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外国人労働者の受け入れのカギは「多文化共生政策」

コロナ禍でおきた「外国人差別」

今回のコロナ禍において、在留資格を持つ外国人に対する日本政府の対応が問われました。
9月25日に政府は、3か月以上にわたって日本に滞在するすべての外国人の新規入国を認める方針を打ち出しました。

コロナの感染が爆発的に拡大する中、159の国と地域の入国を原則禁止してきました。海外から帰国する邦人の入国が認められている一方で、在留資格を持つ外国人労働者や留学生の日本への再入国は認められておらず、「日本は鎖国状態にある」という表現がされていました。

渡航歴や滞在歴などではなく「国籍」で入国の可否を判断するこの日本政府の政策は、長年日本に滞在してきた外国人に対して大きな衝撃を与え、もはや「区別」の域を超えた「差別」なのでは、という議論もなされたほどです。

日本の外国人受け入れ政策

これまで日本では、外国人受け入れに関する様々な施策がとられてきました。

2006年3月、総務省が「地域における多文化共生推進プラン」を策定し、「生活者としての外国人」という観点から指針や計画を策定する自治体が増加してきました。2010年代に入ると、日系定住外国人施策に関する基本指針が策定され、外国人を支援の対象から地域づくりの担い手としてとらえる施策に移り始めます。また、地方の小規模自治体にお知恵も多文化共生の取り組みが行われてきました。2017年3月には、「多文化共生事例集」が策定され、「コミュニケーション支援」「生活支援」「多文化共生の地域づくり」「地域の活性化やグローバル化への貢献」という4本柱の政策が提起されています。

このように、外国人の受け入れが拡大する中で、今回のコロナ禍における政府の対応は多文化共生の地域づくりを進める自治体へ大きな打撃になったと言えるでしょう。もちろん、各地域に滞在していた外国人労働者・留学生の中にも、日本への再入国がかなわず、憤りを感じているいる方が多くいらっしゃると思いますし、再入国ができない彼らを待つ日本人も大勢いることでしょう。

アフターコロナの外国人受け入れ環境

“アフターコロナ”の時代に、日本における「多文化共生」の再考と外国人受け入れ環境の整備がより一層大事になることでしょう。

移民の受け入れが積極的なドイツでは、職業経験や、特定の技能・資格を持ち、ドイツ語を話すことのできる外国人は、最高6か月ドイツに滞在して職探しをすることが許可されています。
また、移住法に基づき、ドイツ語だけではなく、法秩序、政治システム、社会生活や就職について学ぶことができる統合コースという移民向けのプログラムも提供されています。

日本では外国人の受け入れ=移民の受け入れではなく、多文化共生政策も移民政策ではないというため、スタンスはドイツとは異なりますが、根本にある考え方は同じです。したがって、日本語教育の充実や、生活相談の対応、衣食住の充実したサポート体制をとることは、外国人にとって、より日本に住みやすく働きやすい環境を整えるために必須の要素といえるでしょう。

参考:

自治体国際化協会[2019] 『自治体国際化フォーラム351号 「「多文化共生のまちづくり」に向けて~外国人が増加傾向にある中、先進自治体から学ぶ~」』
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_351/04_sp.pdf

日本経済新聞「企業、人手不足解消に期待 全世界から入国制限緩和」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64263360V20C20A9EA2000/

Newsweek、西村カリン「日本政府のコロナ「鎖国」は在住外国人への露骨な差別では?」
https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2020/07/post-31.php

BSワールドウォッチング「再入国拒否 日本に戻れない外国人」
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2020/07/0710.html