見出し画像

川の流れの今むかしと町の構造(神崎)

「発酵の里」で知られる神崎(こうざき)に初めて行ってきた。神崎は利根川舟運で発展した街なのだが、行徳などとはまたちょっと違ったタイプの町割りになっていて川と町割りの関係を考えるきっかけになったので記録がてら書き残しておこうと思う。


(1)神崎について

神崎は千葉県香取郡神崎町にあり、行徳からは車で約1時間。まあドライブがてら気軽に行けるところである。

神崎あたりの一帯は、肥沃な土地だそうで穀倉地帯だったようだ。利根川沿いの神崎は水運の中継地でもあり、お酒や醤油の醸造業が盛んに行われたらしい。最近は「発酵」を前面に出した町おこしをしており、「発酵の里こうざき」と銘打った道の駅ができている。

銚子までは50km。群馬から流れてくる長い利根川を思えば、最下流の街といえるのかもしれない。

妻が食を扱う仕事をやっている関係で、神崎には行きたいお店もいろいろあるらしい。私にとっても利根川と再会できるチャンスでもあり、送迎も兼ねて行ってきた。

道の駅で買い物を終えた我々は、そこから離れた神崎の中心街を訪れた。酒蔵や和菓子屋、食堂などが建ち並ぶ商店街である。賑わっているというわけではないものの、なんとも表現しにくいが空気感がよく清々しい気分になる良い街である。さすがに古くから人が住む場所だけある。

(2)河川垂直タイプの町割り

神崎のメイン商店街の先には土手が見える。つまり、この商店街は、利根川に対して垂直方向に形成されている。

地図を使って行徳の町割りと比較してみよう。神崎の商店街は、このように利根川に対して垂直方向に伸びている。

一方、行徳のパターンはこうだ。江戸川に沿った形で旧商店街(行徳街道)が伸びている。(今では行徳街道沿いはすっかりお店が少なくなってしまったが、東西線が走る前までは旧街道沿いは賑わっていた。)


行徳に住む私は、全国どこでも、この行徳タイプの町割りだと思い込んでいた。理屈から考えても川を生活用水や移動手段として考えると、自然と行徳タイプに形作られるように思う。神崎の垂直タイプだと、川から遠くなればなるほど生活するためには不利になるし、街の発展も限定的になるように思う。
地形と関係あるのか?と思い、地形図を見たところ、ところどころ高台があるものの、利根川沿いには平地が拡がっており、これなら川に対し並行型(行徳タイプ)にしてもよさそうなものだ。不思議だと思いつつ、スーパー地形をいじっていると面白いことに気が付いた。

(3)昔の川の流れが今よりもっと湾曲していた

それにしてもスーパー地形は非常にすぐれた地図アプリである。Google Mapでも地形図の表示は可能であるが、スーパー地形はもっと微妙な高低差も表現できるのである。さらには、年代別の地図や、それらを重ね合わせることもできるのである。

スーパー地形をいろいろいじっているとあることに気が付いた。明治時代の利根川の流れは、今よりもずっとクネクネしているのである。以下は明治時代の地図と、現在の川の流れとを重ね合わせた地図である。グレーに見えるのが明治の川の流れ、薄い赤色で示したものが現在の川の流れである。これをみると、昔の川幅は、今よりずっと狭かったことがわかる。明治から昭和初期にかけての洪水対策で河川を改修したのだろう。

ここで神崎のまちに焦点を当ててみる。利根川は今よりずっと湾曲して、神崎のまちを取り囲むような流れになっていることがわかる。この地図だと垂直に町が形成されるのがすごくイメージできます。

洪水はどうなの?こういう湾曲部って対流しやすいので洪水がおきやすいんじゃないかと一瞬思いましたが、神崎には高台があるので大丈夫ですね。地形図を見ると、高台に沿ってまちが拡がっているようにも思える。高台によって守られた水に囲まれた町というわけですね。

(4)町割りについての先行研究

川に対して並行か垂直という着眼点は、自分が気付いたというわけでなく、実はそういう読み物を過去に読んだことがあったからこそ気が付いたのでした。

この論文です。全国の河川を、並行・垂直でパターンわけしてて凄いです。

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00897/2018/14-0001.pdf

(5)神崎観光

神崎きっての観光スポットははなんといっても「寺田本家」でしょう。酒蔵であり、麹を活かした品々を販売しているお店です。発酵食品を扱う業界では有名らしい。

ここで購入したお酒は木の香りがして超美味しかった。

そして、神崎神社。商店街から裏路地を入っていくと高台にのぼっていける。その先に神崎神社があります。参道は木立に囲まれ非常に清々しい気持ちになり、良い場所でした。

商店街の一角にある和菓子屋さんのご主人に、街のことを少しだけお話を伺うことができた。毎年3月にお祭りが行われるそうだ。盛大なお祭りで、町中が賑わうことでした。コロナでしばらく止まっていたが、今年から再開されるとのこと。(3月に終了)

なかなかレアなお酒の買いだしにまた訪れたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?