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短編小説集

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2,000~5,000文字程度の短編小説をまとめています。
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2021年9月の記事一覧

地球を救おうの会

※この作品はPrologueにも掲載しています。 「えー皆さんもご存知の通り、森崎高校は『地球を救おうの会』に参加している県内唯一の高校です。地球温暖化を救いたい、その一心で様々な活動をこれまでにやってまいりました。そしてこの修学旅行は、我々の大事な活動のひとつであります」 「校長先生の話ってなんでこんな長いんだろ」 「地球を救おう〜とか言って、まずあんたのハゲ救う方が先じゃない?って感じ」 「あはは、それ確かに」 うちの校長はハゲで有名だ。ずっとわざとらしいカツラを被

かわいいあの子とかわいくない私

恵梨香はモテる。だってかわいいから。顔もかわいい、中身もかわいい、ぜんぶかわいい。 ストレートの暗髪ボブで清楚なイメージを演出。すっぴん風のナチュラルメイクは男ウケ子ウケ抜群。服装は女子ウケもしやすいキレイめカジュアル。努力で「清楚でかわいい女の子」を作り続ける。これがモテるコツ。男子からも女子からも、「かわいい」って言われ続けるコツ。 「恵梨香、なんか今日良い香りする~」 親友のマリが恵梨香の首筋に顔を近づけながら問いかける。 茶色の長い髪をゆるく巻いて、キレイ目な

18歳の秘密基地

水色とピンクで可愛く彩られた小さな爪で、もこは器用に私の髪を編みこんでいく。小脇には、さっき百均で買ってきた小さな造花たち。 女子高生3人が、沈みかけた太陽を眺めながら小さなピクニックを楽しんでいた。昨日Amazonから届いた特大サイズのレジャーシート。「なんかオープンな秘密基地みたいじゃない?」と、まゆが呟いていた。 夏休み3日目とはいえ、夕方になるともう小学生の声はしない。町が見渡せるほどの丘の上にある広い公園で、ロケーションは最高だ。 まゆは、髪の毛を明るい茶色に

夢色のラブレター

「面白いんだけど、この展開がちょっと突飛過ぎるかな」 彼は原稿用紙の一部分を指して、私の方を見た。 病院の中庭のベンチに座り、四角い青空に見下ろされながら、私たちはかれこれ1時間会話している。男性にしては長い髪の毛を後ろで束ね、無精髭を生やした彼は、ここ最近毎日私の小説づくりに付き合ってくれている。 少しサイズの小さい水色の病院着と、皮が厚く乾燥した手。そんな職人の手が好きだった。 高校生の私と、25歳のお兄さん。私が父と主治医以外で、初めて心を開いた男性だ。 「なるほど

首に蛇を巻いた

※以前、投稿サイトに掲載していたものを加筆&再掲しています。 新しい人間関係を構築する時はいつも震える。もともと人付き合いもそれほどうまくないし、できれば一人で過ごしていたい。だけどそれじゃあこの先の学校生活をうまく過ごしていけないのをわかっているから、私は精一杯の笑顔で「コミュニケーション上手な女子」を演じる。 おかげでもうこんなに友達ができた。このクラスが今、入学式とは思えないような緊張感のなさを纏っているのは私のおかげであろう。 教室に入る人全てに挨拶をし、誰一人