マガジンのカバー画像

絶対読む

12
運営しているクリエイター

記事一覧

よるまち魚編年記

「歳ちー、天国では皆が海の話をするんだってさ」
 手すりにもたれかかりながら小鳩がそんな話をするので、歳華は危うく目の前の男を突き落としてやるところだった。海原を往く船の速度はそれなりのものだから、きっと数秒で藻屑になるに違いない。
 歳華の殺意に気づいていない振りをして、小鳩はなおも笑っていた。ノットで数える風を浴びながら、遥かな海を指で差す。
「ちゃんと見ておかないと、天国での話題についていけ

もっとみる

塩ラーメンのような形をした私の幸福

※「月曜日が好きだと君は言うけれど」と「パン屋初襲撃」の間の話です。

もっとみる

有在の証明 The golden goose Experience

 あみだくじで当たったものを何が何でも戦わせる企画(4)古橋琴葉VS瀬越俊月

もっとみる

しなやかな地獄行きの作法(後編)

 織賀善一が愛車にジャガーを選んだのは、その名前が不遜で格好良かったからだ。
 ベンツとかポルシェとか色々あるみたいですけど、なんとまあやたら強い獣の名前を冠した高級車があるらしいじゃないですか? という、そんな気まぐれだった。だって、車って移動手段でもあるけれど凶器でもあるし、大抵の人間は車で轢かれてもジャガーに喰われても死んでしまうし。
 そういう共通点があるところもいい。お金さえあればそうい

もっとみる

しなやかな地獄行きの作法(前編)

(ビンゴで何が何でも戦わせる企画・織賀善一と菱崖小鳩)

もっとみる

日曜日は最悪だと世界は言うけれど(前編)

■According to Record 1

 小説を書こうと思うと途中で雑念が入り、昔好きだった小説やら漫画やらを引っ張り出して読み始めてしまうことはないだろうか? 瀬越歳華はまさにそういう人間であって、気を抜くとすぐにサボって何回も読んだ小説を捲ってしまう。この台詞好きだったなとか、こういうシーンを書いてみたいなとか、そういう邪念に囚われる。
その間一文字も原稿が進まないのだから因果なものだ

もっとみる