反コロナワクチン論は「デマ」か?

新型コロナウイルスのパンデミックが収まらない中、政府は国策としてワクチン接種を遂行しています。最近では職域接種と言う形で、勤務先でもワクチン接種の動きが活発化しているものと思います。

しかし、どうしても感じる違和感、というものが私にはあります。一方で、コロナワクチン懐疑論を探してみると、「真の狙いは人口削減政策」「マイクロチップが混入していて人を遠隔操作しようとしている」というような、いかにもな陰謀論も散見され、ワクチン懐疑論が、「反ワクチン論はデマ」という主張をむしろ助長しているようにすら思えてくる始末です。

そんな私の違和感に対し、非常に参考になる論稿を見つけたので、本記事で紹介しようと思います。

神戸大学大学院経営学研究科教授・國部克彦氏の論稿です。出典はこちらになります。

敢えて、コロナワクチン反対と唱えるのではなく、今の政府やマスコミの何がおかしいのかという点を非常にクリアにしてくれています。核心部分は、判断を他者任せにしないこと。「政府が言っているから」「テレビで報道されているから」正しいのではなく、正しい情報かどうかは自分の責任で判断する必要がある。ということと思います。

以下、私が特に重要かなと思うところを引用していきます。原文は、上のリンクをたどっていただければと思います。

文字数が結構ありますが、忙しい方は太字部分だけでも斜め読みしていただければと思います。

すべての人間が自分自身の責任を自覚して、未知のウイルスに対して真剣に考えて行動しなければならないはずなのに、実際に進行している事態は、それとは真逆の思考を停止して判断を他者に委譲し、それに従うことを疑おうとしない傾向である。しかも、判断を委譲された他者が「正しい」かどうかの根拠も十分確かめることもしないままに。これはまさに人間の倫理に関わる問題である。(2P.7L~)

ここでいう「他者」とは政府やマスコミを指しています。

リスクのないワクチンはなく、これまでに重大な被害をもたらして、訴訟に発展したり、接種が中止されたワクチンも少なくない。したがって、任意接種とはいえ、ワクチン接種を国家事業として展開し、国民全員に接種を推奨するのであれば、そのメリットとリスクについて、十分な議論とコンセンサスが必要なことには、誰も異論はないだろう。しかも、人間に本格的に接種するのは初めての治験段階のワクチンを緊急措置で承認しているのであれば、なおさらであろう。(3P.12L~)
判断を他者に委譲すること自身は善いことでも、悪いことでもない。しかし、新型コロナウイルスに対するワクチンという、人類が今まで経験したこともないような対象に対して、簡単に判断を委譲しても善いものであろうか。判断を委譲された相手(多くの場合は政府や専門家)が正しいという根拠はどこにあるのであろうか。そして、それがもし間違っていた場合の責任は、判断を委譲された他者にあるのだろうか。それとも委譲した自分自身にあるのであろうか。このような疑念が生じるのは、政府がワクチンを任意接種と言いながら、ワクチンのメリットのみを強調し、異論を封じる傾向が強いことと、本来政府を批判する役割を担うべき、新聞をはじめとするマスコミそしてSNSまでも、ワクチン接種を是とする主張で塗り固められ、異論を力づくで封じ込めようとする傾向がみられるためである。(4P.12L~)
この文書(「新型コロナウイルスについて皆様に知ってほしいこと─ワクチンに関する情報を、正確に、わかりやすくお伝えします(内閣府、厚生労働省、2021年6月)」)に示されているように、日本政府のコロナワクチン政策については、2つの重要な判断が示されている。ひとつは「摂取する本人のためだけではなく医療機関の負担を減らすために接種を推奨する」という判断であり、ふたつめは「ワクチン接種によるメリットが副反応のリスクより大きい」という判断である。しかし、その判断の根拠が十分かどうかは定かではなく、その判断の是非をめぐって国民的な議論も展開されていない。それどころか、与党も野党もワクチン接種を加速することで一致し、自治体はもちろん企業もマスコミも組織をあげて、ワクチン接種を促進すべく邁進している。(6P.25L~)
もちろんワクチン反対派は一定数存在していて、出版活動やSNSで反対を表明しているが、メジャーなメディアは一切取り上げず、推進派とは表面的に交わることのない場での活動にとどまっている。しかも、後述するようにワクチンに対する批判をすべて「デマ」として切り捨てようとする傾向が世界中で広まっている。しかし、世界に出現して、2年未満のウイルスについて、また開発されて1年程度の新しいワクチンについて、何が正しくて、何がデマであるか、簡単に判断できるのであろうか。ここで見えてくるのは、議論を拒否しようとする強い姿勢である。(6P.32L)

反対意見を封殺し、議論を拒否する態度で偏った情報を流されると、一般市民としては、正確な判断をするのがとても大変なことになると思います。

私たちは日々の生活で忙しい。そんな中で、どうやって自分の頭でしっかり判断を下すのか、日々の忙しさから敢えて距離を置き、考える時間を設けるということを心がけるのが重要なのかもしれません。

2021年6月末時点で、日本でのコロナ感染者は約80万人弱なので、人口比にして感染率は0.6%しかなく、しかも重症化率はもっと低く若年層の重症化率は極めて低いことが、分かっている。もしも、接種しなければコロナウイルスに感染する確率がかなり高く、しかも重症化率が高いのであれば、図表1のデータは有効であろうが、絶対に感染しないウイルスに対するワクチンの効果がたとえ100%であっても、誰も接種しないであろう。政府や大手のメディアがワクチンの効果を議論するときに、コロナウイルスに感染する確率やそれが重症化する確率も含めて議論されている例を筆者は見つけ出すことができなかった。少なくとも、前節で示した内閣府と厚生労働省の文書やこの忽那の説明(忽那賢志「感染症専門医が解説!分かってきたワクチンの効果と副反応」、厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」、https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0001.html)には一切言及されていない。(10P.6L)
世の中には、曖昧な根拠しかなくても判断しなければならない問題も多数ある。しかし、それなら曖昧な根拠で判断せざるを得ないことを示したうえで、判断を下すべきであろう。ところが実際には、このような曖昧な根拠を「正しい情報」として説明し、それ以外の主張を「デマ」と排除する現実が生じているのである。(11P.4L)
このようなワクチンをめぐる「正しい情報」と「デマ」の区別は、日本政府だけがやっているだけではなく、日本の主要なマスコミもこぞって、「正しい情報」(ワクチン接種に都合の良い情報)だけを流し、「デマ」(ワクチン接種に都合の悪い情報)を排除するか、なるべく流さないようにしている。一例を挙げれば、前述の厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の報告書が、マスコミではほとんど記事として取り上げられていない事実がある。ワクチン接種後356人の死亡が報告されている6月23日の部会の報告書を当日もしくは翌日に記事にした大手新聞は筆者が知る限り読売新聞オンラインだけであった。(12P.30L)

この部分は、公文書で公表された具体的な数字が出てきていて、問題点が非常に分かりやすいです。この事実を報道しないのはどう考えてもフェアとはいえません。

このような傾向は大手メディアだけでなく、SNSを運営する企業にも強く見られる。実際に、FacebookやYouTubeやTwitterを運営するGoogleなどのSNS大手は、ワクチン接種に関するデマを流しているグループを削除する方針を示しているし、実際に、6月24日に参議員会館で行われた意志や議員50名(代表、高橋徳ウィスコンシン医科大学名誉教授)による「新型コロナウイルス接種中止を求める嘆願書」に対する記者会見(←リンクあり)について大手マスコミは一切報道せず、YouTubeにアップされた動画も「YouTubeコミュニティガイドライン違反」のため削除されている。(13P.7L)

記者会見のリンクを貼っています。しかし、昨日見た記者会見動画のある動画サイトが、今日は検索で出てこない。。ここに貼ったリンクは、小林よしのり氏のnicovideoですが、これも今後削除されるかもしれません。

生命・健康を至上の価値とすることの深刻な問題について、イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンは、新型コロナウイルス発生時から世界に警告を発し続けている。アガンベンは、各国政府は、新型コロナウイルスによって「保健衛生上の恐怖を創設する」(アガンベン,2021,P.13)ことで、新しい統治装置「バイオセキュリティ」を駆動させていると主張し、「生命を失うかもしれないという恐怖を基礎として創設されうるのは暴政だけ」(同上書,P.54)と、現状を厳しく批判している。(16P.10L)
政府は自らの判断に従うように強硬に権力を行使している。しかし、その「判断」の根拠として、多くの場合「専門家」から提供される説明は、本稿でその代表的な見解の一部を見たように、極めて曖昧なものしかないのである。もっとも、発生して2年未満のウイルス、開発して1年程度のワクチンについて、明確な根拠を求めるほうが無理であって、曖昧であることはやむを得ない。問題は、その曖昧さを認めない態度にある。(17P.28L)

大事だと思う部分を引用し、その中でも特に重要と思う部分を太字にしました。國部教授は、あえて反ワクチンの態度はとっていません。しかし、公平な目で見ても、今の政府やマスコミの態度はおかしいと感じはしないでしょうか。

私が、ずっと感じてきたモヤモヤを教授は、明快に言語化してくれています。ワクチンについては、個人がそれぞれ自分の信念にもづいて判断し、選択をすることが重要だと思います。

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