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そろそろ00sジャジー・ヒップホップを見直してもいい頃かもしれない

以前Jディラとヌジャベスの話を記事に書いたら随分後になってぷちバズりしたみたいで、僕の記事のなかでは突出して「いいね」がついたものになった。

だからというわけでは決してないんだけど、数年前から自分のなかで00年代前半に流行ったジャジー・ヒップホップを見直す流れが来ていたりする。

この辺りのサウンドは00年代中盤に出てきたGoon TraxのIn Ya Mellow Toneシリーズや橋本徹のMellow Beatsシリーズの影響で一気に陳腐化してしまった印象があるけれど、実はブーム当初の頃は宇田川町のBボーイからも割と受け入れられていたんだよね。

特に当時USのメインストリームはDr.Dreやエミネムを筆頭とするギャングスタ・ラップや当時「チキチキ」と呼ばれてたバウンス・ビートが席巻してたから、今でいう「ブーンバップ」を愛するBボーイガチ勢はこっち側に流れてきてた。

ベイエリアと宇田川町から店内BGMへ

前にやってたブログなんかでも同じことを何回か書いてるんだけれど、00年代初頭~中盤に日本国内で流行ったジャジー・ヒップホップには3つの大きなラインがある。

一つ目はヌジャベスを筆頭とするハイドアウト勢。USではファイブ・ディーズなんかと距離が近く、初期はわりと西海岸アンダーグラウンドっぽいカラっとしたヒップホップを作ってたけれど、次第に独自路線の日本人受けする美メロな曲が多くなってきた。ヌジャベスの2ndアルバム以降はこの路線が特に顕著で、Bボーイよりもお洒落系大学生なんかに受けてた印象だ。

二つ目はガグルのDJ Mitsu The BeatsやGrooveman Spotを筆頭とするジャジー・スポート勢。ここはUSで言うとSa-Ra Creative Partnersなんかと結びつきが強くて、全体的にネオソウルやクロスオーバー色が強め。当時ヨーロッパで流行ってたヒップホップとテクノとジャズが混ざったクロスオーバーな音作りに近くて、Mitsu The Beatsの1stアルバムは実際にヨーロッパのジャズDJ連中からも人気が高かった。

最後が冒頭にも書いたコンピ"In Ya Mellow Tone"シリーズが有名なGoon Traxとその周辺。ヌジャベスの2nd以降のサウンドをさらに日本人向けに灰汁抜きしたスッキリした曲調で、ヴィレッジ・バンガードやタワーレコードでプッシュされてたこともあり、地方のお洒落系大学生やOLがヌジャベスからこっちに流れてきたパターンは当時それなりにいた。

ハイドアウト一派とIn Ya Mellow Toneシリーズは出自含めて個人的には少し性格が違うと思ってるんだけど、どっちも「ヒップホップだけどヤンキーっぽさがないから車デートのBGMにも合う」みたいな売り出され方で、おしゃれな音楽としてお店のBGMなんかとしてもよくかかってたのを覚えてる。

ジャジーヒップホップが死んだとき


そんなこんなで00年代中盤〜後半には、もう何番煎じだか分からない「お洒落系ヒップホップ」が雨後の筍のごとく登場してたわけだけど、当然のように良く思わない連中はいて、ブームが終わりかけの2009年には日本語ラップ界隈からダースレイダーがJazzy Hiphop Is Deadなるディス曲を出したりもしてた。同じように感じてた人の中で、当時はそれなりに話題になったのを覚えてる。

もっとも僕はライムもトラックも好みじゃなかったから、一回聴いただけだったけどね。言いたいことは分かるけれど、どうせならジャジーヒップホップ勢をあっと驚かせるような美メロネタ使いでガチンコ勝負して圧勝すれば格好いいのにって思ってた。

そういう意味ではピート・ロックも使ってたゲイリー・バートンのネタをきれいにループさせたキエるマキュウのサムガールズなんかはジャジー路線で最高にカッコよくて今も好き。なにかと名曲揃いのマキュウのなかでも、この曲はちょっと群を抜いてて、トラック作りにおいて目指すところだ。

ただ、このIn Ya Mellow ToneやMellow Beatsなんかの路線は文系ヒップホップ好き(Bボーイとは言わない)の間でその後も独自の発展を遂げ、2010年代中盤以降インターネットを中心に広がっていくことになる。

なんだか良く分からないジブリ風のイラストをバックに「作業用」なんてタグ付きでYoutubeに動画が上げられるようになったジャジー・ヒップホップは、いつしかローファイ・ヒップホップへとその名を変えながら、主流派ヒップホップとは全く異なる流れで一定層のリスナー層を掴んでいった。

個人的には琴線には触れず、聴いてないけどね。

過ぎ去りし00sジャジーヒップホップの記憶

さて、リスナー目線でみたジャジーヒップホップ〜ローファイに至る流れってのは概ね↑に書いた通りなんだけど、個人的には陳腐化前のジャジーヒップホップはわりと好きで当時よく聞いてたのを覚えてる。

特にクラウン・シティ・ロッカーズとかケロ・ワンあたりはかなりスッキリした音作りで気に入ったから、DMRのアングラ・ヒップホップのコーナーで試聴して即買いした記憶がある。

2000年代前半〜中盤あたりを中心に、あの頃好きだったジャジーヒップホップを集めてみたリンクとトラックリストを↓に貼っておくので、良かったら聴いてみて。

Bay Area Divercity Vol.1
1. Merry-Go-Round / A.Y.B.Force (P-Vine / 2005)
2. Elevator Music / Ugly Duckling (Handcut / 2004)
3. Back To The Grind Again / Bloquera (Tres / 2004)
4. It's About Time / Pase Rock (Hyde Out / 2002)
5. The Drive / Headnodic Feat. The Procussions (Tres / 2005)
6. Sidestep / Crown City Rockers (Basement / 2004)
7. The Way U Make Me Feel feat. Kim Hill / Black Eyed Peas (Interscope / 1998)
8. Keep It Alive Jazz Remix! / Kero One (Plug Label / 2004)
9. Braggin' & Boastin' feat. Little Brother / Sound Providers (Quarternote / 2004)
10. Remembering Dave (Monorisick Remix) / Substancial (Hyde Out / 2001)
11. Shallow Days / Blackalicious (Mo'wax / 1999)
12. Feed the Homeless / Starving Artists Crew (Fat Beats / 2003)
13. One Of Those Days (D-Smooth Remix) / Schoolz Of Thought (Full Blast / 2003)
14. It's Like That / De La Soul (Sanctuary / 2004)
15. Pure Thoughts / Lighthead (Day By Day / 2002)
16, Miss January feat. Talib Kweli / The Procussions (Rawkus / 2006)
17. Faithful / Common (Geffen / 2005)
18. For Da Love Of Da Game feat. Pauly Yamz, Baby Blak / DJ Jazzy Jeff (BBE / 2002)
19. Personal Ads / Time Machine (Glow-in-the-Dark / 2002)

Bay Area Divercity Vol.2
1. Sunrise (Intro)
2. Movin' Along / SP feat. Sulai (P-Vine / 2008)
3. Latitude (Side to Side)/ Five Deez (Counterflow / 2001)
4. Growth, Pt.2 / Collective Efforts (Arc The Finger / 2005)
5. Another Day / Precise Hero (P-Vine / 2007)
6. 90's / Giant Panda (Tres / 2005)
7. Up & Down / Urbs & Cutex (Hong Kong / 2001)
8. Hope (DJ Mitsu The Beats Remix) / Pete Phillly & Perquisite (P-Vine / 2005)
9. Living For The City / Roc C (Stones Throw / 2007)
10. L.A.T. (12" Mix) / Take (Buttermilk / 2004)
11. Strive / Apani B-Fly Emceee (Hydeout / 2000)
12. Take Me Back / Specifics (P-Vine / 2004)
13. Yeah Y'all feat. Roddy Rod & Kev Brown /DJ Mitsu The Beats (Jazzy Sport / 2005)
14. No Game feat. Jneiro Jarel / Breakthrough (Neosite / 2005)
15. I Believe / Q-Tip feat. D'angelo (Universal Motown / 2008)
16. It's Love feat. Noelle / DJ Tonk (Milkdipper / 2006)
17. I Only Want To You feat. Think Twice, Schubert & Manchide / laidbook (origami / 2009)
18. The Way Is The Way Is The Way / Ino Hidefumi (Innocent Record / 2008)
19. Whatever You Say (Remix II) / Little Brother (White / 2003)
20. The Blessing / P-Soup (Rec-League / 2004)

00年代当時は現行ジャジーものとATCQやピートロック、ファーサイドあたりの曲を混ぜたミックスが流行ってた気がするけれど、そういうことはしてなくて今回はシンプルに00年にリアルタイムだった曲だけを選んでる。

初期のハイドアウトやジャジースポートあたりが好きだった人なら多分好きなんじゃないかな。


そんなわけで今日は歴史の流れに埋もれがちな00sジャジーヒップホップを紹介。最近僕がMPCで作ってる自作トラックは多分この頃の曲の影響を受けてるんだと思う。

個人的にはこのあたりの音楽、なかなか良いバランス感で再評価してもいいと思ってるんだけど、紹介されるときは大抵ピアノのループが綺麗な曲なんかにフォーカスされてしまいがちだから、ジャジーヒップホップ好きで収録曲を見て馴染みがない人は是非聴いてみてもらえると嬉しい。

ジャジーヒップホップ、今聴いてもそれなりにカッコいいですよ。

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