母の認知症、幻視
夕飯の支度が3人分準備されていた。
「誰の分?」って聞くと、
母は「お父さんの分」と言う。
続けて「あれ?あの人は死んだんだっけ?」と言う。
わたしは「幽霊なんじゃない?今日は帰ってきて家にいるんじゃない」と返す。こんな時なんというのが正解なのかわからない。
わたしがイオンに買い物に行くと出かけ、帰ってくると、
母は「お姉ちゃんも帰ってきて、イオンに行くって出かけたけど、会った?」と私に聞く。
わたしは「会わなかったよ、お姉ちゃん来たんだ、めずらしいね、元気そうだった?」と聞くと、
母は「元気そうだった」
母のすこし上のお姉さんがいる。息子が3人いるが、孤独死で腐敗して見つかった。「ユキコ、どこで寝てるのかしら?さっきまでそこで横になっていたのに、どこかいっちゃった。どこにいるかわかる?」
わたしは「居間で寝てるんじゃない」と言うと、「そう、それならいいんだけど」
母の見えている、その父は最初の父なのか、二番目の父なのかはわからない。どちらでもわたしにとってはどうしようもない男だ。
姉はずっと行方がわからない。どこに住んでいるかもわからないし、電話もでない(だろう)。会うたびにお金をせがむ女だ。
ゆきこは病弱で、旦那には浮気され、暴力を受け、時折、うちに逃げ込んできていた叔母だ。
母はたくさんの人に囲まれて楽しそうだ。ほんとうにいろんなことがあって、苦労したはずなのに。
今、母がみている世界は母は愛情表現のできなかった人たちなのかもしれない。後悔があるのかもしれない、気がかりなのだろうか、幻視なのか、幽霊なのか。
ただ思う、愛したかった人を悔いのないように愛せばよい。
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