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フリーランス転向・移住。「何をしたいか分からなかった」ひとりが、家族で理想の暮らしを実現するまで

「あなたはどう生きたいの?」

SNSで他人の人生を目の当たりにできる今の時代、常に社会から生き方を問われているように感じる。

このままで良いんだろうか、もっと納得のいく生き方があるんじゃないか。でも、やりたいことが分からない、自分らしさが分からない。そう悩む人は多いのではないでしょうか。

自分が何をしたいのか分からなくなっていました。

今回お話を伺った中楯知宏(なかたて ともひろ)さんも、自らの道を見失っていた1人。しかし、今のパートナーと出会われてから、一緒に「自分たちらしい暮らし」を追求するようになったそう。

そして、結婚とお子さんの誕生というライフイベントを迎えるなか、フリーランスへの転向・北海道移住の決断をされました。

はにかみながら「家族と一緒に好きなところで好きなことをしたい」と語る中楯さん。

ひとりで迷っていた状態から、パートナーと出会い家族として理想の暮らしを追求するまで、どのような変化があったのでしょうか。

「自分を大切にするため」に生きると決めた

フリーランスとして、様々なプロジェクトのマネジメントに携わっている中楯さん。しかし、会社員時代は自分を見失っていた時期もあったそう。

中楯知宏さん(以下、中楯):ちょうど前職で壁にぶつかっていた時期でした。会社を挙げてのプロジェクトに関わっていた中で、思うように進められなくて。

関係者が多く、色んな人がアドバイスしてくれたんですけど、それを踏まえてどうしたいのか、自分で考えて決断することができなくなってしまったんです。通勤中の電車で涙がふいに流れることもありました。

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今思えば、本当にメンタルが死んでましたね、と振り返る中楯さん。

その状態から抜け出すきっかけとなったのは、奥さんとの出会いでした。

中楯:沈んでいた時期に奥さんと出会ったんです。出会った日から気張らずにいられたというか。あんなに四六時中考えていた仕事のことを忘れるくらいに、心地良かったですね。

最初から、ふたりで過ごす日常に違和感がなかった。その心地良さに加えて、中楯さんの意識を変える奥さんの一言があったそうです。

中楯:奥さんがふと「人ってなんのために生きていると思う?」って聞いてきたんです。僕が考えあぐねていると、彼女は「自分を大切にするためだよ」って。

それまでは周りに合わせて、全体最適を考えながら立ち振るまうべきだと思っていたので、自分本位な考え方に抵抗があったんです。でも、自分を大切にしても良いんだ、と気付かされた。あぁ、この人とずっと一緒にいたいな、と強く思いましたね。

そこからです、僕自身が何をしたいのかを考えられるようになったのは。

今でも印象に残っているという、奥さんからの一言。この言葉が、中楯さんご夫妻の暮らしを大きく変えていくことになります。

ふたりになって取り戻した自分の”やりたい”

自分が何をしたいのか。

考える中で、浮かんだのは「そもそも、なんで会社に行く必要があるんだろう」という疑問。

中楯:会社に行っても、一人で作業している時間の方が多かったんです。それだったら、家とかカフェで奥さんの隣でパソコン開いても同じことできるじゃん、って。

ふたり

この疑問の根底にあったのが、「家族との時間をなによりも大切にしたい」という想いでした。

加えて、ふたりとも旅好きだったこともあり、旅しながら働きたい! と、働く場所や時間にしばられないフリーランス転向の決断をしたそうです。

中楯:もともと旅行が好きで、学生時代にバックパックで色んな国に行っていたんですが、もっといろんな場所に行ってみたくて。世界には国の数だけでも200近くあって、地域も入れると数え切れない。自分の人生をかけて、それらを回ってみたいって思ったんです。奥さんとも話し合って、場所に囚われず働きたい、と考えるようになりました。

実際にそういう働き方をしている人がいるのなら、1回チャレンジしても良いかもなって。ダメだったらまた就職し直そうと思い、挑戦してみたんです。

周りのことを優先し、自分の”やりたい”を押し殺していた中楯さん。今までの彼だったら、ここまで強い想いで挑戦を選べなかったのではないでしょうか。

自分を大切にしても良いんだ。そう気付かせてくれた奥さんとの出会いがあったからこそ、自身の”やりたい”を取り戻し、ふたりで実現する道を選べたのかもしれません。

お子さんの誕生「一緒に旅に行ける仲間が増えた」

しなやかな覚悟を持って、会社を辞める決意をした中楯さん。そんななか、会社との退職交渉中に奥さんの妊娠が発覚。

多くの人は、環境を大きく変えることに躊躇するような状況です。そのような状況でも、中楯さんはフリーランスに転向し、さらに東京から北海道への移住を決断。

決断の背景をお聞きすると、そこにはポジティブな想いがありました。

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(北海道の滝野すずらん公園にて)

中楯:フリーランスになることは、「家族との時間を大切にしたい」という自分の想いを実現できるいちばん最適な手段だと思っていました。なので、子供が生まれるからといって迷いはなかったですね。むしろ、やるしかないな、って。

移住に関しても、「自然がいっぱいの環境で子育てをしたい」ことはふたりの中で一致してましたから。移住フェアでご縁のあった北海道へ移ることは迷わなかったです。

何より出産前の奥さんの身体にとって、自然あふれる北海道の環境はとても良かったですね、と振り返る中楯さん。

中楯:「旅をしながら働く」は、すぐに実現するのが難しくなりましたけど、子供を授かったのは単純に嬉しかったです。「一緒に旅に行ける仲間が増えたね」と奥さんと話していたことを覚えていますね。

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(北海道の長沼にて)

分かり合うために、互いのビジョンを共有する

家族として暮らすにあたり、すんなりとお互いの希望や志向が一致していたように思えます。もしふたりの間に意見の食い違いがあったときは、どのように向き合っているのでしょうか。

大切なのは、「お互いを尊重すること」だといいます。

中楯:意見が一致しないからといって、相手を否定していいことには繋がりませんよね。主張をぶつけ合って、自分の意見を押し通すのが目的じゃないですし。

AとBって意見が出たとき、「AかBか」じゃなくて、「AもBも」叶うようなC案をふたりで探すんです。そうやって、お互いの意見を尊重していますね。

身近な例だと、と語ってくれたのは食洗機の導入。家事の分担はしていたものの、どちらかの負担が増えてしまったとき、負担をふたりで分け合うことだけ考えるのではなく、第三的な機械の力を導入して解決したのだそう。

ささいなことでも、ふたりの意見がどちらも叶う第三の道を探す有用さを感じます。

中楯:一番意識しているのは、「なんでそれがやりたいの?」とか「その意見はどういう価値観や経験から来ているの?」「なんでそれが大事なの?」とか、深い部分まで掘って話すことですね。

子供が生まれる前は、『世帯経営ノート』を使って、仕事や住まい、自由時間、家事などの項目について、どういう状態が理想かな、ってふたりで話していました。

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(話し合いで実際に使われていたノート。書き込み式のノートブックです。)

根本の理想を話し合って理解するからこそ、お互いのやりたいことに対しても「この人が言うなら、本気でやりたいんだろうな」と応援しようと思えるんです。

話し合いは手段。まずは相手を大切にすることから

子育てに関しても、ふたりで話し合い、中楯さんは仕事メイン、奥さんは子育てメイン、と役割分担をしたとのこと。

ふたりで話し合い、合意をとった上で役割分担をする。全てが順調に進んでいそうに感じますが、上手くいったことばかりではないと、中楯さんは語ります。

中楯:仕事はリモートでできるので、ずっと家で一緒なんですけど、僕は2階で働いて、奥さんは1階で子供を見ている。一緒に育児をしていたつもりでしたけど、奥さんからしたら「ちょっと一瞬だけ見ててほしい」みたいなとき、僕を頼りにくい部分もあったみたいで。

同じ空間にいるのに、リアルタイムに相談できない場面があるとかえってストレスを抱えてしまう。この状況を、どのように解決したのでしょうか。

中楯:相手がどういう苦労をしているのか、を把握できていないのが大きな原因だと思っていて。なので、日中も互いの状況が分かるような距離を保ちつつ、より一層話し合う時間を大切にしました。

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0歳とか1歳の子供って成長のスピードが早い。余裕がある日は1時間ほど、子供の状態について共有する時間をとりましたね。加えて、お互いが何を感じていて、今後どういうことをしたいのか。想いを共有する時間も、意識的につくりました。

なるほど、ふたりで互いの理想に向かうためには、やはりとことん話し合って情報や感情の共有することが大事なのか。そう思っていた矢先、中楯さんからハッとさせられる一言が。

中楯:とは言っても、あくまで話し合いは手段ですからね。

手段が目的になってはダメですよ、と柔らかい口調で語る中楯さん。話し合い自体は手段であって、その先にある”やりたい”の実現が本当の目的なはずだ、と続けてくれました。

中楯:子育てや仕事で疲れ切っているときに、「話し合いをしなきゃ!」と手段ばかりに固執しても上手くいかないですよね。お互いに向き合うばかりで煮詰まったら、意図的にひとりになれる時間をつくって、それぞれリフレッシュすることもあります。

一番根底にあるのは、相手を大切にすること。だからこそ、ふたりで互いの”やりたい”に向き合って、実現できているんだと思います。

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(結婚4周年のとき、奥さんが描かれたイラスト)

インタビュー中に何度も出てきた「話し合い」というワード。

やりたいことは何か。なぜそれをやりたいのか。どういう価値観があるのか。お互いの根幹まで話し合えている”ふたり”は少ないのではないでしょうか。

そのなかで「これからは子供が生きる未来を考えて、環境に良い暮らしを家族で作りたい」と話す中楯さんの表情は、とても幸せそうなものでした。

異なる価値観を持つパートナーと、理想をすり合わせるのは難しい。けれど、ふたりだからこそ、”やりたい”に向かって挑戦する力を得られることもあります。

お互いを大切にするという土台。その土台の上で話し合って、ふたりの”やりたい”へと歩いていく。

「あなたはどう生きたいの?」

この声が社会からではなく、大切な人から届けられたとき、不安ではなく前に進む力が生まれるのかもしれません。

取材・文:安久都 智史
編集:村尾 唯

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