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をい、Wikipediaよ。ちょっとこっち来い。

 世の中に100%信じてもいい情報なんて、そうあるものじゃない。この私がいま書いた「100%信じてもいい情報なんて、そうあるものじゃない」という情報は100%信じても良いが。そう考えてもらわないと私の都合が悪いので。
 メディアが多様化し発信源がいくつもある現代。しかも個人のレベルでも気軽に情報を世に発信出来るようになりマンモス情報過多となった今の時代、情報を集める時には取捨選択が求められる。その際、世の中には嘘の情報もかなり出回っているので、情報源(ソース)は消去法で選ばれる事が多い。情報を扱うのに慣れている人は大抵その消去法で情報源を選ぶ過程の最初の方で(もしくは、最初から)Wikipediaの情報は消去する。情報源としてWikipediaは信頼が置けないからだ。
 インターネットは検索により求めている情報にアクセスしやすいが故に偽の情報を意図的に流す者にとっては都合のいいところと言える。中でもWikipediaは初歩的なテキスト入力能力と環境が整ってさえいれば、誰でも簡単に記事の編集に参加することが出来る為、偽の情報を流し情報操作がしやすい仕組みになっている。そんな所が情報源として使える訳が無い。
 例えば、Wikipediaでこんな事が書かれているのを見た事がある。
「薬物乱用」の記事の「覚醒剤」のところ。

アンフェタミン、メタンフェタミンと来て、さり気なく「バファリン」

 ネタとしては、秀逸である。まず、リズムに乗ってツッコミやすいように韻が踏まれているのがいい。
「アンフェタミン、メタンフェタミン、バファリン」
「なんでやねんっ」
 このようなリズミカルで軽快な漫才のボケとツッコミの場面が頭に思い浮かぶではないか。そこには、笑いの真髄をも感じる。
 それから、ツッコミどころが少なくとも2つある。
 1つ目は、それはもう「バファリンは覚醒剤じゃないやろっ」というツッコミ。私はこれを発見した時、丁度バファリンの添付文書が手元にあったので、念の為それを見たが、やはりバファリンが覚醒剤であるなんて記述はどこにも無かった。
 2つ目は「アンフェタミン」、「メタンフェタミン」と2つ物質名で来て最後の3つ目に「なんで商品名やねん。こんなとこで売名かよ」というツッコミ。「ここで商品名を出すかね」とツッコむ事が出来る。
 お笑い好きとしては、良い評価を与える。おもろい。なかなかやるやないけ。
 しかし、情報に関してガチな人にとっては「情報源としての価値は極めて低い」という評価になってしまうだろう。
 ちなみに私がこのWikipediaの「バファリン」の記述を発見した約一年後に私がこれについてTwitterで話題にしたら、それまでずっと放置されていた「バファリン」が私のそのツイートをした約10時間後に削除され、代わりに「メチルフェニデート」に置き換わって編集されていた。

ほれ、この通り。

 これは、やはり私のツイートとの因果関係があると思っていいのかもしれない。それまで一年以上間違った情報が放置されていたのだから。
 この編集により、笑えるネタとしての価値は無くなったが、情報としては正しいと言えるものになった。「メチルフェニデート」もよく乱用される薬物で、法律の文脈では「第一種向精神薬」であり「覚醒剤取締法」という法律が定義する「覚醒剤」ではないのだが、メチルフェニデートは、よく「合法覚醒剤」などと呼ばれる。メチルフェニデートが成分となっているリタリンやコンサータの事を違法の覚醒剤と同列で語られる事も珍しくない。一般的な解釈ではメチルフェニデートも「覚醒剤」なのである。しかし、私がTwitterでこれに言及していなかったら、どのくらいの時間このWikipediaの記事の中でメチルフェニデートではなくバファリンが「覚醒剤」とされ続けていただろうか。小学生でも嘘と判断出来そうな情報ではあるが。
 「ネットde真実」という言葉は嘘も多いネットの情報を何でも正しいと鵜呑みにする人物を揶揄する時に使われるようだが、その「嘘も多いネットの情報」の代表格がWikipediaの記事である事はもう言うまでも無いだろう。Wikipediaに書いてある嘘が指摘されるのはもう見飽きた光景だ。何度も見ている。
 だからといって、本ならまともな情報が得られるかと言うと、参考文献でまんまと偽の情報を掴まされた東大出身の某ライターさんの例もあるので、そうとも言えない。情報というのは、何でも疑ってかかるものなんだとその某ライターさんの著書を読んでいて、そう思わされた。

 ね?鶴見さん。

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