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目を窄めるのは夕陽のせい

2022/05/23 #13:hiko

また1週間がはじまった。

1週間。
連続する時間を誰かが都合よく切り分けた内の一区切り。
そのなかで生きている。


今日は3限に中間テストがあって、その後SPIを受ける。

中間テストがあることは昨日の22時に思い出して、
いつもの「やべぇ何もしてねぇ」の状態に。

でもそのときは『響け!ユーフォニアム』を一気見している最中だった。
当然、勉強は後回しになった。

そのまま眠りに落ち、目が覚めたのは朝7時。
勉強するためだ。

しかし最近の俺はどうもモチベーションが低く、
結局8時半まで合計9度寝を演じてみせた。

起きてから40分間、出題範囲の講義プリント6枚の内
2枚を復習した。

着替えようかと思ったとき、重大な忘れ物に気づく。
SPIの受験票だ。
テストセンターのマイページにログインして、受験票をプリントアウトしなければいけなかった。
気づけてよかった。

すぐにログインして印刷コマンドを入れると、
ダイアログが表示される。

「プリンターがオフラインです」

画面を👊でいこうかと思った。

試行錯誤してもダメだったので、スクリーンショットを撮ってコンビニでプリントすることにした。

急いで支度をするも、この時点で10分の遅刻が確定。
2限は遅れても大丈夫だけど、
先生がかわいいからできるだけ早く着きたい。

駅に着いて電車を待つ。この時点で遅刻20分が確定。

電車に乗って昨日のsukeの日記を読む。
そこには、行動はダメなのに態度がモテるクズ男みたいなやつがいてクスッとした。
懐かしいのか羨ましいのか、そのどれでもないのか、
なんとも言えない感情が生まれた。
俺も女の子と遊びたいな。

しばらくして電車は学校の最寄り駅へ。
いつもより早足で学校へ向かう。
日々上がる気温のせいで背中にじんわりと汗をかきながら、教室の前についた。

「休講情報 2限 ○○先生」

という貼り紙。👊で行こうかと思った。

はい。またやりました。ほんと情報に疎い。

ただ、3限にはテストがある。勉強しよう。
席についてプリントを広げる。
とりあえず携帯触ってからにしよ。

そんな感じでグダグダながらも勉強したおかげか、
テストの問題はほとんど分かった。
8割は取れてると思う。


終わった人から帰っていいとのことで、早めに終わった俺はすぐに教室を出た。

SPIは16時からで、時刻は14時。
だいぶ余裕がある。
起きてから何も食べていないので、ご飯を食べることにした。

電車で会場に移動する。場所は御茶ノ水。
余談だが、俺は高校時代、御茶ノ水の塾に通っていた。
乗り換え以外で降りるのは久しぶり。
あれ?まじで高校生ぶりかも。

とういことで御茶ノ水に到着。
お店はもう決まっている。
高校時代に何度もお世話になった、『博多天神』というとんこつラーメン屋さんだ。

550円で替え玉1つ無料という親切プライス。
あと提供がめちゃめちゃ速い。まじで1分かからない。

恥ずかしくて急いで撮ったので構図とかは許してほしい

そしてこの具だくさん。
スープはまろやかなのにしっかり豚骨が香る。
麺は細くて固め。速さの秘訣だ。

きちんと替え玉を注文する。
2杯目はにんにくペーストと紅しょうがを混ぜる。
ここに来た時は必ずこの2つを入れる。

寿司や蕎麦にわさびはいらないし、牛丼に紅しょうがや七味唐辛子はいらない。
それほどに薬味を必要としない俺がだ。

にんにくと豚骨との相性は言わずもがな、紅しょうがを入れることでなんとなく甘みが出る。知らんけど。

とにかくうまい。

ペロリ、とは行かないまでも、最後まで美味しく頂く。

一口もつけていないお冷を飲みながらお金を出す。
席を立ってお会計。
高校時代は500円だったなぁと思いを馳せながら550円を払う。世知辛いねぇ。

時刻は15時。まだ時間がある。

お店の目の前に丸善という本屋さんがあり、何の目的もなくふらっと入ってみた。

きょろきょろしながら歩いていると、「俳句・短歌」と書かれたコーナーがあった。
先日、『スッキリ』で短歌特集が放送されていて、
紹介される歌がどれも良かったので気になっていた。

何となく1冊を手に取ってぱらぱらと捲っていく。
考えさせられるものや、自然と口角が上がるもの、何言ってるのかわからないものなど、どれも個性的な歌ばかりだった。

そのなかで一句、
胸の奥を引きずり出されるような、
感動して興奮しながら、
同時に泣き出しそうになるような歌があった。



気づけば時刻は15時30分。そろそろ行こう。

高校時代は縁がないと思っていた、見上げるような高いビルに入っていく。
受付を済ませ、説明通りに荷物をロッカーにしまう。
待ち時間0分でSPIが始まった。

結果から言うと、まじで出来なかった。
注意書きで問題は口外するなとあったので詳しくは言えないが、とにかく酷かった。まぁわかってたけど。

自分の不出来さを自覚しているとはいえ、
それなりに落ち込んだ。

時刻は16時20分。ただ帰るのはなんか悔しかった。

御茶ノ水から歩いて秋葉原に行ける。4号沿いを行けば上野にも繋がってる。散歩のコースが決まった。

とは言っても、行く宛てもないのでただただ歩く。

流石は秋葉原、メイドさんがたくさんいる。
メイドさんかわいいよね。
またメイドカフェ行きたいなぁ。
ん?バカにしてる人いる?
メイドって言ったらアキバのアイドルだからね?
世間は許してくれやせんよ。

そんなことを考えていたため、自然とメイドさんを見つめてしまう。
男1人で歩いているからか、ほぼ全員から勧誘される。
ごめんね、俺がもっとお金持ちになったら行くからね。


上野方面へ歩いて行く。見覚えある景色にはっとした。
いやまあ、何度も来てるから見覚えはあるんだけど。

あれは確か今年の2月のこと。
サークルの後輩と映画『呪術廻戦』を観たとき。
場所は上野の映画館だった。

電車の都合上、上野からほど近い駅に集合して、数分歩いて映画館へ向かった。

その道に見覚えがあった。
普段使わない駅の、1度往復しただけの道を、目だけはきちんと覚えていた。

懐かしい気持ちに背中を押され、
その駅から帰ることにした。

電車は最寄り駅に到着する。
自転車に跨り、ペダルを踏む。

時刻は17時40分。本屋でみつけた歌を思い出す。

「地に足をつけたいという申し出を
     地がやんわりと断ってきた」

俺は今日、
「大学生」として学校へ行き、
「就活生」としてSPIを受験した。
「普通」でいようとして、
「普通」じゃいられないことを知った。

帰り道の公園で、子どもたちが無邪気に走り回る。
その横顔を照らすのは、1日輝き疲れた太陽が休もうとそのからだを傾けた、夕陽だった。

間違えて直視してしまった。

だから目を窄めるのは夕陽のせい。

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