俺TUEEEE系で成長はどう描かれるか

俺TUEEEE系と言われる作品では、主人公はその予め与えられた強さで無双することで、爽快感を与えると思う
一方ですでに能力があるため、弱い状態から強い状態に変化するという成長が描きにくいという課題があると思う
この問題に対してどのように対応されているのかをまとめてみたい


組織や弟子を成長させる

主人公を組織のトップや学校の先生といった存在として描き、主人公自体は成長しないが、主人公(あるいはその部下)が指導する相手を成長させたり、最初は小さかった組織を大きく成長させていくというパターンがある

主人公が指導する弟子(生徒)は最初は弱いため、自分と同じぐらいの相手に苦戦をしながら成長をしていく
その合間のいざという時にのみ主人公がでてきて手助けをするという構図になる
この構図では、『成長をメインとして描く』か、『俺TUEEEEをメインとして成長をサブとするか』のバランスによって読後感の印象がかわる
成長をメインとした場合は苦境に立たされた時にのみ俺TUEEEE系としてのカタルシスが生まれることになり、俺TUEEEE要素は薄いと言える
一方で、このパターンの利点は、成長が描けるという利点とはずれるが、主人公が組織に階層構造をもたせることで、主人公の強さが相対的に表現できるという点もポイントだと思う

陰の実力者になりたくて!

例えば、「陰の実力者になりたくて!」の場合は、成長よりも俺TUEEEE要素がメインの作品である
シャドウガーデンは、主人公をトップとして、その直下に七陰という側近クラス、その下にナンバーズ、更にその下に単なる番号の構成員という構成になっており、強さはその階層通りの、主人公>七陰>ナンバーズ>構成員となっている
成長という意味では、ナンバーズまでは主人公の強さを際立たせるため、すでに成長しきっているように描かれ、成長要素自体は新加盟の最下層の構成員が担っている
そして、その成長を描かれるメインとなる新加盟したメンバーも、組織外では一定の強さを示しているにも関わらず、既存メンバーの一番弱いとされる構成員との模擬戦等でてんで話にならないことで、組織の層の厚さを示し、結果主人公を際立たせる効果がある

古き掟の魔法騎士

最強の騎士であるシドが現代に蘇り、落ちこぼれ学級の指導教員となり、王家を継ぐため奮闘するアルヴィンらを指導し導いていく物語
成長よりの物語で、落ちこぼれと評されているクラスの生徒たちが成長し、鼻につくエリートたちを倒していく爽快感がある
作者の羊太郎さんが描いているもう一つの「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」も同じように、生徒たちを導き指導する教官型で成長と俺TUEEEEが楽しめる作品になっている

強さを一時的に借りてるだけ

主人公は、二重人格(あるいは無意識)や、自分の内に内包(封印)する強い存在や、自分だけが見ることができる幽霊のような存在や、明確な他人から力や知恵を借りて俺TUEEEEを実施する
あくまでも、主人公はその存在からの力を借りているため主人公自身には力がないため、その存在に近づいていくような形で成長を描ける
ジャンプ作品とかに多い印象

ヒカルの碁

ヒカルの碁がこのパターンの代表で、主人公であるヒカルは祖父の物置で見つけた囲碁盤に触れることで、平安時代の天才棋士である藤原佐為をその身に宿し、ヒカル本人は全く囲碁に興味もなく碁石を持つ手もおぼつかないにも関わらず将来を嘱望される塔矢アキラなどをバッタバッタと倒し、俺TUEEEEを発揮する
一方で、ヒカル自身が囲碁に興味を持ち出し、ヒカルが強いということを知らない(疑っていたりする)人たちと部活動を通して、成長する姿が描かれる
このパターンは、正体隠匿系の面白さもあり、強かったり弱かったりすることで周囲が疑念を持ったり確信を持ったりする面白さもある

ダイの大冒険

ダイの大冒険も同じパターンで、主人公のダイは窮地に陥った際に、額に浮かぶ竜の紋章が光り、とてつもない力を発揮して俺TUEEEEを発揮する
しかし、ダイの大冒険の場合は、俺TUEEEEというよりは一時的に強さを増加させるバフのようなもので、その時点でのダイの力に依存するので、俺TUEEEEとは受ける印象が異なる

佐々木とピーちゃん

主人公の佐々木はペットとして購入した文鳥で、異世界から転生してきた賢者のピーちゃんの力を利用して、現代やピーちゃんが元いた異世界を無双していきつつ、佐々木自身はピーちゃんから教わり魔法を習得して成長をみせる
どちらかというと俺TUEEEEがメインとなっている

LIAR GAME

主人公のナオは、バカ正直という特技があるものの、ナオが巻き込まれたゲームを勝ち抜いていくには適していない能力だが、協力してくれる秋山が天才的な頭脳を持つというチート能力を借りて勝ち抜いていくことになる
ナオ自身は成長を見せるものの、芯にもつ部分だけはブレないというところがある意味最初からずっと俺TUEEEEだったともいえる

強さそのものではなく、強さを得る機会を与える

主人公は、何らかの存在からチート能力を与えられるが、能力そのものではなく、能力を得られる機会を与えられる
これによって、与えられた瞬間は主人公は弱いままだが、その機会を利用して成長することができる
一方で、弱いままでは俺TUEEEEができないので、タイミングタイミングで必要な能力を得る感じに描かれる
あるいは、俺TUEEEEできるようになるまでは、表舞台にはでずただひたすら修行パートを行う形になる
このパターンは、ある意味で、俺TUEEEEできるようになるまでのフェーズをすっ飛ばさずに、成長フェーズとして丁寧に描く物語ともいえる
主人公が努力できることが前提になっていることが多い

俺だけレベルアップな件

主人公の水篠旬は人類最弱兵器とも呼ばれるE級ハンターだったが、絶体絶命のピンチを乗り越え、「システム」のサポートを得て、他のハンターが出来ない成長(レベルアップ)をする機会を得る
機会を得ただけで、すぐには俺TUEEEEを発揮できないので、しばらくはただ一人苦戦をしながら成長をした後に、俺TUEEEEを発揮していく
俺TUEEEEもしながら、成長できる優位性に爽快感を与えている

超難関ダンジョンで10万年修行した結果、世界最強に

「この世で一番の無能」というギフトを与えられた主人公カイは、そのギフトのせいで病弱で弱くいじめられ、蔑まれ、果ては追放されてしまう、その道中襲われ死にそうになるところで、「神々の試練」を与えられるダンジョンに迷い込み、10万年かけて最強の神々を順に支配下においていき、自身も最強の存在に成長する
この作品は、この修行という機会が与えられたことが俺TUEEEEのきっかけになっており、その時点では最弱なのだが、本人の努力の結果成長する過程が描かれそこからは俺TUEEE作品として楽しめる形になっている
このように、成長の過程を描いた後に俺TUEEEEを描くのは成長が描きにくい俺TUEEEE作品にとって良い手法だと思う

予め与えられた能力以外を成長させる(使いこなさせる)

このパターンは、予め与えられた能力だけで基本的には無双できるが、それ以外の能力が劣るためその部分を成長させることで完全体を目指していくような形で成長を描く
あるいは、特定の部分だけ異常に能力を持っており、その能力は俺TUEEEEできるのだが、うまく使いこなせておらず、素人同然の分野に転用していくことで、暴走気味だったりするのだが、少しずつ全体として力を発揮して成長していける
そもそも成長して大活躍する作品は『なんらか才能がある事』、あるいは『圧倒的努力でカバーできる(これが才能とも言えるが)事』が前提となっていて、ほとんどの作品がこれに当てはまるので、俺TUEEEEというよりは成長作品としての印象を受ける
特化型でほかはポンコツみたいな俺TUEEEEではない印象の作品も多い気がする

ダーウィンズゲーム

主人公の須藤要は、デスゲームに参加させられ、「武器を取り出せる」異能を与えられ、その能力で俺TUEEEEができるのだが、それ以外の身体能力などを高めていかなければフルに活用できないためそれ以外の能力を高めることで成長を描く

スラムダンクの桜木花道の身体能力
アイシールド21の小早川瀬那のパシリで培った脚力能力
弱虫ペダルの小野田坂道のアキバへのチャリ往復で培ったチャリ能力
など枚挙に暇がない

他にも俺TUEEEE作品で成長を描くパターンを発掘していきたい


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