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特別になりたい高坂麗奈に引き寄せられる黄前久美子「響け!ユーフォニアム」の魅力を独自解釈で語りつくす。

どうも、すけこうのです。アニメしか見る物がない惨めなオタクです。
23年も半年が経過し既に8月終盤。日中36℃越えが当たり前の暑さには適いませんが、学生時代(中学~高校)はアウトドア系の部活に全てを捧げていたのである程度の暑さには耐性がついています。

しかし、目頭が熱くなることへの耐性は全くないので、久しぶりに見た「響け!ユーフォニアム」は軽く脱水症状起こしましたね。

そんな訳で今回は
特別になりたい高坂麗奈、引っ込み思案で常に周囲を俯瞰していた大前久美子。この2人を主軸にこの作品の魅力を語りつくそうと思います。
動画で見たい方はコチラから↓

特別になりたい高坂麗奈に引き寄せられた黄前久美子。京アニ作品「響け!ユーフォニアム」を独自解釈で語りつくす批評(感想)&解説(考察) https://youtu.be/5NwGHqbgT3o
特別になりたい高坂麗奈に引き寄せられた黄前久美子。京アニ作品「響け!ユーフォニアム」を独自解釈で語りつくす批評(感想)&解説(考察)
https://youtu.be/5NwGHqbgT3o

本気で全国いけると思ってたの?

この物語は第1話(原点)を深掘りしなければ話にならないので重点的に語ります。
第1話はコンクールの結果発表から始まりましたね。
大前久美子の視点では金賞を授賞したことへの感動が淡泊寄りで、部員それぞれに温度差はあるのだとその時点では割り切れましたが、あくまで黄前久美子の視点というのが肝ですね。

「全国へ行く」
そんな壮大な目標には届かずとも結果としては、周囲からは賞賛されるであろう金賞。適当に部活を取り組むよりも、叶えられるかどうか分からない大きな目標に向かって努力し続けられた姿勢はかなり共感出来ましたが、表面上だけの決意表明ではなく心の底から高みを目指す人には共感を得られないのも当然かと。

「ほんとに全国行けると思ったの?」

全国に行けなかったとしても芽生えてしまう達成感。
その隣に座りこんで泣いていた高坂麗奈も自分と同じような感覚なのだと思い込み「良かったね」と声をかける久美子もまた罪な人です

私も部活を引退するまではインハイ出場に向けて必死に努力してきましたが、部活へのモチベーションを高く保つ為に壮大な目標を掲げていただけで結果が報われなくても「仕方ない」と割り切った過去があるので、改めて部活への本気度が高坂麗奈の様に高くないことが分かりますし、死ぬほど悔しそうな高坂麗奈の感情を理解出来ない当時の久美子に共感出来たのでしょう。

久美子視点:高坂麗奈と同じ気持ちと勘違い
麗奈視点:死ぬ程、悔しい



才能や練習量は個人によって違いますが、同じ目標に向かって努力していた筈なのに内心では「本気で全国いける」と思う人たちがどれ程いるのか痛い所を突いてくる所にこの作品の本気度が見えてきます。
全員が一丸となって「全国」を目指す難しさを第1話の冒頭で表現している訳ですから、銅賞止まりの弱小吹奏楽部が全国を目指すドラマを成立させるのって滅茶苦茶難しいと思います。

第1話では黄前久美子が北宇治吹奏楽部に入部するまでの過程と人となりが沢山描かれていましたね。
人間関係をリセットしたくて北宇治に進学した矢先、校門前で演奏する北宇治吹奏楽部の演奏に絶句する訳ですが、少し期待させておきながらメロディーと共に絶句した久美子を表現する音ハメ演出や吹奏楽経験者と無経験者が向ける視線の違いが良くわかりますね。因みに自分も何が下手なのか正直わかりませんでしたが、全話見終えた上で第1話見返すとそりゃもう下手くそでしたね笑

久美子が北宇治を選んだ理由は人間関係をリセットしたかっただけではなく、制服がセーラー服と言う些細な理由もありましたが、これも実は重要だったりします。鏡に映る制服を着た自分を見て、胸の小ささを嘆いたりスカートの丈を短くしたりと高校に入学してから無意識に変化を求め、背伸びをしている様にも思えます。髪をポニーテールに結び姉から気合入り過ぎとヤジを飛ばれたりもしましたが、久美子がポニーテールにしている時は真剣に取り組む時だけなんですよね。
※冒頭のシーン(中学時代)もポニーテールだったので、彼女なりに吹奏楽を真剣に取り組んでいた証

セーラー服を求めスカート丈を短くする
高校生になれば胸が大きくなる迷信
↑上部だけの変化
ポニテ=真剣に向き合いたい
昔から変わらない肺活量

しかし、新しい学校生活に花咲かせようと無意識に変化を求め、背伸びをしていた久美子が北宇治での高校生活を真剣に変えようと思っていた様には思えない。スカート丈が短い生徒が指導された直後に自分のスカート丈をバレない様に直している時点で背伸びすることを諦めていると解釈出来ます。他にも、高坂麗奈の存在や中学時代に頑張って来た吹奏楽部への未練が綺麗に消化しきれてないことを匂わせる等、人間関係や身なりを変えてまで変革を求めてないし、表面上は浅い所で終わってます
中学時代の楽譜を見ている時はポニーテールですが、翌日は髪型を戻し吹奏楽初心者の加藤葉月が必死にマウスピースを扱ってる姿を見て初心を思い出し、再び吹奏楽に向き合う姿勢を見せています。

ご存知の通り、久美子が再びポニーテールに戻すのはコンクール本番なので第1話は久美子の浅ましい考えが上手く表現されていることが分かりますね。

上部だけの変化で高校生活や人間関係を一新したい気持ちを中途半端に描きつつ、黄前久美子に残っているのは楽譜と肺活量。この肺活量については、加藤葉月との絡みや桜吹雪のシーンが該当しているので、変化を求めた彼女の唯一変わらなかった要素です
北宇治吹奏楽部に入部した過程が丁寧に描かれていますが、この段階では麗奈との一件を引きずっているだけに過ぎず、本気で全国を目指そうとはしていません。
中学時代の久美子と同様、当初の北宇治吹奏楽部の「全国大会出場」はスローガンに過ぎず意識が低いことには変わらず、上辺だけの変化を辞めたとはいえ、根本を変えるのが難しいことは誰もが分かる事でしょう。

なんですか、これ

そんな北宇治吹奏楽部の顧問として現れたのが粘着イケメン悪魔こと滝先生です。滝先生の登場により作品の雰囲気は徐々にピリつき、回を重ねるごとに一切妥協を許さない滝先生のスパルタ指導が本格的になるので視聴者視点でも緊張感を覚えましたね。

丁寧な言葉遣いで正論を吐き続ける滝先生に対してヘイトを向ける癖に実力不足を認めない部員をまとめる3年生(主にパートリーダー)は頭を抱え、音を合わせる為の練習ではなく抗議を行う為の口述を作り上げる等、滝先生の意図をガン無視しているんですよね。過去の出来事も相まって部長の小笠原は部全体の空気を良い方向へ動かすために頑張っていますが、それは現状維持なだけで効果は今ひとつ。真面目な人間がやる気のない人間に合わせるのもある意味、部が同じ方向を向いているのと変わりないかもしれませんね。

1年生部員である葉月や緑輝が愚痴を零しながらも、内心を隠し続ける久美子とは対照的に高坂麗奈はトランペットで内心を表現します

ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」第2楽章
まだ何もない新しい世界から故郷に贈る交響曲

高坂麗奈のトランペット(ソロ)に惹かれるのは何故か。第3話の段階で彼女が何故、全国を目指していたのか認知することは出来ませんが彼女の主義主張がこのトランペットで表現されていたのは間違いありません。北宇治吹奏楽部への落胆と鬱憤を晴らしたい麗奈の感情表現は彼女自身が持ち合わせるセンスによって特別さを演出されており、トランペットによる麗奈の意思表示を聴いたことで、久美子の冷めた感情は浄化され結果的には部活も良い方向に進んでいるので、高坂麗奈のトランペットが齎す特別さは周囲を変える程の影響力があることをこの第3話で既に提示しているんですよね。先ほど、黄前久美子が高坂麗奈との一件を引きずっていると言いましたが、このソロ演奏から高坂麗奈に抱くネガティブな感情はポジティブなものへと変わるので引きずるのではなく、高坂麗奈に引き寄せられる関係性が第3話から描かれ始めます。

話は戻りますが滝先生って本当に妥協を許しませんよね。クオリティーの低い合奏に対しては「何ですか、これ」と言い放ち駄目な所を具体的に説明するだけでなく
「皆さん本当にパート練習やってたんですか?」
みたいに嫌味ったらしい言葉を混ぜながら図星突かれたら黙り込むしかないじゃないですか。
基礎練さえまともに出来ず泣き始める生徒にも容赦なく、誰も止める事が出来ない激詰めタイムに「吹奏楽は楽しくやるものです」なんて言うお気楽主義は通りません。しかし、滝先生の厳しさから「全国」への本気度は見えてきますし、部員達は「全国」を目指すよりも先に「滝先生を見返してやる」気持ちで一致団結してるのも段階踏んでて良いですね。
滝先生は自分にヘイトを集中させる事で部員が同じ目標に向かって努力することの大切さに気付いて欲しかったのでしょう。

意外にも滝先生の基礎練習が久美子の成長にも繋がったりします。
大きく息を吸って、その分息を長く強く吐く腹式呼吸の基礎練習がありましたが、その際に滝先生が掛けた言葉

「窓の外にあるあの遠い雲を動かす
つもりで吹いてください」

既に腹式呼吸が出来る久美子が滝先生からその様に直接指導された訳でもありませんが、既に腹式呼吸が出来るからこそ違う所でこの台詞が効いてくるんですよね。高坂麗奈との遠い距離感、同じパートの夏紀先輩等、人間関係で悩む久美子が三者面談中、窓を見つめ動いている遠い雲に目掛けて息を吹きます。
比喩表現とは言え、腹式呼吸で遠い雲を「動かそうとする」その気持ちが大事風が吹かない限り、動かない雲は久美子の葛藤そのもの。
雲目掛けて息を吹き込むのはある意味、久美子の決意表明であり、無意識ながら変化と成長を求めていた久美子が高坂麗奈に歩み寄り、夏紀先輩を動かした事にも繋がる。

↑夏紀先輩に歩み寄る久美子


そして、上部だけの変化よりも価値のあるこの小さな行動が積み重なることで久美子は高坂麗奈をより意識し始めます。

髪をかき上げて一言
「黄前さんらしいね」

黄前久美子は高坂麗奈を知らないけれど、高坂麗奈は黄前久美子の本性を既に見抜いているので、久美子の失言から真意を読み取るだけではなく、口下手ながら目の前で一生懸命に話す久美子が嘘偽りなく本心で歩み寄っている事さえも理解している様に思いましたね。モノローグで話さなかった事さえも、いつもの失言よりも勢い余ってるのでかなり印象的。高坂麗奈も黄前久美子の気持ちを受け入れた意思表示として、自分の前髪を掻き分けて「黄前さんらしいね」と笑顔で返すのも久美子視点では高坂麗奈の真意を読み取れてない様に映るのも非常に良い。

ここ来たら音出し禁止って言われたでしょ⁉

滝先生が北宇治吹奏楽部の意識を一変させたのは言うまでもありませんが、新しい北宇治吹奏楽部の実力は未だ誰も知りません。
練習時間の延長を提案する生徒まで現れる程、今の北宇治はやる気に満ち溢れていますが、本番のサンフェスでは強豪校に板挟みにされ、霞んで何も残せない結果に終わることを予感し始め、立華高校のフニクリ・フニクラが北宇治の緊張感を高める中、高坂麗奈のトランペットが鳴り響きます。

この演出、滅茶苦茶凄いんですよね。
後に明かされる高坂麗奈の理想でもある
「特別な存在になりたい」
は全員で全国を目指すことも含まれているので、唯一人だけで叶えられる願いではありません。坂道で「新世界より」を独りで演奏していた時と同じく、己の感情をトランペットで表現することが周囲に良い影響を与え、サンフェスの場合では全体に余裕を持たせる為にトランペットで自分の特別さを表現し、焦り散らかした雰囲気を変えています。

感情を滅多に出さない高坂麗奈なりの励ましかと思いきや、本番中は誰よりも険しい顔で演奏していたので、自分自身を落ち着かせる為にトランペットを吹いたのかもしれないので意識と無意志を掛け合わせたこの演出は鳥肌が立ちますね。
よくよく考えたら、楽器選びの段階から周囲とは違う特別さは描かれてましたし、やっぱり高坂麗奈は特別ですね(何回目)

険しく映る高坂麗奈
ここでも髪をかき分ける仕草
自ら落ち着かせるためか?

・音出し禁止なのに突然音を出す高坂麗奈
・銅賞止まりで評価が低かった北宇治吹奏楽部

結果的には決められていた二つの常識を破り、最高のサンフェスを見届けることが出来ましたが、やはり選曲のセンスにも触れないと気が済みませんね。

「RYDEEN」 YELLOW MAGIC ORCHESTRA
https://youtu.be/nB5g2cUM2FQ

日本のテクノポップを最も象徴する曲の一つ
YMOの楽曲を知ってる世代って今でいうお父さん、お母さん世代が中心だと思いますし、このアニメを通じて初めてRYDEENを聴いた人も多いと思います。原曲聞いてみるとまぁ腰抜かします。
電子音で構成された楽曲を吹奏楽(行進曲)に置き換えるっていう発想がよく思い浮かんだなと。新しい北宇治吹奏楽部を焼き付けさせる為に一度聴いたら忘れられないRYDEENを起用するのは解釈一致過ぎる

雲を動かす=変化・成長

北宇治吹奏楽部の実力、久美子が求めていた人間関係の変化が本格的に描かれた第5話の最後は静止中のわたぐも(新しい課題や問題)を背景に達成感を得る久美子を映し
「次はこれだけの雲を動かさなきゃいけない」
=「次の曲が始まるのです」

と言った次回から始まるオーディションや人間関係等の久美子に与えられる試練がメタファー化さているのでサンフェスはあくまで通過点。
バチバチなのはここからです。

だから私はトランペットをやってる…特別になるために

何回も言っている通り、黄前久美子は高坂麗奈に引き寄せられていますが、久美子自身がそれを自覚したのは第8話です。
あがた祭り当日、ラフな私服姿の久美子とは違い、白いワンピースを身に纏う高坂麗奈と共に楽器を抱えながら大吉山の展望台を目指す2人だけの空間。既に久美子の本性を見抜いている高坂麗奈は「愛の告白」も兼ねて、自分の本性と理想を打ち明けています。

「久美子ならわかってくれると思って」

「誰かと同じで安心するなんて馬鹿げてる」

「当たり前に出来上がってる流れに抵抗したい」

この台詞とセットで祭りで賑わう街を誰もいない展望台(2人だけの空間)から見下ろすことで、有象無象が作り出した常識に逆行したい高坂麗奈の思想が言葉だけではなく、実際に映像として描かれてるから説得力が違うんですよね。
幼馴染の秀一が葉月から告白を受けたり、同じ吹奏楽部の先輩や同級生達が祭りで楽しむ光景が「学生時代の夏休み」の定番として描かれるから、象無象では思いつかないであろう本来の日常から離れた2人だけの特別な空間が風刺を交えた対比としても映る。
同じ場所で同じ景色を見た2人。
久美子は高坂麗奈の様に特別になりたい気持ちが芽生え始め久美子と今よりも深い関係性を築きたい高坂麗奈久美子の唇を目掛けて指先でなぞっています

最後は互いの気持ちを受け入れ、合奏を始めた2人の関係性を「百合」と表現しがちですが、それでは浅く聞こえかねない。2人は一心同体であり、久美子が高坂麗奈に引き寄せられた理由も直感や感性任せなものだけでなく、言葉で言い表せられる理屈にも変化していくので、この第8話で描かれた特別な風景で交わされた黄前久美子と高坂麗奈の契約は後の物語に大きく影響してくる。

だってこれは、愛の告白だから

「音楽と言うのは良いですね。嘘をつけない。良い音は良いと言わざるを得ない」
松本先生の言う通り、忖度抜きのオーディションにおいて良いか悪いかは音のみで決まります。
高坂麗奈が香織先輩を差し置いてソロパートに選ばれたのは高坂麗奈が1番上手かったから。
内心では高坂麗奈の実力を認めている部員も多数いた事でしょう。
2年生は香織先輩を始めとする3年生の苦労を知っており、何としてでも中世古先輩がソロを吹いて欲しいと願うのも気持ちも理解できますが、実力以外の要素から粗探しを始める一部の部員達がより滑稽に映っていますね。
ソロパートが発表された時、再オーディションを改めてやると決まった時、高坂麗奈は自分が選ばれて当然とばかり動揺を顔に出さないんですよね。
香織先輩は優しいので後輩を潰さない為にも表情には出しませんでしたが、目元は震えていましたね。実力と感情をトランペットに吹き込める麗奈だからこそ、表向きでは隠し続ける所が流石です。

隠しきれてない動揺


香織先輩への支持を表明するのは誰でも出来ますが、高坂麗奈を支持出来るほど肝が据わった部員は久美子を除けば1人もいないので麗奈はかなり狭い思いをしたともいます。

麗奈 「裏切らない?」
久美子「もしも裏切ったら殺しても良い」
麗奈「本気で殺すよ」
久美子「麗奈ならしかねない、それが分かった上で言ってる。
だってそれは愛の告白だから」

ここでの2人のやり取り...最早、心中みたいなもんですよね。
高坂麗奈は久美子が自分から逃げないかを確かめ黄前久美子は高坂麗奈が自分自身に課せられた試練から逃げないかを確かめ、詰められても後退りしない2人の情の熱さから来る問答は愛の告白相応の重さ。
瞳を見つめられたら一切逸さずに見つめ合い、顔に手を当てられたら、その手を優しく包み返す感受性豊かな演出。

↑愛の告白宣言後のカット
足(根本)からブレてない2人の真意を強調

特別になりたい高坂麗奈のトランペットは香織先輩の様に楽譜通り綺麗に吹く上手さではなく、生まれ持ったセンスを更に磨いた事で感情的に演奏する事が出来る。再オーディション中の部員の反応を見れば一目瞭然、あの特別さには敵わず香織先輩に贈る拍手は情であり、滝先生も容赦ない。

「中世古さん、貴方がソロを吹きますか?」
↑自分自身の実力に納得しましたか?

「高坂さん、貴方がソロです。
中世古さんではなく、貴方がソロを吹く。良いですか?」
↑ソロパートを担う覚悟を
今よりも強く持ってください。

と遠回しに再オーディションが新しくソロパートを決め直す為のものではなく、香織先輩を綺麗に納得させて、高坂麗奈にソロパートを担う事への責任をより強く持たせるために開かれたもので、残酷ながら嘘をつく事が出来ない音楽での対比が描かれていました。

上手くなりたい

高坂麗奈の特別さが部全体に染み渡り、コンクール本番に向けて猛練習に励む北宇治吹奏楽部一同。
既に麗奈から大きく影響を受けていた久美子は
「上手くなりたい、麗奈みたいに特別になりたい」と麗奈と対等になりたい気持ちを明確に言語化し、麗奈は「じゃあ私はもっと特別になる」と更に高みを目指し久美子を引き上げる2人の関係性の見せ方も非常に良い。
久美子視点では麗奈に踏み込んで(侵されて)しまったが故に麗奈と対等(一心同体)になることを望んでいるので、吹奏楽へのマインドが高いとは言い切れなかった久美子が麗奈を通して成長を求め、練習目的でもないのに自宅で(夜中)ユーフォニアムを吹き抱え込んだ葛藤や感情を爆発させる様は麗奈を彷彿とさせますね。
しかし「上手くなりたい(特別になりたい)」と言う感情だけでは上手くなれない(特別になれない)。

常に周囲の状況を俯瞰してきた久美子が第12話では、理想と乖離している自身の演奏を冷静に分析し、朝から晩まで苦戦し続け「まだ10日ある」と余裕が出てしまう等、今までよりも主観の強いモノローグは後の「上手くなりたい」と言う魂からの叫びに繋がる。
追い込みをかける滝先生の指導に挫けることなく、練習を重ね塚本秀一の様に滝先生のさり気ない一言に救われる部員もいれば、吹くことさえも許されず、突然合奏から外された黄前久美子に残るのは「ここは田中さん1人でやってください」のみ。

冷めてると言われがちな久美子だが、実際は高坂麗奈を除いて自分以外では感情的にならことはなく、好んで人と深く干渉し合うこともないので誰かの為に泣ける様な子ではない。
では、あれだけ俯瞰できる人間が自分のことを深く見つめ直すとどうなるだろうか
答えは至って簡単でクソでか感情が生まれ暴走に走る。モノローグでは淡々と話していたのに、悔しさで一杯になった時は唯々「上手くなりたい」を連呼する程、感情と共に語彙力が崩壊。
仕舞いには「悔しくて死にそう」あの時の高坂麗奈と同じ感情になり、初めて高坂麗奈の気持ちに気付く


ここで言う「上手くなりたい」は塚本秀一とは全く違うベクトルというのも大事。
高坂麗奈の特別さに魅了されたからこそ「上手くなりたい」の言葉には「特別になりたい」と言う感情も含まれ、無意識のうちに忘れていた「ユーフォ好きだもん」を思い出すことで更に高みを目指すバネになる。

そして、私たちの曲は続くのです。

万年銅賞止まりの北宇治吹奏楽部が生まれ変わり全国大会出場を目指す過程、そして第一期時点での結末を見届け終え、特別を目指す高坂麗奈に引き寄せられる黄前久美子を主軸に話してきました。
第1期で響けが終わる訳でもなく、また新しい曲は続き、始まるので総括的な感想は言いません。
「親友」「百合」とも言える一心同体の2人が対等になるまでの過程はこれからも続き、黄前久美子がどの様に成長するかと言うのもポイントです。
特に第2期からは吹奏楽部内の人間関係や久美子の姉との蟠りが久美子の成長に大きく関わるので、第1期よりも繊細な部分が描かれます。
この繊細な要素は第1期でも伏線として撒かれているので、敢えて今回は触れない様にNoteを描いたので、次のNoteは書く事沢山ありそうですね笑

後日、Youtubeでも動画投稿するのでもし良ければ観てってください。ありがとうございました。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
画像引用元
https://tv.anime-eupho.com
https://abema.app/VRQa
https://abema.app/qfGJ
https://abema.app/qsSV
https://youtu.be/foyANBlaEng

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