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20世紀最後のボンボン  第三部 メンロパーク篇  第二章 奇妙な自転車泥棒

サンクスギビングが明けてすぐに自転車を買いに行った。

どう考えてもまず、交通手段の確保が必要だった。

しかし我が家では誰も運転免許を持っていなかった。

それでまず自転車でスーパーマーケットには行かないと

いけないということで、サンタクルーズ・アヴェニューを

のんびりバギーを押しながら、自転車屋まで行き、ボンボンと私用の

自転車を買い、カンクン君用のチャイルドシートをつけてもらった。

それからヘルメットも子供用のも買った。

ボンボンはそこでもすぐに自転車屋の人々と友達になり、

自分の活動のパンフレットを配って説明していた。

カンクン君ははじめは、その硬い帽子を嫌がったが、

そのうち、慣れてきた。

普通はキャッシュで買うがその時はボンボンはアメックスで買った。

そして次の日、翌年の1月から私が通うコミュニテイカレッジを見に行くこ

とになった。

といっても、自転車で行けるような距離にはなく、

まず自転車でスタンフォード・ショッピング・センターまで行き、

そこからバスで一時間半くらいかけていくところだった。

のちに車でハイウェイを使っていったら、20分くらいのところだったが

何しろ、何をやるにも初めてで、すべてに時間がかかった。

けれども私にはそのくらいのスピードのほうが助かった。


その学校はフットヒル・カレッジというところだったが、

とてつもない田舎に来てしまった印象しかなかった。

学食もとても食べられないような種類の食事しかなく、

全部が大雑把だった。けれども幸いにもカンクン君に気を取られていたの

で、細かいところに気づかずに、とにかく通ってみることにした。

そしてまた長い時間、バスに乗り、スタンフォード・ショッピング・

センターに帰るころには、日が暮れていた。

そして、バス停のすぐ近くの自転車の駐車場に鍵もつけてとめてあった、

自転車は原形をとどめていなかった。

盗まれたんだと瞬時に気づくと同時に、

それはタイヤだけ持っていかれていたので、

その大雑把な感じにひどい暴力性を感じた。

教育のかけらも感じなかった。

どうしてタイヤだけ持っていくのか。


ボンボンはすぐに警察を呼んだ。

けれども、そこはエルカミノ沿いで、近くに

危険な地域もあることから、そこの子供たちが

タイヤを取って売ったのではないかと言われ、

さらに驚いた。

そんなことをしなければならない貧しい人が

アメリカにはいるのか。

というより、近所にそんな危険な場所が

あるのかとボンボンも不安になった。

幸い、そこから自転車屋は近かったので、

電話で来てもらって事情を話すと

昨日の今日であるし、変わった客だったので、

覚えていてくれて、しかもアメックスには保険が

ついていたので、無料で新しい自転車と交換して

もらえることになった。

それはうれしかったんだけれども、

なかなかショックな出来事で、大人二人は

無口になっていた。カンクン君は無邪気で、

いつも陽気だったので、私たちがこんなことで

負けてどうすると思い、全部忘れて、目の前に飛び込んでくる

新しい出来事や物の話をしながら、家に帰った。


家の近くは本当に安全なところで、鍵を閉めなくても大丈夫

と言われているほどのところだった。

サンフランシスコでは24時間ドアマン付きの

コンドミニアムだったので、全く忘れていたが、

今度は一軒家で、勝手が違うと痛感した。

私もボンボンもアメリカに住むこと自体初めてで、

初めて受けた暴力にひどく疲れてしまってその晩は

熟睡した。


翌日、ボンボンは近所の人やサンフランシスコの

知り合いにもいろいろその話をして、

もう少し目立たないところに自転車を駐車したほうが

いいこと、それからできるだけ早く車の免許を

私がとったほうがいいことがわかってきた。

新天地での生活はこのようにすべてが手探りで、

家族全員が協力しなければとても、

うまく行くようなものではなかった。

けれども、ボンボンも私もあまり不安は感じてなかった。

それはかわいいカンクン君がいて、新しい生活を

始めていく期待のほうがはるかに大きかった

ということだったかもしれない。

続きは第三部 メンロパーク篇 第三章へ

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Suji Atherton
What an amazing choice you made! Thank you very much. Let's fly over the rainbow together!