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ドラマ「仮面ライダーBLACK SUN」2022年

ドラマ「仮面ライダーBLACK SUN」2022年
畑で収穫した芋柄の薄皮むきが丸一日かかりました。
手元はずっと動かしていなければなりませんが、目と耳は空きますので、こういう作業の時は、自宅に持ち帰って、動画を見ながらの作業となります。
いちいち、番組は変えられませんので、こういう時の選択は、連続もののテレビ・ドラマとなります。
前シリーズまではみている、アニメの「鬼滅の刃 遊郭編」にしようかと思ったのですが、今回はAmazonプライムで配信が始まったばかりの本作をチョイス。
エピソード10までを一気に鑑賞いたしました。
白状しておきますが、現在までに放送されてきた「仮面ライダー」シリーズは、まともに鑑賞しているシリーズはひとつもありません。
初代「仮面ライダー」がオンエアされたのは、1971年でしたが、この時はすでに中学生になろうという年齢になっており、特撮怪獣オタクからは、ほぼ卒業していました。
但し、弟たちは、ど真ん中の世代でしたので、その熱狂ぶりは、バリバリの怪獣オタクだった自分のノリを思い出しつつ横目で眺めておりましたね。
そしてウルトラマンやウルトラセブンから比べれば、一気に等身大になってしまった変身ヒーローものの流行は、怪獣ものではセットを作るのがお金もかかって大変だという大人の事情なのだろうと察したつもりでいました。
とまあそんなわけで、「シン・ウルトラマン」にはついていけるのですが、現代に復活する仮面ライダーということになりますと、そのリテラシーはほぼ一般常識程度。
原作の石ノ森章太郎氏はもちろん偉大な漫画家としてリスペクトしていますが、その作品は、僕の世代では「サイボーグ009」の終了まで。「仮面ライダー」「人造人間キカイダー」となると、もう年令的についていけませんでしたね。
本作の原作となる1987年放映の「仮面ライダーBLACK」に至っては、こちらはもう完全に社会人でしたから、「え❓そんなシリーズがあったの❓」というのが正直なところ。
そのように仮面ライダー世代では全くない僕が、この配信ドラマを見てみようと思ったのは、監督に起用されていたのが白石和彌であったことに尽きます。
この人が監督した作品は、最近では「孤狼の血LEVEL2」を見ていますが、これは鈴木亮平の怪演もあってかなり痺れました。
その他にも、その一作目「孤狼の血」、「凶悪」など、彼の作品で見た映画ではまずハズレがなく、特にアウトローを描かせたら抜群の演出力を発揮することは承知していたので、その監督が、大人にもターゲットを広げた上で、きちんと一線の人気俳優を起用して、本気でアダルトな変身ヒーローものを演出したらどういうことになるかのかという興味が湧いたからです。

主演は西島秀俊。
昨年の「ドライヴ・マイ・カー」で、日本アカデミー賞主演男優賞を獲得した現役バリバリのトップ俳優に、大真面目で「ヘンシーン❗️」とポーズさせるわけですから、これはお手並み拝見ということになりますね。
彼は年齢的に仮面ライダー世代で、シン・ウルトラマンでは変身できる役ではなかったので、この作品では、「変シーン❗️」のポーズを是非やらせてくれと、監督に直談判したとのこと。
このダークな仮面ライダー役には、かなり入れ込んでいたようで、その役作りには、「ブレードランナー」でハリソン・フォードが演じたディッガードや、あの足を引きずって歩くシーンなどは「マッドマックス」でメル・ギブソンが演じたマックスを相当意識していた気がします。
その他、知っている顔は、吉田羊、ルー大柴、濱田岳、中村梅雀、寺田農くらいでしょうか。
あと、三浦貴大は、後で調べてみたら、三浦友和と百恵夫婦の御子息と判明。
やや太めで、主人公というわけにはいかなかったようですが、悪役怪人から、ドラマ最終盤では、主人公たちを助ける正義の味方になるというなかなか美味しい役どころ。
全ての怪人は、変身後は完全に、生物形モンスターになってしまうのに、彼の演じるビルゲニアだけは、甲冑魚怪人であるにも関わらず、彼自身の顔がそのまま変身後にも残っていて、スーツアクターも彼自身が演じており、他の怪人に比べて、ちょっとマヌケな感じが否めませんでした。
お母様の感想や如何に。

本シリーズで、これは完全に大人向けの演出だと思うのは、描かれている政治家たちが、明らかに安倍政権の頃をモデルにしているところでしょうか。
総理大臣を演じたルー大柴は、完全に総理大臣時代の安倍晋三の言動をパロディにしていました。
それよりも、完全なパロディだったのは、総理の横でいつも何やら耳打ちしている幹事長を演じていた寺田農が完全に麻生副総理の形態模写でしたね。
そうすると、さしずめ、最後に総理に収まる官房長官役の尾美としのりは、前菅総理のパロディということになりそうです。
国会質問での野党とのやりとりも、安倍政権当時の国会中継を強烈に皮肉っていました。
こういった当たりの描写は、今では相当に政府寄りになってしまった電通が仕切っているテレビでは、絶対に放映出来ないドラマなのでしょう。
こんな発言をもしもテレビでしようものなら、すぐに某キャスターのような運命になりそうです。
本作の原作は漫画ですが、漫画は元々が社会風刺の文化から育ってきたメディアです。
それが、牙を抜かれてしまって、政権にスリスリして、お茶を濁しているようになってしまっては、健全な社会とは言えないでしょう。
本作は、「仮面ライダー50周年記念」という節目のシリーズということで、仮面ライダーがテレビに登場した1972年と、今年2022年のドラマとが、同時並行していくというドラマ構造になっています。
これは、僕のような映画ファンなら、すぐに浮かぶ「ゴッドファザーPART2」で使われたスタイルですね。

本作のヒロイン和泉葵を演じるのは、平澤宏々路。
2007年生まれと言いますから、現在15歳。
今回初めてお目にかかりますが、どうしても僕の目には、若い頃の、池脇千鶴に見えてしまってしょうがありませんでしたね。似てたなあ。
本シリーズは、怪人と人間の差別問題を、意識的にドラマに取り入れているあたりも、大人向けにアレンジされていたところです。
第一話の冒頭、人間と怪人の差別撤廃を国連で英語でスピーチをする葵は、さしずめ環境問題の若き旗手であるグレタ・トゥーンベリといったところでしょうか。
ヘイトスピーチや、いじめも積極的にドラマには取り入れられていました。
白石監督らしい、かなりハードな殺戮シーンも多い本シリーズは、「子供立入禁止」のレートでの配信のようですが、こういった社会問題を真正面からとらえたシナリオは、むしろ子供たちにこそ見せたいぞというのがオジサンの本音。
大人たちが社会問題を語るときには、必ず目先の利益が見え隠れするので、なかなかことの本質には触れられません。
その辺がまだ垢に塗れていない子供たちに、ビジュアルで突きつけて考えさせるのも、こういうドラマの役目であるような気がします。

如何に「仮面ライダー」であろうとも、これだけ刺激的で、アダルトなドラマを、親子が一家団欒で楽しむというのは、ちょっと難しそうです。
しかし、どちらの世代も、それぞれの時間に、それぞれのデバイスで鑑賞できるという時代になりました。
動画鑑賞は、今や個人で楽しむ時代。
幸い我が家は独居老人が、好きなものを堂々と50インチ大型液晶テレビで、好きな時間に楽しめる(アダルトモノも)という恵まれた環境であるため、本シリーズも、自宅農作業をしながら、全10エピソードを一日かけて一気に鑑賞できた次第。
そうそう。何度となく登場した、西島秀俊の変身シーンを見ながら、一つ気がついたことがありました。
この仮面ライダーの登場で、なぜ一気に怪獣ブームが下火になり、変身ヒーローものが子供たちにとってのメインストリートに躍り出ることができたのか。
これは、まさにこの「変シーン❗️」に、その秘密があったんですな。
つまり、ゴジラやガメラでは、子供たちは、いくら好きでも、「ごっこ」が出来なかったんですね。
出来たのは、お気に入りの怪獣のソフビを買ってきて、砂場に作った砂のセットを壊して遊ぶことくらい。
自分達が、怪獣を演じるという「遊び」が出来なかったことがストレスだったということです。
けれど、人間サイズの仮面ライダーが登場して、そのストレスは一気に吹っ飛びました。
そのアクションは、「変シーン」も「ライダー・キック❗️」も、実物大ですから、思い切り体を動かして、自分達が同化出来るんですね。
これは、自分がなりきって「ごっこ」をしたい子供たちにとっては、まさに革命的な出来事でした。
あのベルトも売れてましたね。弟たちも持っていました。
これにより、大型怪獣を見切った子供たちは、一気に等身大変身ヒーローたちに、お熱を上げ出します。
「帰って来たウルトラマン」「シルバー仮面」「ミラーマン」といった第二次怪獣ブームは、仮面ライダーの登場で一気に収束して、子供たちの熱気は、変身ヒーロー・ブームへ。
そして、「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」の登場で、やがて巨大メカ・ブームへとシフトしていくわけです。

庵野秀明監督が、来年公開に向けて「シン仮面ライダー」を制作中とのことですが、これも是非来年の暮れには、Amazonプライムでみられることを期待しています。
そして、もしも出来ることなら、ちょっとロートルになった60代70代の僕ら世代のクリエイターたちにも頑張ってもらって、「シン鉄人28号」や「シンエイトマン」を見せてくださいませんか。
いいですよ。どんなものになろうとも、責任持って付き合いますよ。


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