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ex.男の子

男の子は5歳になりました。お母さんから離れると泣き出してしまうような子供でした。

男の子にはお友達ができました。ついに一人で靴もはけるようになりました。外で遊ぶよりもお部屋で絵を描くことが好きでした。

男の子は10歳になりました。お受験をするために勉強をしました。何のためにやっているのだろうとずっと考えていました。男の子は勉強することをやめました。

男の子は楽しくなりました。一生勉強なんてしなくていい、そう思いました。

男の子は15歳になりました。何にもないからっぽの思春期を過ごしました。誰かのせいにして八つ当たりをしたくても、そんな勇気はありませんでした。

男の子はギターを始めました。衝動に駆られるも、覇気のない日々は変わらず続いていました。

男の子は20歳になりました。男の子は何かを考えることをやめました。日々をバイトやサークルに打ち込んで余計なことを考えないようにしました。男の子は余計なことが何かも忘れてしまいました。

男の子は25歳になりました。人生こんなものか、と諦念していました。惰性で過ごす日々、目標もなく、周りと比べて憂鬱になっていました。

男の子は30歳になりました。好きな女の子には振られて、一緒に住んだ家も何もかも無くなってしまいました。昔は色々な髪型にしていましたが、今では朝起きるたびに抜けている毛に虚しくなっていました。

男の子は35歳になりました。弟の夫婦に赤ちゃんが生まれました。出産祝いをプレゼントしました。なんだか泣き出してしまいそうでした。

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