ハルヒSS『転調変奏曲』

「今日は暑いわね……」
「だな」
「……はあ」
「なんだよ」
「ヒマねえ」
「……飽きたのか?」
「ちょっと」
「ふーん」
「キョン」
「んー?」
「そこのプリッツ取ってー」
「おらよ」ポイ
「……」
「……」
「あ、それチー」
「……」
「あがりー」
「…………うーい」
「ねーねー、なんかしゃべってよ、キョン」ポリポリ
「俺は噺家じゃないんでな」
「なーんでもいーいーからー」ボリボリボリ
「やれやれ」
「それにしても、さあ」
「マジ今日はあっついなあ」
「ね。ストーブ消しましょ、あっついあっつい」カチッ
「待て待て」
「汗かいちゃった」
「事前相談無しにガマン大会始めるなよ……」
「どうりで暑いワケだわ」
「ん?」
「ん?」
「……」
「あー……髪の毛が首に張り付いちゃってさーあ」
「うん」
「気持ち悪いったらありゃしないわ」
「大変だなぁ」
「いっそバッサリ切っちゃおかしら」
「あ。それポン」
「……この間の麻雀大会でもそうだったけどさ」
「なんだよ」
「キョンは負けてる時、鳴きが多くなるわよねー」
「うっせい」
「にょほほ」
「……ショートにすんのか?」
「嫌なの?」
「別に」
「……ふーん」
「なんで俺が、お前が髪の毛切るのをアレコレ言わにゃならんのだ」
「あっそ、切っていいんだー、ふーん」
「……」
「……」
「あっついわねー……」
「……」
「ね」
「…………やっぱダメ」
「ふふーん」ニマ
「…………来ないなあ」
「あ、それロン」
「」
「7入ってるから二倍ね」
「」
「キョンはセブンブリッジ弱い、と」
「……うっせい」
「……ねえキョン“くーん“」
「……急に何だよ」
「何か呼び方変えたら雰囲気変わるかなって」
「安直だが嫌いじゃねえな」

パタパタパタ

「……あ、失敗」
「またかー、お前そのシャッフル出来ないんだからさ」
「練習ぐらいさせなさいよ」
「ハイハイ」
「ねえねえ、“お兄ちゃん”」
「おう」
「ジュース買ってきて〜」
「よしよし、って引っかかるかよ」
「ちっ」
「……ハルちゃん」
「ひねりがないわね」
「ハルえもん」
「うーん」
「ハルハル」
「そのネタもういいから」
「我が主、麗しのハルヒ陛下」
「苦しゅうないぞよ」
「……何か違う」
「そ。……あ、これ何点?」
「……18と15で33点」
「あんがと」
「発想を変えよう」
「ん」
「Hey 【 halfi 】!」
「マジなのかボケなのかよくわかんない」
「配んぞー、ルヒィ」
「ほい、って何それ」
「お前の新しいあだ名」
「名前の下半身か……」
「下半身って言うな」
「暑いわねー」
「もう聞いたよ」
「大事なことは何度でも言うわよ」
「そうだな、大事だな」
「───こないださあ」
「はいはい」
「◯ッターマンのDVDを観たの」
「大事な話だ」
「そうでしょ」
「しかし相変わらず妙なチョイスを」
「最初は面白かったのよ。ちょっと古いけど、ギャグもまあまあ笑えたわ」
「ふむ」
「で、2話目、3話目って続けたわけなんだけど。あれ、すっごいマンネリっていうかワンパターンっていうか……基本おんなじ話がずっと続くのね」
「子供向けの時代劇みたいな」
「……で、あれ、DVD1枚に6話入ってんのよ」
「うわぁ」
「おんなじよーな話でおんなじバトルして最後は爆発して、おんなじよーな話でおんなじバトルして最後は爆発して……って終わり頃には危うくトリップしかけたわ……」
「……ヤッ◯ーマンでトリップか」
「でも」
「でも?」
「今は暑さでトリップしそう……」
「暑い、かな?」
「え、暑くない?」
「ちょっと涼しくなってきた」
「そ」
「ストーブ消したからかな」
「そ」
「なんか腹減ったな」
「あっつくてかっらーいカレー食べたい」
「夏はなあ」
「カレーよねぇ」
「カレーってそんな衝動に駆られる時あるよな」
「知ってた? 俳句では“カレー”ってば夏の季語なのよ」
「へえ知らなかった」
「あたしも知らなかったわ」
「…… お い 」
「騙されたわねキョン」
「騙されたよハルヒ」
「今日の晩御飯はチキンカレーにしよっと」
「チキンカレーは美味いな」
「うんうん」
「俺は牛の方が好きだが」
「豚もいけるのよ」
「豚はないな」
「は?」
「いやー」
「おいしいんだってば」
「はっはっは」
「いや聞きなさいよ」
「カレーは牛か鶏だろう。百歩譲ってシーフード」
「あんた一生カツカレー禁止」
「すみませんでした」
「許してつかわす」
「ありがたき幸せ」
「ヒマね」
「そうだな」
「みんな、遅いわね」
「そうだな」
「……」
「……」
「……」
「……もう帰るか」
「ダメ」
「ダメかー」
「ダメー」
「暇だなあ」
「暇ねえ」
「もう一戦やるか?」
「セブンブリッジそろそろ飽きた」
「漫画でも読むか」
「んー」
「よいしょ」
「あたしにも一冊とってよ」
「ほい」
「ん」
「……」ペラ
「……」ペラ
「……」
「……」ペラ
「……」
「……」
「……」ペラ
「……」ペラ
「……」
「……む」
「……」ペラ
「……ふぅ」
「……」
「……なぁハルヒ」
「あにー?」
「……コレの続き、そっちあるか?」
「いま、よんでるトコー」ペラ
「終わったらコッチにまわしてくれ」
「ほいほい」ペラ
「……」
「……」
「……」
「───」
「───」
「新長官と旧長官が合体したわ」ペラ
「おい」
「ネタバレー」
「監獄島に送るぞ」
「にゃふん」
「ったく。ネタバレ禁止な」
「ネタバレ禁止」
「わかったか?」
「ネタバレ禁止了解」
「大事だからな」
「大事な話ね」
「うだー」
「うだー」
「きょーん」
「んー?」
「今日の晩ご飯何がいい?」
「カレー……かなあ」
「牛? 豚? 鶏? シーフード?」
「……ポーク」
「キョンはポークカレー好きねえ」
「そうだなあ」
「いつから好きになったんだっけ」
「いつだったかなあ」
「いつかしらねえ」
「あたしもポークカレー好きぃ」
「イェーイ」パン
「イェーイ」パン 
「逆にハルヒの嫌いなものってなんだっけ」
「あたし好き嫌いないし」
「以前なんか聞いた気がする」
「何かダメって言ったっけ」
「昔さあ、何か…………思い出した、カニ鍋だ!」
「あー言った気がする」
「殻を剥くのがめんどくさいとかなんとか」
「あーあー!」
「嫌いなんだっけ?」
「味は好きよ。殻を穿るのがめんどくさいだけ」
「ふーん、逆にこれは味が嫌いってのはあるか?」
「特に無いわね……あ、カッパ巻きは食べないけど」
「ほう、どこが嫌いなんだ?」
「それは……あたしに語らせないで……」
「ほ?」
「昔、ちょっとトラウマになるような事件があってね……」
「そうか」
「ごめんね、いつか話せるようになったら話すわ」
「……ああわかった」
「……」
「……すまんな」
「いいわよ……」
「……」
「……」
「……なあハルヒw」
「何」
「……カッパ巻きで、トラウマって……何なんだよw」プルプル 
「何かしらね」ニマ
「クッソクッソwwwww」
「また騙されたわねキョン」
「また騙されたよハルヒ」
「暇なのが悪いのよ」
「暇は悪」
「小人閑居して」
「秋のナス」
「キョンに食わすな」
「食わせてくれよ」
「ナスの素揚げを」
「カレーに入れて」
「「ウマー」」
「おかわり」
「たーんとお食べなさい」
「お腹いっぱい」
「ご馳走様は?」
「ご馳走様」
「ハイ、お粗末さまでした」
「あーTVでも見るかな」
「暇してるわねえ」
「何か手伝う事あったっけ」
「ないわ」
「ないかー」
「そう言えば」
「お?」
「みくるちゃんのプロモビデオなんだけどね」
「……マジで作ってたのか、アレ」
「なにか特典つけようかなって」
「好きにすればいい」
「やったー」
「わーい」
「終わった」
「終わったのか……」
「うん」
「……そっかー」
「フィギュアなんてどうかしら」
「あれ?」
「ん」
「……誰の?」
「みくるちゃんの」
「……誰が作るんだ?」
「あたしが」
「……まあ、なんだ、頑張れ」
「ちょっと涼しくなってきたかしら」
「もう秋だからなあ」
「あれ? 夏じゃなかったっけ」
「もう暦は秋だよ」
「秋かー」
「そういえば」
「うん」
「実はもうフィギュア作ってあるのよ」
「なんと」

ゴトっ

「特徴はとらえてると思うんだけど、ちょっと大っきくなっちゃったのが玉にキズよね」
「……ハルヒよ」
「あによ」
「これはフィギュアでは無い」
「そーお?」
「……これは 土 偶 という」
「あれ、もう夜だわ」
「……熱燗で一杯やりたいなあ」
「あれ?」
「どうした?」
「なんだろ? さっきまで部室にいたような気がしてた」
「いつの話だよ」
「そうか」
「そうだ」
「そっかあ……」
「そういえば朝比奈さんのフィギュアはどうなったんだ?」
「どこ行ったっけ?」
「知らんぞ。お前覚えてるか?」
「……忘れちゃった」
「そっかー」
「……そうなんだ」
「?」
「というのは実はうっそピョーンで」
「何だ嘘か」
「実は完成してたし、持ってるし」
「おい」
「みくるちゃんフィギュア化計画……長かったわ」
「なんか趣旨が変わってないか?」
「そうだっけ」
「あれオマケか何かじゃ無かったっけ」
「そうだっけ」
「覚えてないなー。つーか持ってるのか?」
「これを見なさい! ジャジャーン!」
「おお! これは精巧な……って右手だけじゃねえか」
「ちゃんと全身揃ってるわよ」ボトボトボト
「朝比奈さんのバラバラ死体みたいだ、やめてくれ」
「これをみくるちゃんのプロモDVDに一個づつつけて販売します。もちろん中身は秘密。完成するまで買わせ続けるワケ」
「なんという外道商売」
「“封印されしミクルディア”……か」
「やめんか」
「有希、遅いわねー」
「来ている」
「あれ? 有希だ」
「長門有希」
「知ってるー」
「なら、いい」
「あれ? キョンはー?」
「知らない」
「そっかー」
「……有希ー?」
「……何」
「セブンブリッジ出来る?」
「出来る」
「やる?」
「やる」
「やったー」
「……」
「あれー?」
「私が親」
「……あれー?」
「どうもー」ガチャ
「あ、古泉くんだ」
「俺もいるぞ」
「あれ、キョンも来た」
「なんだ?」
「セブンブリッジやる?」
「お、いーねえ」
「……あれ?」
「ん?」
「どうかされましたか?」
「別に?」
「寒いなあ」
「……寒いわねえ」
「午後から雪の予報」
「どおりで寒いわけだよ」
「気合よ気合」
「気合で何とかなるもんかね」
「ふん!」カッ!
「なんだいきなり」
「なんか念じたらオーラ出せる気がした」
「ほう」
「はあああ!」ゴゴゴゴゴ 
「なんかわからんがでてる気がする」
「フン……!」ホワンホワンホワン
「ちょっと微妙な気がしてきた」
「これならどうかしら!」ドドドドド
「……JOJOっぽいドス黒い雰囲気が部室に」
「ちょっとスミマセン」
「どうした?」
「ちょっと久しぶりにバイトが入りました」
「え゛」
「まさかの展開ですね……」
「えー、サボっちゃいなさいよ古泉くん」
「じゃあサボります」
「いいのかよ!」
「いいですいいです」
「……お前のバイトも軽くなったなあ」
「何の話?」
「何でもないよ」
「うりゃあ!」シュインシュイン
「ドラゴンボールぽい感じに」
「おりゃ!」テッテッテ-テテケッレッテッテッ
「無敵マリオだ」
「親は私」
「配って配って」
「……」ピピピピピ
「有希はやーい」
「お前、プロのカジノディーラーみたいだな」
「お、なかなかいい手だわ」
「俺めっちゃクソ手だわ」
「勝負」
「負けないわよー」
「古泉お前は?」
「まあ普通ですね」
「ポン」
「有希はやーい」
「ねえねえきょーーん」
「ハイハイ何だよ」
「何気無ーい細かーい仕草に萌えるってのがあると思うのよね」
「と言うと?」
「あ、それチーです」
「みくるちゃんのクシャミ。かわいいわよね」
「わかるぜ。あの小鳥の囀りのような“クチュン”ってクシャミな」
「そうそう。有希もそういうのあると思うんだけど……」
「……長門って普段ずっとおんなじポーズで本、読んでるだろ?」
「うん、カチッとしてるわよね」
「んでごく稀に、少しづつ前のめりになってさ」
「ほほう」
「思い出したみたいに元の姿勢になって、髪をそっと掻き上げるんだよ」
「おおっそれは萌えね、萌え」
「アガリ」
「有希はやーい」
「やっぱ読んでる本が面白い時にああなるのかね」
「どうなの有希?」
「……自分ではわからない」
「あれ見ると、今日はいい事ありそうっておもったりするな」
「……そう」
「ちょっと長門さん照れてません?」
「……そうでもない」
「えへへー有希可愛いー」
「……」
「はっはっは」
「でもさー」
「ん?」
「あたしらが活動してるのって、一日も終わりかけの時間帯よね」
「……うむ」
「『今日はいい事ありそう』ってさーw」
「言われてみればそうだなw」
「ねえ有希ー」
「いないぞ」
「あれ?」
「?」
「あれー?」
「どした?」
「ま、いっか」
「?」
「古泉くんは?」
「どこ行ったアイツ?」
「謎の副団長、謎の失踪」
「謎だ」
「古泉くんの萌えポイントも謎よねえ」
「アイツの萌えポイントかあ」
「ある?」
「うーん、アイツいっつも愛想のいい顔でゲームしてるよな」
「うん」
「でもな、すっげえいい手を考えついた時にアイツ…」
「うん」
「左の眉毛がピクッてあがる」
「あっはっはー、そうなんだ古泉君」
「おやおや、自分では気づきませんでしたね」
「あれ?」
「どうしました?」
「お前いつ帰ってきた?」
「……どこからです?」
「どこから?」
「あれ?」
「?」
「まあいっか」
「古泉くんの眉毛が?」
「まあどうでもいいけど」
「いいんですか」
「まあしかし。けっこうこれは頻繁に見るな」
「あたし見た事ない。イイなー」
「まぁそれでも悪手なのが古泉クオリティなんだが」
「悲惨ね……」
「……」
「あ、眉毛上がった」
「お」
「何ですか?」
「古泉くん、いい手入ったでしょ」
「ほほうそうかそうか」
「あれ、顔に出てましたか」
「今、話してたじゃない」
「何がですか?」
「あれ?」
「ん?」
「……何だろ」
「どした?」
「みくるちゃんと有希は?」
「長門はコンピ研だし、朝比奈さんは委員会だろ?」
「あれ?」
「どうした」
「なんか今さあ…………」
「どうした?」
「いや……」
「なんだろ」
「……どうもしないんだけど、さ」
「はあ」
「で、さあ」
「どした」
「キョン」
「何だよ」
「あたしには無いの?」
「え」
「萌えポイントよ、萌えポイント」
「」
「無いの?」
「え、えーと」
「思 い 出 し て」
「えーと……ハルヒはな」
「うん」
「……この間、部室で購買のチョココロネ食ってただろ」
「うんうんオヤツ代わりにね」
「溢れそうになってるクリームをペロッて舐めたり、チュッて吸ってるハルヒな」
「」
「いやーアレはいかんな。萌えたわ」
「……」
「つーかエロかった。ははは」
「……」
「どした? ハルヒ」
「なんでも無いわ、キョンくん」
「あ、あれ? 何だか距離を感じる」
「そんな事無いですよ、キョンさん」
「おーい」
「おーい」
「あれ?」
「有希が寝てる……」
「え?!」
「嘘でしょう涼宮さん」
「ほらほら」
「長門さんがお昼寝してます……」
「か、」
「か?」
「可愛い過ぎー!」
「……珍しいな」
「有希の寝顔可愛いーー!!」
「涼宮さん、しーっ」
「あ、ごめん」
「長門さん、おきちゃいますよ」
「だってえー可愛かったんだもん」
「わかりますウフフ」
「……大丈夫か? また体調不良とか……」
「……大丈夫」
「あ、おきた」
「少し寝てしまった」
「あったかいからかしら」
「何か飲みますか? 長門さん」
「飲む」
「あったかいのがいいですか?」
(コクリ)
「はーい」
「珍しいな」
「あったかいからかしら」
「あったかいか?」
「むしろ暑いくらいまでありますね」
「そうか?」
「暑くない?」
「僕もそう思います」
「そうかなあ」
「いやいや、あっついわよ」
「ええ」
「ねえ」
「そうかなあ」
「……」
「暑いわ……」
「……暑いですね」
「あれ? みくるちゃん?」
「はいあたしです」
「キョンと喋ってたような気がしたんだけど」
「そうですか?」
「ま、いっか」
「そうですね」
「うだー」
「うだー」
「ぶはー」
「あ、7揃いました」
「え、また7の三枚」
「ハイ」
「みくるちゃん、つよすぎー」
「私は長門有希」
「あれ?」
「あたしはここですよー」
「みくるちゃんとブリッジしてたような気がしてたんだけど」
「目玉焼きバターしょうゆごはん黒胡椒付き食べたい」
「誰だ今の」
「何よキョンじゃない」
「何やってんだ、つーか今の誰だ?」
「誰かいた?」
「いたようないないような、懐かしいような懐かしくないような」
「タマーにあんた、訳わかんないわねえ」
「ハルヒほどじゃないけどな」
「やっぱり人とは違うことしなきゃね」
「何の話だよ」
「不思議よ不思議。この世の不思議はただダベってるだけじゃ見つからないのよ」
「訳のわからんルールのセブンブリッジやってるじゃないか」
「見つからないのよ」
「あっはい」
「うんうん」
「ふむ」
「何か変わったことしないとね」
「校庭に落書きしたりか?」
「そうそう」
「もうするなよ」
「へいへい」
「ホントにわかってるのかね」
「ツッパッパバルファータトトプリボリンガバジャ」
「」
「宇宙語よ宇宙語」
「あーそーですか」
「ちなみに意味は『今日のキョンはちょっとクサイ』」
「この野郎」
「暑いからね」
「暑いから仕方ない」
「ダバダバキョンノバーカタプタプ」
「今、キョンの馬ー鹿っつったよな、こら」
「んー?」
「この野郎」
「ポッペンキョンノアホーカンカン」
「……デンデンンガハルヒワカワイイナァプピリットパロ」
「な!」
「どうしたハルヒ? ただの宇宙語だぜ」
「ぐぬぬ……」
「では配る」

シャシャシャシャシヤ

「相変わらず有希のシャッフル凄いわねえ」
「プロの手品師みたいですねえ」
「手品もできる」
「ほほう」
「このカードを適当に二つに分けて」
「みくるちゃん、分けてー」
「はい」
「分けた山の上から4枚とって裏返す」
「はい…………あ」
「エースが4枚揃ってる……」
「え? えっ? 分けたのあたしなのに……どうやって?」
「秘密」
「全然わかんない……ね、ね、有希、タネ教えてー」
「秘密」
「ええー」
「手品の種は教えてはいけない」
「有希のケーチ」
「諦めろハルヒ。こうなったら長門はテコでも動かん」
「有希、もっかい! もう一回何かやって!」
「わかった」シャシャシャシャ「好きなところで『ストップ』と言って」
「ストップ!」
「上から5枚めくる」
「……ろ、ロイヤルストレートフラッシュ」
「これを山に戻す」
「?」
「『団長』の三角錐を除けると」
「あ、カード!!」
「めくってみろよ」
「え?! まさか!」
「ロイヤルストレートフラッシュだ……」
「ど、どうやって……?」
「秘密」
「ダメ、全くわかんない」
「不思議ですぅ……」
「すげえな」
「はあ……」
「ではゲーム再開」
「ま、待ちなさい! カードはあたしが配るわ」
「そう」
「何されるかわかんないもんね」
「そう」
「はよ配れ」

パタパタパタ

「お、そのシャッフルできるようになったのか」
「ふふーん」
「リフルシャッフルはカードを傷める」
「あ、そうなの?」
「曲げるからなあ」
「配るわよー」
「おう」
「……」
「……」
「……」
「ふーむ……」
「……」
「……犬派と猫派っているじゃない?」
「ああ」
「何と無く男は犬派、女は猫派が多いってイメージなんだけどどうかしら」
「俺はシャミセン好きだし、阪中だって飼ってる犬が大好きだろ。名前忘れたな」
「ルソーね。実際に飼ってる人はまた別でさ」
「そこを排除してどうする」
「有希とかさ、猫の集会所把握してたり、あの子結構猫好きだと思うのだけど」
「そうか…? あれは家の近所だってのもあるだろ」
「ところで此処に"猫耳カチューシャ"というアイテムが」
「ほほう」
「某N嬢に似合うと思うのだけど」
「素晴らしい案でございますな、団長閣下」
「有希ー?」
「あれ? いない」
「さっき、外に出られましたよ」
「そういえば教授と一緒に出てたな」
「研究室かしら」
「資料室じゃないかな」
「そっかー」
「あったかくなってきましたね」
「お花見行きたいわねー」
「いいねえ」
「どこの公園に行きます?」
「酒、仕入れないと」
「了解しました」
「あたし、呑まないからね」
「……そろそろチューハイぐらい解禁しろよ」
「やだ」
「この間、部屋で俺のビール飲んだじゃないか」
「おやおや」
「バラさないでよー」
「おやおや」
「さっきの犬と猫の話だけど、さ」
「さっき?」
「あれ?」
「ま、イイか」
「んー? なになに?」
「何でもないよー」
「で、さ」
「はいはい」
「犬は男性ぽくて、猫は女性ぽいっての感じない?」
「ふむ、何と無くわかる」
「群れたり、リーダー作ったりとか、男のイメージが」
「なるほど、猫のしなやかなイメージは女性にかぶる気がするな」
「わかってきたわね、キョン」
「わりと獰猛、肉食系、自分のやりたいことしかしない、気分屋、気がついたら行方不明……」
「何故あたしの顔を見ながら言うのかしら」ニコニコ
「さあ……」
「ふん!」カッ!
「なんです? いきなり」
「なんか念じたらオーラ出せる気がしたの」
「ははあ」
「はあああ!」ゴゴゴゴゴ 
「なんかでてる気がしますね……」
「フン……!」ホワンホワンホワン
「ちょっと微妙な気がしてきました」
「これならどうかしら!」ドドドドド
「……JOJOっぽいドス黒い雰囲気が」
「うりゃあ!」シュインシュイン
「ドラゴンボールぽい感じに」
「ちょいやさ!」テッテッテ-テテケッレッテッテッ
「無敵マリオですね」
「あれ?」
「どうかしましたか」
「なんかこんな会話した事あるような、ないような」
「そうですか?」
「ういっす」
「おや、お久しぶりです」
「あれ古泉じゃねえか」
「お、ハルヒ、俺にもコーヒーくれ」
「んもー、自分で入れなさいよ」ヨッコラセ
「フフ」
「なんだよ」
「相変わらず仲が良くて何よりです」
「ハズいからやめてくれ」
「なんか話してよーキョン」
「噺家しゃねーんでなー」
「何でもイイからー」
「うーん」
「なんかあった?」
「先日小説を読んでたらさ」
「ふんふん」
「薔薇色の高校生活、という言葉が出てきたんだよ」
「はあ」
「あの赤いバラってさあ」
「うん」
「あの赤、なんか怖いんだよな」
「怖い?」
「深みのある、黒っぽい濃ゆい赤」
「んー、バラは品種いっぱいあるしぃ」
「白バラとか黄バラとか?」
「あたしは考えたことなかったなー」
「そうか……」
「なんなんだろなあ、俺だけのトラウマかなあ」
「血の色のイメージとかですかぁ?」
「かもしれないですねー」
「市の植物園で薔薇展やってたわね」
「よく知ってるな」
「今度行ってみない?」
「ハルヒは花より団子のイメージだったが、そんなところもあるんだな」
「バラバラにするわよ」
「オチたな」
「オチたわね」
「あはは」
「そういえばさ」
「ん」
「昔さ、朝比奈さんのバラバラフィギュア作ってなかったっけ?」
「誰が?」
「お前が」
「有希じゃない?」
「長門じゃないだろ、なあ長門」
「私ではない」
「ほーら」
「有希が言うなら違うかー」
「あれ? 長門居たっけ?」
「有希ならずっと居たじゃない」
「あれ?」
「?」
「居たっけ」
「おーい」
「あれ?」
「有希が寝てる……」
「え?!」
「嘘でしょう涼宮さん」
「ほらほら」
「長門さんがお昼寝してます……」
「か、」
「か?」
「可愛い過ぎー!」
「……珍しいな」
「有希の寝顔可愛いーー!!」
「涼宮さん、しーっ」
「あ、ごめん」
「長門さん、おきちゃいますよ」
「だってえー可愛かったんだもん」
「わかりますウフフ」
「……大丈夫か? また体調不良とか……」
「……大丈夫」
「あ、おきた」
「少し寝てしまった」
「あったかいもんねー」
「そう」
「有希お茶でも飲む? 入れよっか?」
「……飲む」
「おっけ」
「大丈夫か?」
「大丈夫……」
「そっか」
「……」
「みんなも飲むー?」
「飲む」
「いただきます」
「あたしもお願いします」
「……」
「……」
「……」
「はーいお待たせー」
「……」
「おう」
「ありがとうございます」
「わあ」
「じゃ、カンパーイ」
「なんのだよw」
「なんのかしらね」
「何か」
「どうしました朝比奈さん」
「なんだか眠たくて」
「僕もですね」
「あたしもー」
「あったかいからかな?」
「どした長門?」
「少し」
「あれ?」
「ハルヒ寝たのか?」
「朝比奈さん」
「……」
「───」
「あれ?」
「長門?」
「少し眠った方がいい」
「え、おい」




「“シャッフル”する」

「え?」




「……」
「……なるほど」
「お疲れ様です」



「……」
「……」
「はぁー」
「何だよ溜息なんかついて」
「だってぇ、みんな遅いんだもん」
「もうそろそろ来るだろ」
「最近さぁ、みんな集まり悪くない? なんか遅刻が多いし……由々しき事態だって思うのよ」
「…………皆」
「皆、何?」
「遠慮してんじゃねーの?」
「遠慮って何よ?」
「なんだろうな」
「何なのよ」
「そろそろ帰るか」
「雨降りそう……」
「急ごうぜ」
「この寒さで雨まで降られたらサイアク」
「ほら、上着」
「はい、コート」
「……」
「……」

「「へへへえw」」

「寒いわね」
「そうだな」

(…………ホットケーキ食べたいな)



おしまい。

自作SS集です。楽しんでいただけたら幸いです。