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時をかける父と、母と

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若年性認知症の父と、がんで逝った母について、30代の私が記録したエッセイ。幻冬舎×テレビ東京×noteのコミックエッセイ大賞にて準グランプリを受賞。
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#若年性アルツハイマー型認知症

父のfacebook魚拓①

2015年で自分の更新が止まっている父のfacebook投稿。 よくわからないままに触っては変な言動を繰り返している父が当時はちょっと恥ずかしかったけど、今は当時の父のリアルタイムな投稿や、貴重な母の動画などもあったりして、立派な家族遺産となっている。 いつか何かしらの理由でアカウントに辿り着けなくなる時に備え、たまに遡って、魚拓を取っておこうと思う。 こちらは2012年10月の父のfacebook日記。 認知症の兆しがバンバンと見える中でアメリカ単身赴任していた頃の投稿

認知症の父から見える世界

私の父は若年性認知症だ。そして私は現在35歳。要介護3となった父は有料老人ホームで暮らしている。 「さくやがきてくれて、この生活に光が見えた」 有料老人ホームに入所したばかりの父が、訪れるたびに私に言った言葉だ。新しい暮らしが嫌だという文句を言わないかわりに、父は何度かこう言った。それを聞くたびに私は、ほんのり心が暖かくなりつつも胸が痛んだ。 そしてその言葉の意味を考え、父から見える世界と私の役割を想像してみた。それはこんなイメージだ。 「光」の意味をしばらく考えて、