小さなカフェからグローバル決済の巨星へ:Airwallexの創業ストーリー
決して平坦ではない道
今回ご紹介するのは、テンセントが支援するグローバル決済企業「Airwallex」。同社の最近の評価額は56億ドルで、フィンテック業界で注目のIPO候補の一つだ。
CNBCによれば、Airwallexの年次収益予測は現在5億ドルに到達。次の目標は10億ドルで、CEO兼共同創設者であるジャック・チャン氏は「2026年から2027年にかけてこの目標を達成できれば」と語る。
Airwallexの成長を支えるのは、英国や欧州、北米など先進市場への積極的な展開だ。特にアメリカ市場では、収益が前年同期比で300%以上増加。AIを活用したコスト削減も寄与し、2023年12月と今年1月には月次ベースで黒字を達成した。まさに破竹の勢いで成長を続けるスタートアップである。
そんな、今でこそ輝かしい実績を持つAirwallexだが、その道のりは決して平坦ではなかった。2015年の設立以来、3度の倒産危機を経験し、Stripeによる買収の危機もあった。この挑戦と波乱に満ちた物語は、同じように困難に直面している人々を励ます力がある。
一つの記事で全てを語るには足りないため、今回はAirwallexの創業ストーリーに焦点を当てる。(続編に興味がある方は「スキ」を押してほしい)
始まりは小さなカフェ
物語はAirwallex設立の1年前、2014年にさかのぼる。舞台はオーストラリア、メルボルンの小さなカフェだ。メルボルン大学の同窓生であったジャック・チャンとマックス・リーは、港湾開発地区ドックランズに「Tukk & Co」というカフェをオープン。
彼らは以前からメルボルン周辺で不動産事業を共同で手がけており、次のビジネスチャンスとしてメルボルンの豊かなカフェ文化に目をつけていた。
当時、彼らの祖国である中国では、コーヒー文化はまだ広く浸透していなかったが、西洋で教育を受けた若者たちを中心に徐々に需要が高まりつつあった。(そのヨミは正しく、その後中国ではコーヒーブランドが多く誕生する)
彼らの将来的な目標は、中国に移り、「ブルーボトル」のようなコーヒーチェーンを展開すること。そのため、まずは生活拠点であるメルボルンで、自分たちのコンセプトを試したかったのだ。
徹底した計画を立て、1店舗目でありながら、フランチャイズ化を見越した建物を設計。数十店舗、場合によっては数百店舗にまで拡張できるよう、細部まで再現可能性にこだわった。
仕入れ作業での原体験
カフェのビジネスは順調に進んでいた。Tukkではコストを抑えるため、包装材やストロー、ナプキン、その他の資材を海外のサプライヤーから調達していた。
しかし、中国のベンダーに支払いを行う際、Tukkはオーストラリアドルを人民元に換算し、その金額をベンダーの銀行口座に振り込む必要があった。このプロセスには、両国の銀行とのやり取りが必要であり、高額な外国為替 (FX) 手数料が発生するうえ、多くの手続きを経るため、取引には大幅な時間がかかっていた。
「小規模なビジネスオーナーとして、グローバルな決済における課題や、サプライ調達時に発生する高い為替手数料や銀行コストの影響をすぐに実感しました」と、Airwallexの共同創設者兼CEOであるジャック・チャンは語る。
「国境を越えて事業を展開する企業のために、より良い金融および決済ソリューションを構築し、成長を支援したいと考えました」。
この具体的な課題こそが、世界の主要拠点20カ所にオフィスを構え、年間取引高1,000億ドルを超えるフィンテックの巨人を立ち上げるきっかけとなったのである。
引用