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スイスワインの地② Vaud:ヴォー

スイスの中でも住んでいたエリアのため、思い入れが強いです。
各AOCについて、徐々に別記事で追記いたします。

数千年の歴史と数世紀にわたる伝統、そして壮大な湖のパノラマビューを誇るVaudは、ワインのみならず歴史・文化の魅力も詰まっています。


VAUDのスイスワイン

Vaudの名産白ブドウ品種であるChasselasは、各地のテロワール(土壌)を如実に反映するため、Vaudの繊細で豊かな土壌の多様性を反映します。

白ワイン:Chasselasより、生き生きとしてフルーティ。
赤ワイン:GameyやPinot Noirより、親しみやすい。

VAUDはレマン湖による温暖な気候と豊富な光量の恩恵を多大に受け、
安定したテロワールが確立されています。
一方で、比較的降雨量が高いため、条件的に若干不利な部分もあります。

  • 春に発生しがちな霜が抑制されること

  • 夏の気温が上がりすぎない(30度)こと ※ 温暖化で上がることも

  • 日中に太陽が湖面を照らすことで、多くの光が反射しブドウの樹がより
    太陽の恵みを浴びること

琵琶湖よりも実は小さいレマン湖。(琵琶湖:670㎢、レマン湖:580㎢)
Lake Genevaともいわれています。

Vaudで栽培されるブドウの大部分は、大規模なワイン会社ではなく、
個人や家族によって所有されています。
栽培されたブドウから、以下を経てワインが生産されます。

  • 何千もの小規模なブドウ農家が、それぞれの契約下でブドウを販売

  • 複数のブドウ農家が共同でワインを生産

  • 一つのブドウ農家が自分たちでワインを生産

  • 小規模な協同組合を形成してワインを生産

VAUDの生産地について

スイスワインの生産エリアの中で唯一白ブドウを多く生産しているVaudは
6つの地域に分けられます。

エリアを細かく区分すると、Chasselasの生産地だけで150を超えます。
シャスラの味が地域毎に違うため、”地名=Chasselasのワイン” を意味する場合があります。

VaudのAOCについて

VaudのAOC、『原産地統制呼称』は1995年から始まりました。
VAUD全体 → 6つの地域 → Lavauxの中に2つ、Grand Cruを含めた
AOCがあります。
注意しなくてはならないのは、いずれのAOCも条件を満たせば
Grand Cruを名乗れる点です。

Grand Cru グラン・クリュ
フランス語で 「Great Growth(偉大に成長したこと) 」を意味する
Grand Cruは、ワインの生産において高い評価を得ているブドウ畑を指定する地域ワインの格付けである。

また、その生産地で栽培されていても、ブドウ品種が認められていない場合はAOCを冠せません。
VaudのAOCを名乗れるブドウのリストもメモ用に添付します。

Classification et désignation des vins vaudoisより

Vaudではさらに、Grand Cruとは若干条件の異なるPremier Grand Cru表記も存在します。

Premier Grand Cru(プルミエ・グラン・クリュ)
ワインへのプルミエ・グラン・クリュの表記は、以下の条件で許可される。
・ 歴史的な評価
clos(特別なワイン畑)・シャトー・修道院・ドメーヌ・または地籍名など、歴史的な評価を受けたVaudのドメーヌで生産されている。
・ 品質の安定性
気候が厳しいヴィンテージでも、ワインの品質は高いレベルを維持される。
熟成のポテンシャル
5年ー10年以上にわたって、優れた熟成を示す。

VaudのGRAND CRUの条件

GRAND CRUの表記は以下の場合に認められます。
RÈGLEMENTsur les vins vaudois (RVV) du 27 mai 2009よりまとめました。

  • ワインの原料のブドウの90%が、特定のAOCまたは自治体で生産されていること。

  • 残り10%のブドウは、特定のAOCまたは自治体の中の、他のエリアで
    あれば使用可能。

  • 収穫時のOechsle指標が、Vaudのワイン規則第18条で定められた最低値より5°Oe高いものであること。※ CalamanとDézaley以外

  • AOC Calamin Grand Cru、AOC Dézaley Grand Cruでは、収穫されたスバ手のブドウが既定のOechsle指標を満たすこと。

  • Vintage(収穫年)を必ず記載すること。

Oechsle指標とは:
°Oe = <1ℓの果汁(20℃)の質量> ー <1ℓの水の質量(1 kg)>
例:1ℓの果汁の質量が1070gだと、Oechsle指標は70°Oe。
この質量の差は果汁中の溶解糖によるため、ブドウの熟度や糖度を示す。Oechsle指標が高いほどアルコール含有量が高くなる。

Wikipedia, ENG

各AOCのOechsle指標と、Grand CruのOechsle指標をみると、
以下のことがわかります。

  • Oechsle指標が高い方が質の高いワインが作られること

  • Chasselasは、糖度の低いブドウであること

AOCの収穫量のLIMITATIONについて

KEYSTONE/Jean-Christophe Bott

調べたところ、Vaudではその年の気候や生産量に応じて収穫量の割り当てが
変更しているようです。政治的な要素も多分に含むように思います。

2023年は以下のようでした。

  • Chasselasとその他の白ブドウ品種:1.10kg/㎡

  • Pinot Noirとその他の黒ブドウ品種:0.90kg/㎡ ※ 基本

  • Vaud北部の黒ブドウ品種:1.00kg/㎡

  • Lavaux, Dézaley, Calamin, La CôteのGAMEYとGARANOIR:1.00kg/㎡
    (0.90kgより引き上げ)

なお、2022年のLavaux, Dézaley, Calaminの白ブドウ品種の収穫量は1.15kg/㎡
でした。

それぞれのAOCの特徴

それぞれのAOCの特徴は、少しずつ別の記事でご案内できればと思います。

AOC Chablais(Vaud南東、Valaisに接する)
AOC Lavaux
(レマン湖東側沿い)
 AOC Calamin Grand Cru
 AOC Dézaley Grand Cru
AOC La Côte
(レマン湖西側沿い)
AOC Côtes de l'Orbe
(Vaudの中央)
AOC Bonvillars
(Neuchâtel湖の南西側)
AOC Vully 
(Neuchâtel湖の北東側)


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