2024/2 映画・ゲームまとめ


映画
・返校 言葉が消えた日

背景美術への気合いの入り方がすごい。単に怖がらせるための背景ではない。暗くて打ち棄てられているけれど、なぜか美しい。原作ゲームリスペクトの構図を効果的に使っていた。
確かに脚本は原作を意訳している部分が大きいけれど、伝えたいメッセージはブレてないと思う。映画にするにあたってより分かりやすく、作品のコアが伝わりやすいように脚色したという感じ。言論弾圧と暴力と密告が猛威をふるっていなかったら、ファン・レイシンの嫉妬や意地悪心は青春のほろ苦い一ページで終わっていたはずだ。罪悪感に囚われて死後も永遠に苦しみ続けることにはならなかったはずなのだ。きっとあの時代には同様の悲劇がそこかしこで起こっていたのだろう。「忘れない」という意志を映画を通して強く感じた。
ものすごく力の入った出来の良い映画化だと思う。
「見ないふりをすればいい」「何もなかったと思えばいい」って誘惑(罪悪感の裏返し)にファンが打ち勝って後輩くんを助けにいくのとても勇気が必要だったと思う。というか、全校生徒の前で自分のやったことを告白したのすごすぎる。それだけ張先生を失った絶望が深かったんだろうけど、すごすぎる行動力。
張先生は淡い恋心量産してるよ。爽やかなかっこよさじゃなくてまろやかに造形が整っていて、ちょっと抜けてるところもあってお茶目なところもあって、でも優しくて誠実なことは伝わってきてさ……好き……キャーキャー騒がれるんじゃなくて、静かにガチ慕われしてそう。

・NOPE

エメラルド(主人公の妹)の落ち着きのなさと話のまとまらなさが若干ストレスなんだけど、もしかしてアメリカだとこのぐらいが普通……?寡黙なOJよりもエムの方が撮影現場の人に受け入れられているような気がした。でも、なんで遊園地の馬を盗んだのかはわからなかった。
ハリウッドでも家電量販店でも、主人公たちが軽んじられている描写がある。その理由は主人公たちが「黒人だから」で、まだ啓蒙が必要なくらい人種差別が根強く残ってるんだろうなと思った。
ホラー作品のエンジンって大抵「生き残る」なんだけど、この映画は「UFOの写真を撮って大金持ちになる。そして馬を取り戻して牧場を立て直す」なのが異質だ。牧場を立て直すのが主目的なので、牧場を見捨てて逃げたりはしない。言い出しっぺはエムだけど、腹を決めたOJがその後全然ブレないのがかっこよかった。怪物の最終形態も良かったな。ヒラヒラで大きくて風をはらんでいて。

・グランド・ブダペスト・ホテル

こんなに美しくておもしろい映画があるってもっと早く知りたかった~~ぽや~っと流し見しようかと思ってたけど、冒頭から構図と色彩がバッチリ決まっていて心を掴まれた。どの瞬間をとっても印象的で美しい。名門ホテルのコンシェルジュであるグスタヴと新人ベルボーイのゼロが師と弟子から共犯になり、友人になり魂の兄弟になる。連続殺人事件も起こるし、脱獄もある!私の好きなものセットじゃん……
冒頭の墓地で横スクロールでカメラが動くシーンでベンチに黒い毛皮の帽子とコートを着た男が3人座っている。絶対これは本筋に関係ないのに絵面のおもしろさと美しさを上昇させるためだけにここに3人配置してるのが伝わってきて、期待値が上がった。期待以上だった。うれしい~~
制作陣の「美しい」「おもしろい」のセンスがことごとく自分のツボだと、なんか気持ちよくなっちゃうんだな……
「落下の王国」とタメ張るぐらい好き。こういう映画をもっと探したいんだけど、中々難しい。特定のキーワードがあるわけではないし、ストーリーからはわからないし。好みが完璧に同じ人間はこの世に存在しないし。

・ゴールデン・カムイ

幸せな実写化だった。ヒグマがちゃんと圧倒的な強者で怖く見える。これがしょぼいと一気にチープになってしまう。キャスト陣も合ってるなと思った。特に鶴見中尉が漫画からそのまま出てきた感じ。

ゲーム

・The Wake: Mourning Father, Mourning Mother

おすすめ度★★☆☆☆(SOMIが好きな人には★★★★★)
難易度★☆☆☆☆
とても内省的。暗号解読はおまけでメインは日記のテキストを読むこと。複雑な家庭環境・生育環境によって生まれる苦悩や矛盾した感情、大人になったあとも残る影響が語られる。「家族」について苦しんだことがある人は、境遇は全然違っていてもそこにある感情自体は共感できるのではないか。ゲームとしてのおもしろさとは違うかも。テキストは本当に良いので、これまでのSOMI作品が好きな人にはおすすめ。やったことがない人には「Legal Dangeon」か「未解決事件は終わらせないといけないから」を勧める。

・ファミレスを享受せよ

おすすめ度★★★★★
難易度★☆☆☆☆
すごくよかった……!静謐で不思議な、でもちょっとおかしみのある雰囲気。登場人物、全員好きだ……会話もほどよく肩の力が抜けていて、この目の前の人ともっと話したいと思った。16桁のパスを総当たりしはじめたところがかなり好き。何万年かかったんだろう……
穏やかで、みんなどこかちょっと変。みんなで円卓に座ってお話して、トゥルーエンドに行くのが好きだ……

「退屈だっていう気持ちは自分の有限性を持て余していることから感じる焦りなのかもしれない」
「こんなことになるなら最後まで読んで失望するべきだったかな……」
「物語というものは満たされた人間に用はないんです 言に及ばずってやつです」
「永遠の過去があり、永遠の未来があります。われらは遍在します」
「われらは忘れることを覚えました。それは高等な技術です」
「月は満ちに満ちているし ドリンクバーだってある ついでにガラスパンもいる。これ以上、なにを求めるっていうの?」

・TO:NORTH

おすすめ度★★★★★
難易度★☆☆☆☆
30分~1時間ぐらいの短いゲームなんだけど、そこに含まれる物語・感情量はとても濃密。北へ進むことが目的のゲームで、主人公は南を向けない。南を向くと黒い影が近づいてきて、触れると最初の場所に戻される。テキストがとてもよい。調べたらMINDHACKのシナリオの人が作っているらしい。
軽い気持ちで始めたけど、ぼろぼろに泣いた。「友達」に弱いんだよ……

・MINDHACK

おすすめ度★★★★☆
難易度★☆☆☆☆
まだアーリーアクセスなので、4章まで。悪人の脳をハックしてお花畑にするADV。2章に出てくる対象者の家具語録がおもしろい。「片腹痛い」を「右扉が軋む」って表現するの好き。主人公がだんだん破壊衝動に目覚めていっていて不穏になのでこの先どうなっていくのかがとても楽しみです。

・アクアリウムは踊らない

おすすめ度★★★☆☆
難易度★★☆☆☆
フリーホラーゲーム全盛期を思い出す。こういうすごく出来のよいやつがぽこぽこあったよなあ……作者はホラーゲーム苦手だけどIbは大好きらしい。とても伝わってくる。ストーリー、マップの作りこみもよい。しっかり怖めの一枚絵が時々あるぐらいの怖さがちょうどよい。あと、逃げる要素はあるんだけど、何度か挑戦したらクリアできるぐらいの難易度だったのがとてもありがたかった。何度も失敗していると怖くもなんともなくなっちゃうからね……テキストのパワーは弱め。でも「忘れてやらない」は良い。

・Outer Wilds

おすすめ度★★★★☆
難易度★★★★☆
22分でループする宇宙を、探査船と宇宙服で探検する。無重力での挙動も星によって重力が違うのもおもしろい。操作はそのせいで難しくなっていて、無駄死にもいっぱいするけれど新しいテキストを発見したときの喜びはひとしおだ。
完全なまぐれ当たりで一個エンディングは見れたがまだまだ宇宙の秘密、過去は深そう。
こういう手触りのゲームは初めてやった。

・Tchia

おすすめ度★★★☆☆(未クリア)
難易度★★☆☆☆(レースだけめっちゃむずい)ゲームで空を飛びたい人向け!ウクレレで鳥を呼び出して憑依すると自由に空を飛べる。そのほか鹿にも犬にも憑依できる。というか目に映る全ての動物に憑依可能なのが一番のセールスポイントだと思う。何にでもなれる。
ただそれ以外はそれほど遊びの余地は無いかも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?