2024/4 映画・ゲームまとめ
映画
・ウルフ・オブ・ウォール・ストリート
勢いのある映画だった。セックスとドラッグと金が濁流のようにあふれてくる。でも見終わった後には空虚感が残る。悪い意味ではなく。おそらくそう感じるように狙って作られ、そして成功している。
後から振り返っておもしろかったという感慨は無いけれど、間違いなく鮮烈な記憶として残るし、観ている時は夢中だった。スケールが大きくて煌びやかで刺激的。
ジョーダンのスピーチは本当に上手かった。人の心を否応なく動かしてしまう。
映画の時間的にはちょうど半分のところでFBIに目をつけられる。絶対に破滅が待っているはずなのに無軌道さは変わらずにもがき続けるスリルが物語を引っ張っていた。
・シェイプ・オブ・ウォーター
すごい……世俗的な現実感とファンタジーの陶酔感が混ざり合って、とてつもなく美しい。
声の出ないイライザと半魚人のラブストーリーで、ラブのパワーが強い。力強い……
イライザは親友が2人もいて、決して孤独な人間ではないんだけど、声が出せないという引け目を感じずに向き合えるのが嬉しかった。だから「彼」に惹かれたのだと思う。
セクシュアルな描写がスパーンとあからさまにあるのでうおってなったけど、しつこさは無くて製作陣の「これは観客へのサービスではない。物語上絶対必要なやつ」という意思を感じたから見れた。
ストリックランドの清掃員を思いっきり見下してるところ、それでいてイライザに性的関心を寄せるところ、暴力的なところが有害な男性性の具現化でかなり怖かった。壊死した指を自分で引きちぎるシーンがえぐい。それを間近で見せられて本当に怖かっただろうに、ゼルダが最後までイライザの味方をしてくれるのがうれしかった。
ハッピーエンドを匂わせつつ明言しないのが、余韻を作っている。
・黄龍の村
べびわるの監督である阪元裕吾が2021年に撮った作品。パリピグループに馴染んでない人たちがいるなあと思ったらそういうことか〜となる。
パリピの走馬灯がふざけてるシーンとキスしてるところと擬似フェラいじりしてるところなどの本当にしょうもない場面で構成されていて、全然可哀想じゃないのが味だ……
そしてアクションはかっこいい。打撃から関節技、投げ技にどんどん移行してくのが好き。
・さがす
ストーリーがおもしろかったな……指名手配犯を見た父が失踪したところから中盤までは予想通りに進んでいくんだけど、そこからどんどん話が転がっていく。3ヶ月前の山内→13ヶ月前の原田智〜現在へ繋げていた。
山内役の清水尋也めっちゃ良いな…………長い手足の不気味さと瞳の怖さの質感が映画全体の軸を作ってる。一番怖かったのは「中島治です。父が太宰治のファンでそこから」さりげなく追加情報を足して信憑性をあげるところ。嘘が上手い。
楓はどこで疑いを抱いたのだろう。スマホ2台持ちしてたところか、レジ奥のコースターに気がついていたのか。
「ドクター・デスの遺産」と扱ってるテーマ「安楽死の皮を被った快楽殺人」というのは共通してるのに、おもしろさが全然違うのはなんでだろうな。権力側から撮ったものと個人側から撮ったものの違い?説教臭さがなかったからかな。善悪の概念が薄くて、登場人物の思考で物語が進んでいた。
出会いそうで出会わないニアミスを繰り返すのをコントだと思っておもしろく感じちゃうだけかも。
・シャークネード
サメ映画の上澄み。とても悔しいんだけどおもしろかった……人もサメも平等に殺し殺されているから?洪水に襲われた町の様子が他のCGと比較して段違いにリアルなのは、実際のニュース映像を持ってきたりしているからだろうか。
ちゃんと人が活躍できる場面を作りつつ、常連客やマブダチはここぞという場面で死んでいくバランスが良かった。予想できるけどちょっと予想を外していくセンス。あと限られた映像素材をうまく切り貼りして切迫感を出す技術が高い。どこで得られるんだその技術は。
死んでいった常連客もマブダチも死の前にきちんとカッコいい見せ場があるのが良い。
・JUNK HEAD
ガラクタとコンクリートと奇妙な軟体生物(マリガン)の世界が面白い。ゲーム「GARAGE」っぽい世界観。
下品な話で申し訳ないんだけど、人型のマリガンが討伐された後にめりめりと大木になっていく瞬間頭の中がむちゃくちゃ気持ちよくなってやばかった。電流が走るような気持ちよさでしたね……ヘキなんだ…人間が樹になるのが…
今後のお話は特殊なモルガンの死後の姿である生命の木へ向かっていくことになるようなので楽しみ。
ストップモーションで作られている独特な質感が良かった。変なキモい生物とスチームパンクがいっぱい見たい人向け!
・キル・ユア・ダーリン
ルシアン・カー(デイン・デハーン演)の目が透みわたるようなライトブルーで、この目に見つめられたら狂ってしまうなという説得力があった。
手をナイフで一筋切り裂いて、2人で手のひらを重ね合わせるシーンの倒錯感にクラクラした。煙草と酒とドラッグで酩酊するような無軌道さによってルシアンは破滅したんだけど、アレンやウィリアム、ジャックはその経験を活かして詩人なり小説家になっている。ひどいな、と思いつつもルシアンが彼らのミューズだったのかもしれないなと思った。いろんな人の人生を狂わせつつも、本人はそんなつもりないし、自分も周りが狂うのが苦しくて狂っていってしまうし。
「私は夫に見捨てられたから回復した。だからあなたもルシアンを見捨てなさい」が心に残っている。実際、そうして少年院に入ったルシアンはその後平凡な生活を送ったらしい。
・すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ
「ふるくなっても、やくにたたなくても、すてないよ。だいじだから」
最後の演出は映画館で観るのを想定してる。壊れてしまったおもちゃ工場は映画館に生まれ変わってみんなの笑顔になっているよ、という。
すみっコたちは、まるくてもちもちしたボディがかわいいねえ。
・50 FIRST DATE(邦題:50回目のファースト・キス)
ヘンリーが水族館勤務の獣医でセイウチの生態研究をしていること、ルーシーが美術教師であることもちゃんと意味のあるプロットでおもしろかった。
ヘンリーは旅行者とのその場限りのロマンスのために話術のパターンが多い。それが1日で記憶を失ってしまうルーシーを毎日別パターンで口説くのに遺憾無く発揮されている。おもしろかったのは、ワッフルの家のドアに爪楊枝を刺すアイデアを披露するって同じことをしてもルーシーの反応が1回目は上手く行ったのに次やった時は全然ダメだったこと。ルーシーの天真爛漫さが可愛い。
エンストのふりした時に、ヘンリーが感電した演技→嘘だよ!→ルーシー「おじいちゃんが死んだ時と同じで…」→嘘だよ!のルーシーの切り返しがめっちゃ好き。記憶喪失になるし無邪気で天真爛漫だけどルーシーはかなり賢くて切り替えが早い。ヘンリーもルーシーもかわいくて大好き。
・バチカンのエクソシスト
ホラーよりはバトルアクション物みたいな味がする。キリスト教の知識が全然ないけど、「主よ、憐れみたまえ!」「神の御前に跪け!」決め台詞としてかっこいい。アスモデウスは色欲の悪魔だから、弱みとして探し出すのが過去関わりのあった女性なのかな。
アモルト・ガブリエーレ神父を否定しようとした枢機卿が見たキリストが血を流す奇蹟はどういう意味なんだろう。あの人も悪魔の影響を受けていたのか、信じていなかった悪魔の存在を感じてショックを受けて長期休暇に入ったのか。
トマースとのバディが結成されるとは思ってなくて結構びっくりした。作中でものすごく成長する。
・華麗なるギャッツビー
ジェイ・ギャッツビーが可哀想な気もするけれど、でも綺麗な終わり方だ。デイジーと2人で生活できることになっても、多分恋に夢みる彼とデイジーでは早晩うまくいかなくなっていたと思うので。
ギャッツビーは恋に殉じた。う〜赤貧から成り上がった彼が上流階級のトムに貶されて侮辱されて、それに対して怒ったら「やっぱりお育ちが悪い人間は怖いわ(言ってません、彼女は怯えて泣いてただけ)」ってデイジーに見放されるのが辛いよ。トムだって怒鳴ってたじゃん、何が違うんだよ。デイジー、なんだあの女〜〜まじで「美しくてバカな女」じゃん……アメリカでも1920年代の女の子の育て方の理想って「美しくてバカな女」なのやだねえ。日本の一部ご家庭では現在においてもその方針が継続されているの嫌だねえ……
ニックがギャッツビーの「希望を見出す力」に魅了されて、ちゃんと葬式まで友達として共にいてくれたのが救いだ。
う〜ギャッツビーが全部醜聞をひっかぶってトムとデイジーが血統と金の力で逃げ切ったのが胸糞だ〜〜でもギャッツビーが白スーツで決めてデイジーを緊張しながら待ってたシーンとプールで背後から撃たれて死ぬところと葬式で花に埋もれているところはめちゃくちゃ好きです。
・MAMA
ギレルモ・デル・トロ監督が撮った→観たい
タイトルから「母性」の話かな→ん〜微妙かも
初っ端で「あの虫」が出てくる→やばい、無理だったら途中リタイアしよう
だったのに、ものすごく引き込まれてて気づいたら観終わってた。これまで観たホラーの中で一番おもしろかったです。怪異の理、目的がはっきりしていて、恨みの感情より子への執着(愛ではない)が強いのがわかりやすかった。母性にまつわる執着の面を意識して作られてるのが良い。美化されてる作品は好きじゃないので。5年も育てたらそりゃあねえ……
その反面、リリーからママへの感情は愛だと思う。本当の無償の愛って幼子から親への方向性にしか無いと思っている。ラストもすごく納得いく結末だった。リリーは赤ちゃんの頃からの5年、ヴィクトリアは物心ついてからの5年。アナベルへの懐き方、ママへの懐き方の違い。結末に至るまでの描写がしっかりされているので納得できる。でもリリーとヴィクトリアが離れ離れになってしまったのは悲しい。
『来る』の小松菜奈みたいな感じのアナベルが子供の世話が得意じゃなくて母性というよりは人同士の関係性でヴィクトリアから信頼されていくのも良かった。
ママが2人を連れ去ってしまうところっておばさんの体で運転してると思うんだけど、そこを一切見せずとも支障はない。見せない方が良いと判断できるのが、監督の力量ですよね……勉強になるなあ
ゲーム
・かがみの特殊少年更生施設
難しいけどおもしろい!体験型のモキュメンタリーでTwitterのアカウントと公式サイトで完結する。あと、知識的な部分は何度かweb検索すれば補完可能。
検索ワードの判定がまあまあシビアで、旧字体で書いてあるのに新字体にしないとダメとか、逆に旧字体のままじゃなきゃダメとかはやや理不尽かもしれない。でも最後まで追っていくと、大きな話ではあるんだけど最終的に「ふたり」の話になるところがかなり好き。
凸凹のある人間だから無二の友情が築けたのに、まあるく整えられてしまったらもう友達ではいられない。大きな正当性に異を唱えられるのは小さな人間性というのが良かった。もう失われて取り返しのつかないところも好き。
・チキンポリス Paint it RED!
シリアスハードボイルドADVで最大の特徴は獣人+昆虫人の街が舞台ということ。手がかりとかヒントの出し方が上手いのと、「人間」が空想上の生き物なところが良い。
あとこれは邪念なんですが、解剖医のフクロウの口調が村雨先生っぽくて良かった。
「おやおやおや。猫が獲物でも捕まえてきたのかな?」
「ベラベラベラベラよく喋るな、お前らは。私に泣き言を言いに来たのか?話が終わったらとっとと出て行ってくれ。」
「げぇっ、血だらけじゃねえか。」
「数分前まで手術をしていたからな。」
↑これすごく獅子神さんと村雨先生っぽい
・Soundfall
ステージ1-1が何度やってもクリアできなかったんだけど、紹介動画の最初の方だけ見たらクリアできた。「見る」って自分にとっては大事な学習手段なんだなと改めて実感した。それでも難しいね。リズムに合わせて攻撃も回避もしないといけない。連続で回避はできないのでちゃんと相手の攻撃のタイミングをはからないといけないのが難しい。
・テイルズ オブ アライズ
すごく良かった!テイルズやったことない人にはまずこれ勧めるぐらい。
触れた相手に激痛を与える呪いに侵された女と無痛症の男、こんなん絶対つがいだよ……
そもそもパーティが3組の男女カプ(付き合ってない)で構成されている。1組目は前述の2人、2組目はティーンの2人、3組目はアラフォーで元主従関係だった2人です。関係性の圧をかけられると嬉しくなっちゃう人に向いています。向いてないのは自分を主軸としたハーレムを作りたい人かな。
あと3Dモデルがめちゃくちゃ綺麗。シオンのビジュアルが大好きなのでイベント中もずっと見惚れていた。アルフェンは鉄仮面が半分残ってる時のビジュが一番好き。
ストーリーも最初は圧政からの解放のため5カ国を巡っていく話から、どんどんスケールアップしていって「今まで信じてきたもの」がぼろぼろ崩れていくのがすごく良かった。
テュオハリム、内省的で楽人として生きていたかったのに星霊力が強すぎるせいで領将として任命されてしまった人。常識からちょっと外れた変な人だから、階級も人種も関わりのない国を作れた。頭が良くて、弁も立つ。頼りになるのに、「私が助けてあげないと」とみんなに思わせるような隙があるのも天性の人たらしだ。好きです。
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