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外国人技能実習制度とは?搾取とよばれてしまうワケ

約7割の事業所が労基法に違反

2017年11月1日に施行された技能実習法。外国人技能実習制度の問題として、労働力の搾取ではないか、ということが問われています。
2018年に厚生労働省によって行われた実習実施者に対する監督指導・送検等の状況によると、労働基準関係法令違反が認められたのは、全体の事業所の約7割にも及びます(5,160/7,334事業所)。

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主な違反事項は(1)労働時間(23.3%)、(2)使用する機会に対して講ずべき措置などの安全基準(22.8%)、(3)割増賃金の支払(14.8%)の順に多くなっています。

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このように不当労働に苦しむ外国人技能実習生は多いです。

そもそも技能実習という制度とは?

技能実習の基本理念は、以下のように定められています。

①技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならない
②労働力の需給の調整の手段として行われてはならない
(OTIT 外国人技能実習機構「技能実習についての基本情報」より引用)

つまり、技能実習は、技能や技術を開発途上国地域等の経済発展のために移転する目的で創設された制度であり、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保等として使われてはならないということが理念として定められています。

技能実習制度の仕組み

技能実習制度は⑴団体監理型と⑵企業単独型に分けられます。

⑴団体監理型
事業協同組合、商工会等の非営利の管理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を実施するものです。
送出国の送出機関が監理団体と契約を結ぶ傍らで、受入企業は技能実習生の受け入れを監理団体に申し込みます。現地国で選出された労働者は、受け入れ企業と契約を結びます。その後の申請や入国許可の手続きや受入企業への指導支援などは監理団体が行います。

⑵企業単独型
日本の企業等が、海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施するものです。
送出国の海外支店等にいる労働者は日本の受入企業と雇用契約を結びます。申請や入国許可の手続きは、受け入れ企業自ら行います。

技能実習の流れ

技能実習は最長5年間行われます。
入国時の在留資格は「技能実習1号イ、ロ」になります。2か月間の座学講習を経たのちに、実習実施者と雇用関係のある実習が行われます。
2年目・3年目は「技能実習2号イ、ロ」の在留資格を持つ実習生が実習を受けることになります。送出国にニーズがあり、公的な評価制度が整備されている職種を対象に、1年目終了時に実技・学科試験の技能検定等(基礎級)に合格した場合にのみ、この在留資格へ変更または取得することが可能です。

4年目・5年目は、「技能実習3号イ、ロ」の資格を持つ実習生が受けます。この在留資格の取得には、技能実習2号移行対象職種と同一であり、所定の技能検定等(3級)の実技試験に合格し、かつ監理団体及び実習実施者が優良であることが認められている必要があります。
5年目終了時には実技試験必須の2級を受験し、帰国。その後、母国において習得した技能を発揮することが実習生に求められます。

「技能実習生=安価な労働力」ではない

技能実習生の基本理念でも述べられているように、技能実習生は安価な労働力ではありません。日本の労働基準法に則り、賃金支払いや安全面でも日本で働く労働者として平等に扱われる必要があります。しかしながら、低賃金で過重労働を強いられた結果、失踪してしまう技能実習生が出てしまうこともあります。

これは、採用のための渡航費や、監理団体への支払いといった受け入れ企業の負担する人件費がほかの労働者に比べて高くなってしまうことがあげられます。そのため、多くの受け入れ企業は最低賃金に設定したうえで技能実習を行っています。

ただでさえ低い賃金で雇用しているのにもかかわらず、全事業所の7割が労基法に違反して技能実習生を雇用しているこの現状は到底看過されていいものではありません。「母国に貢献したい」「技術を身に着けたい」という気持ちで来日した技能実習生を保護するためにも、第三者機関から受入企業や監理団体の監視の強化や、規制の強化が図られてきています。

また、技能実習生が労働力の補填の手段になってしまっていることも問題です。産経Bizの2020年3月の記事では、以下のように述べられています。

「新型コロナウイルスによる感染症の拡大を受けた入国規制などにより、中国人技能実習生が来日できない事態が相次いでいる。実習生が労働力として支える地方の製造業や農業、水産業で人手不足が深刻化。」

これは理念➁「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」というものに大きく反した状況になっているとも言えるでしょう。

スカホの目指すところ

地方の労働不足の補填の手段となっている外国人実習生制度の改善には、今一度日本国内における労働市場の在り方を見直すこと、とりわけ地方創生がカギだと感じています。私たちスカホにできることは、Uターン・Iターンの支援をはじめ、日本で働きたい外国人や地方での就職を志望する日本人と、地方企業をマッチする仕組みを作ることだと感じています。

少しでも共感いただけた方は、クラウドファンディングのご支援をお願いいたします。


参考:

外国人技能実習機構ウェブサイト https://www.otit.go.jp/

外国人労働者ドットコム(2019)「外国人労働者の給与の適正額とは?最低賃金は適用される?」https://www.gai-rou.com/all/%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E5%8A%B4%E5%83%8D%E8%80%85%E3%81%AE%E7%B5%A6%E4%B8%8E%E3%81%AE%E9%81%A9%E6%AD%A3%E9%A1%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E6%9C%80%E4%BD%8E%E8%B3%83%E9%87%91%E3%81%AF%E9%81%A9/#i-6

公益財団法人 国際人材協力機構ウェブサイト https://www.jitco.or.jp/

厚生労働省(2019)「外国人技能実習生の実習実施者に対する平成30年の監督指導、送検等の状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06106.html

産経Biz「新型コロナ直撃、技能実習生不在に地方苦悩 入国規制で人手不足」https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200320/mca2003200500003-n1.htm