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Twitter投稿ショートノベルまとめ① (2020/8~2020/9)
Twitterで投稿した作品のうち、いくつかピックアップしたものをまとめます。
①ばあちゃんと俺と世界
孫に毎日墓を磨く理由を聞かれた。
「そりゃ今日死ぬかもしれんからね」
「何言ってんだよ。ばあちゃんは俺が絶対死なせねえから」
嬉しいねえ。爺さん、こんな孫がいて幸せです。さあ、今日も出かけましょう。魔物に侵された街へ、武器を片手に。もう少し生に縋り付かせておくれよ。
②はじめてのデート
じっとりと汗をかいた手のひら。
夏でもないのに、セミの声が聞こえてきそうなくらい暑苦しい。汗が背中をそっとつたい、私の感覚をさらに刺激する。暑くて不快だ、汗を早く拭いたい。それは君も同じなはず。
だけど、好きな人とやっと繋いだ手を誰が離したがるの?もう少しこのまま。
③いらないお裾分け
「これよかったら、食べて」
彼は袋いっぱいの野菜をさしだす家庭菜園でとれたようだ。みずみずしくハリのある見た目。手塩にかけて育てたんだろう。
「ありがとう、あなたが育てたの?」
「いや、妻の趣味でね」
ふうん、そうなんだ。玄関を閉めて涙を流した。その妻が私ならよかったのに。
④孫の顔がひと目見たくて
ぽちゃぽちゃと、湯が音を立てた。表情だけでわかる。君にとってはお湯でさえ魅力的なおもちゃ。いいね、元気に育ってる。
「まま入らないで!」
「えー?なんで?」
「今おばあちゃんと遊んでるの!」
「え…?」
いつまで君は私が見えるのかな。抱きしめることが叶わない、我が孫よ。
⑤告白の返事は
「好きなんだ」
まっすぐ私を見つめる彼の目は潤んでいた。拳を握りしめ、唇を震わせ、汗を流し、緊張がこちらまで伝わってくる。でもあのね、だって、そんなのって。
「おい早く帰るぞー」
友人が迎えにきたらしい。慌てて彼は教室を出た。私、死んでるんだから、答えなんて出せないよ。
⑥親友の結婚式
とても素敵な結婚式だった。
ウェディングドレスに身を包んだ親友は今まで見たことがないくらい美しかった。本物のプリンセスみたいだ。幸せそうな笑顔が輝きをさらに引き立てる。
本当ならそこに立つのは私だったのに。あの人の隣に立つのは私だったのに。お前は何も知らずに私に手を振った。
⑦シャンプー・ステップ
コロコロと口の中で飴玉を転がす。さっきもらった大きな飴玉。いつもの帰り道が甘くなる。
飴玉がひとつ口に入ってるだけで、私は映画の中のヒロインになれる。軽快なステップを踏みながら坂道を下る。
頭の中でボサノバを流して、切り立ての髪を風になびかせて。
今だけ私は誰よりもかわいい。
⑧恨み
嫌いな人がいる。
頭の中でいつもその人を思い浮かべては、思い出したくなかったってギュッと目を瞑る。それを1日に何度も繰り返す。
どれだけ頭を掻き毟っても、涙をたくさん流しても、出鱈目に叫んでみても、何であなたは消えてくれないの?ボタンひとつで簡単に消えたらいいのに。
⑨よるごはん
ジュワ、パチパチ、ブクブク。
油が音を立てている。時折箸でかき混ぜながら、母親が鼻歌を歌う。換気扇の音で何も聞こえないが楽しそうだ。
次第に音は止み、香ばしい醤油の匂いが香ってくる。急いで食卓テーブルに駆け寄ると、茶色い衣を纏った鶏肉がこんもり。
今夜は私の大好物だ。
⑩解禁日
ひとしきり泣いたあと、冷蔵庫の缶ビールを一気に飲んだ。アイツが残したタバコにも火をつけた。
今なら何したって誰も文句言わないでしょ。全部笑っちゃうくらい美味しい。
アイツのために辞めてたのがばっかみたい。でもなんでこんなしょっぱい味、すんのかな。
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