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バイオマス発電の方式とメリデメ整理

再生可能エネルギーの利用法の一つに、バイオマス発電というものがあります。バイオマスとは、生物由来の資源であり、木材や汚泥、家畜の糞尿や食品残渣など、多種にわたります。

最終的にはバイオマスを燃焼させて発電を行うので、CO2が出ていることは出ていますが、その由来は生物の生命活動の中で、大気中の炭素分を取り込んでできたものを燃料としているので、カーボンニュートラルである、と捉えられています。

本記事では、バイオマス発電の方式をまとめ、それぞれのメリットと課題を整理していきます。

直接燃焼方式

文字通り、バイオマスを直接燃やす方式で、燃焼によって得られる蒸気でタービンを回し、発電する方式です。基本的に、水分量の少ない木質バイオマスを用いることが多いです。

直接燃焼方式は、さらに二つの方式に細分化されます。

バイオマス混焼方式
石炭とバイオマスを同時に燃焼させる方式です。既存の石炭火力発電所の石炭燃料の一部にバイオマスを混ぜるという考え方で利用するものです。石炭は、化石燃料の中でも特にCO2発生量の多い燃料で、地球温暖化に最もそぐわない資源といえます。

既存の有力なCO2発生装置である石炭火力にバイオマスを混焼させることで、多少なりともCO2削減に貢献する設備にすることが可能です。それでも既存の石炭火力発電所は非常に大きな設備ですので、混焼によって大量のバイオマスを利用できる可能性があります。

しかし、カーボンニュートラルの実現を考える場合、石炭を使用することが前提である本方式は、いずれはフェードアウトすべき方式と考えるべきかもしれません。

その他の観点ですが、、燃料は粉砕する必要があり、粉砕方法に2種類があります。

混合粉砕方式:
石炭とともに木質バイオマスを粉砕してボイラに投入する方式です。既存の石炭火力設備をほぼそのまま利用できる点にメリットがある半面、石炭用の粉砕機を用いるため、木質バイオマスの粉砕性はよくなく、混焼率は1~3%程度にとどまると言われています。

専用粉砕方式:
木質バイオマス専用の粉砕機を導入して、粉砕することで、混合粉砕方式の課題を解決する方式です。一方で、そのための設備を追加するスペースがあることが前提であり、設備全体の改造も必要になるなど、相応のコストがかかります。

バイオマス専焼方式
木質バイオマス等の資源のみを使用した直接燃焼方式です。石炭を使用しないという点で、カーボンニュートラルに見合った方式といえます。ただし、混焼方式に比べ、発電効率が落ちるデメリットがあります。


直接燃焼方式全体の課題として、木質等のバイオマス資源は充分に乾燥させないといけないこと、大量の燃料を安定的に調達できることが、必要条件になります。特に直接燃焼方式では、一定の規模を確保しないと発電効率を高くできない側面があります。それゆえ、後者の条件はより一層切実といえます。

この調達の悪事例として、バイオマス燃料を大量輸入するスキームというのがあります。東南アジアから油を搾りとった後のパーム等を大量輸入し、これを用いるという方法です。熱帯雨林を切り拓いて大量栽培したパーム等の農作物を、重油を焚く船舶に積んで大量輸入するような、このタイプのバイオマス発電の事業スキームは、カーボンニュートラルとはかけ離れた形態といえます。

このような事業スキームでもかつてはFIT制度のおかげで、利益が出てしまう仕組みとなっていました。現在は、大規模バイオマス発電のFIT価格は大幅に切り下げられました。

熱分解ガス化方式

木質等の比較的含水率の低いバイオマスをガス化炉に投入して、熱分解させ、可燃性ガス(主に、水素、メタン、一酸化炭素等)を収集して、燃焼させる発電方式です。

高温燃焼が可能な方式のため、ガスエンジンやガスタービン、燃料電池といった方式での発電が可能です。また、比較的小規模な設備でも効率的な発電が可能な点にメリットがあります。

一方で、発電設備の他にガス化炉を必要とするため、相応の設備コストがかかります。直接燃焼方式のバイオマス混焼が既存の設備を使用できるのと比べると、コスト高は否めません。

生化学分解ガス化方式

水分量の多いバイオマス資源(家畜のし尿、食品廃棄物 等)を使用し、バクテリアによる発酵によって可燃性ガス(主にメタン)を収集し、ガスエンジンによるコジェネレーション発電で利用する方式です。コジェネによって、温水も生産し、熱利用することが望ましいです。

発酵の方式には、主に2種類があります。

湿式発酵方式
液状、スラリー状の原料を使用し発酵を進める方式です。メタン発酵の速度は、アンモニア濃度の上昇によって阻害されますが、湿式の場合、水分量の調整によって、アンモニア濃度を制御できるメリットがあります。反面、処理排水が多いというデメリットがあります。

乾式発酵方式
含水率80%程度の固形原料を発酵させる方式です。こちらの場合、湿式のようなアンモニア濃度の制御が難しいというデメリットがありますが、処理排水が少ない点はメリットです。

メタン発酵によるこの方式の発電は、発電コスト面だけみれば、最も悪いと言わざるを得ません。一方で、家畜のし尿や食品廃棄物は、常に発生し続けるもので、元々その処理にコストがかかっています。こうした廃棄物を、エネルギー資源として利用しつつ、処理を進める点にメリットを見出せるか否かが、本方式の採用の是非を決めると考えられます。

地域の課題がどこにあるのか、見極めた検討が必要といえるでしょう。


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