととせ)か名刺の減りに思ふ三月

          四月の歌

          在宅の作業に厭きて窓見れば萌黄の色は陰雨にくもる 幼きの青き匂ひの何処にか鉢の紫陽花匂はずして オンライン会議は強ひる我が顔を九十分間目(ま)守(も)りゐること 大正に嫁ぎし祖母の手鏡の幻灯のごと吾を映せり ダム周(めぐ)る新緑の道に風光り四つの窓開け四駆の走る ビル間に虹落つる午後渋谷ゆくマスクの群れの歩みの軽し 夕映えの桜散り敷く公園に重き鞄と我ひとりをり