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11月のうた

この夏もプールの児らの声のなく蜻蛉の数多羽根を乾かす

渓流の底ひを縫ひて白鷺の夏の深みの森に消えゆく

藁を焼く農家のありや谷間の集落包む夜気を焦がす

故郷の仏間に独り寝る夜にこの先遠くを心に宿す

薄雲る光を透かす障子戸の向かうに祖母の吾の呼ぶ幻聴

渓流の水の渡りに冷やされて森の匂ひの肺腑を浸す

広島行き急行降りし父ありて吾の今あり八月六日よ

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