RAGAZZE!〜少女たちよ!

地上波版とBS版

NHKの女性アイドル特番「RAGAZZE!〜少女たちよ!」を見た。3/28(土)に放送された1時間の地上波版と4/11(土)に放送された2時間のBS版では構成が大きく異なり、是非とも両方押さえておきたい好内容だった。

この番組について考える上で、2010年5月放送の「MUSIC JAPAN」アイドル大集合SPの存在(https://note.com/suiseinote/n/n21cee1a74436 )を無視する事はできない。当時は新人3組(ももいろクローバー、スマイレージ、東京女子流)と一定の活動歴がある4組(モーニング娘。、バニラビーンズ、アイドリング!!!、AKB48)の計7組が出演した。今回は必ずしも新人とは言えないものの今後注目の4組と、不動の人気を誇る3組がラインナップされた。10年前に新人として出演していたももクロが大ブレイクしてカムバックしたのも感慨深い。

地上波版ではスタジオにアイドル好き著名人としてカズレーザー、朝日奈央、DJ KOOの3名が登場。出演アイドルのパフォーマンスを見ながら、各グループの魅力について考察していった。また新人4組についてはグループを推薦するプレゼンターが登場し、注目すべきポイントを解説した。朝日はアイドリング!!!のメンバーとして前述の2010年の番組に出演しており、当時の映像も少し流れた。

BS版は地上波版よりも1時間長い拡大版だったが、著名人によるトークパートはごっそりカット。代わりに各グループのライブパフォーマンスがロングバージョンとなったほか、7組合同のトークパートやメイキングも放送された。

10年前と大きく異なる点は、最新曲以外にも各グループが複数曲パフォーマンスを披露した事だ。前回のような「新曲を披露する音楽番組の通常回」ではなかったため、より各グループの魅力を深く掘り下げる事が可能となった。以下、BS版で放送されたライブをもとに各グループのパフォーマンスについて記述していく。

7組のライブパフォーマンス

・ももいろクローバーZ
10年前はメジャーデビュー直後のタイミングで「行くぜっ!怪盗少女」をパフォーマンスしたももクロ。今回は幅広い選曲で10年の活動により培った表現力を見せつけた。「ロードショー」はEDMの要素を取り入れつつもジュリアナ東京のようなバブリーさも感じさせる1曲。コミカルな振りも楽しい「Chai Maxx」は、発売当時より肩の力が抜けた印象も受けた。志磨遼平作の「天国のでたらめ」ではシリアスな表情を見せるも、ラストは「走れ! -ZZ ver.-」で、ももクロらしく笑顔を届けた。

・BEYOOOOONDS
メジャーデビューシングルから「眼鏡の男の子」「ニッポンノD・N・A!」を披露。演劇パートや突如始まる未成年の主張、キーボードを取り入れたパフォーマンスなど、歴代のハロプロDNAをしっかりと受け継ぎつつも、何が出てくるか分からない飛び道具的な要素が面白い。フレッシュさとスキルを兼ね備えているだけでなく、大所帯を生かしたバラエティに富んだパフォーマンスも見る者を楽しませる要因だと感じる。

・=LOVE
デビュー当時は王道アイドルソングのイメージが強かったイコラブだが、「ズルいよ ズルいね」では切ないラブソングで世界観を丁寧に伝えた。新境地となった3rdシングル表題曲「手遅れcaution」では鬼気迫る表情で視聴者を圧倒。ラストのデビュー曲「=LOVE」は先程までと同じグループとは思えないほど、明るく元気を届けるパフォーマンスだった。

・モーニング娘。'20
EDMサウンドに一糸乱れぬフォーメーションダンスが印象的な「わがまま 気のまま 愛のジョーク」、ディスコサウンドにコミカルなダンスが楽しい「泡沫サタデーナイト!」、ストリングスをフィーチャーした洗練されたトラックが印象的な「ジェラシー ジェラシー」と、2010年代のシングル曲を立て続けに披露。後半は現在に繋がる躍進のきっかけになった「One・Two・Three」、一列に並んだフォーメーションが圧巻の「愛の軍団」、最新曲「LOVEペディア」と、再ブレイク以降のハイライトをギュっと濃縮したような圧巻の内容だった。

・フィロソフィーのダンス
グループを代表するディスコナンバー「ダンス・ファウンダー」と、グッと大人っぽくなったミディアムナンバー「シスター」の2曲を披露。既にメジャーデビューが決定しているがリリースは未定のため、インディーズの状態で番組出演を果たしたが、歌唱力と表現力はメジャーアイドルに全く引けを取らないものだった。

・たこやきレインボー
若手のような扱いになっていたが、今年で結成8年になるたこ虹。今回はインディーズ時代の自己紹介的楽曲の最新ミックス「絶唱!なにわで生まれた少女たち (CLUB RAINBOW Mix)」、DJ KOOが参加していた「どっとjpジャパーン!」、最新シングル表題曲「もっともっともっと話そうよ -Digital Native Generation-」と幅広い年代からの選曲だった。最近はローカルアイドルブームもすっかり沈静化してきたが、関西要素を前面に押し出したパフォーマンスは他のアイドルと被りようがなく、番組のいいアクセントになっていた。

・AKB48
番組名にも引用されている「少女たちよ」、劇場公演曲「彼女になれますか?」に続いて、怒濤のメドレーがスタート。メンバーを分散させながら、「会いたかった」「大声ダイヤモンド」「言い訳Maybe」「RIVER」「ポニーテールとシュシュ」「ヘビーローテーション」「フライングゲット」「恋するフォーチュンクッキー」「前しか向かねえ」「365日の紙飛行機」「ジワるDAYS」の11曲を立て続けに披露した。アイドルシーンを飛び越えて一時代を築いたヒット曲の数々が並べば強いのは当然で、最後に披露した最新シングルの表題曲「失恋、ありがとう」の印象が霞むほどだった。最近は以前のような勢いがないが、今一度原点と強みを見つめ直し、その魅力を改めて届けるようなステージだった。

文化として根付いたアイドルシーン

10年前は新人だったももクロがグッと成長したライブを届ける一方、今回の新人グループ勢は既に個性が確立されていてレベルが高かった。この10年でアイドルシーンが文化として根付いた事により、インディーズで頭角を現したグループがメジャーシーンへと羽ばたいていく、バンドのような流れがアイドルの世界にも定着した事が大きいと感じる。そのためメジャーデビュー時にはグループの武器が明確にある状態で、フレッシュなだけでなくクオリティも高いものになっていると感じる。

最近はアイドルシーンも一時期のブームに比べれば幾らか下火で、新型コロナウイルスによる影響も計り知れない。しかし今回のパフォーマンスを見れば更なる可能性があるのは一目瞭然で、その魅力がこのタイミングで全国放送されたのは非常に良かった。これまでの歴史からもアイドルシーンは不況に強く、人々が弱っている時に力を発揮すると言われる。アフターコロナの混沌とした状況にアイドルが何を発信してくれるのか、期待したい。

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