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なりゆき任せの人生航路 無計画主義のススメ

私の本業は「農場経営者」ですが、あまり頭を使わない単純作業労働の時はスマホでポットキャスト(インターネット上の音声コンテンツ)を聴きながら仕事をしていることが多いんです。我ながら勉強熱心ですね(笑)。

歴史を深く学べる「コテンラジオ」や、メンタルサポーターの成田儀則さんが出演している「心に刻みたい人生哲学の話」は、ほぼすべての放送(配信)回を聞いているほどのヘビーリスナーなんですよ。

ところが・・・第113回目の放送の冒頭で突然、成田さんのアシスタントの方が「先週の番組収録後、成田さんが脳出血で倒れ、急逝されましたので、この番組の放送は今回で終了とさせていただきます」と衝撃的な発表をしたのです。農作業をしながら私は思わず「えぇ~?」と叫んでしまいました。

成田さんは60歳を越えたばかりのお若い方です。男性の平均寿命までまだ20年も猶予があると言うのに、こんな突然の別れを誰が予測できたでしょうか?

成田さんはいわゆる「自己啓発系」の方ですので、仏教やインド哲学を深く学んでいる「精神世界系」の私とは必ずしも意見が同じではありません。

彼の一番の口癖は「具体的な人生計画を立てないのは、失敗を計画するのと同じことだ」でしたが、それは「個人の人生には神の定めた完璧なシナリオが最初から存在している」と信じる私とは明らかに違う信念体系の持ち主であることを意味していました。

要するに成田さんは、「具体的な目標を掲げ、自分を信じてたゆまぬ努力すればきっと誰でも幸せになれる」という「努力信仰」の人なんですね。成田さんがメンタルサポーターという仕事に就いたきっかけも、「販売の神様」と呼ばれる伝説の営業マン「ブライアン・トレーシー」の本に出会ったからだ・・・とおっしゃっていたので、彼が「ビジネス系自己啓発セミナー出身者」であることは間違いありません。

自己啓発系は私も20代前半の頃にたくさん学んだので内容をよく知っていますが、簡単に言ってしまうと「前向きに考えればすべての物事がうまく行く」というような考え方をする特徴があります。

有名な「引き寄せの法則」も、どちらかと言えば自己啓発系のカテゴリーに入る思考法でしょうね。

しかし、仏教を深く学び始めた20代後半以降は、彼らの考え方とは距離を置き、心理的に「一線を引く」ようにしています。

そんな事情もあり、番組を聴きながら「成田さん、それはちょっと違うと思うな~」とツッコミを入れるのが、私のひそかな楽しみでもあったのですね。

ただ、教育論に関しては共感できる部分が多く、実際、成田さんは引きこもりや不登校児を複数立ち直らせて来た実績のある方なので、私の中では「全面的な同意はできないけれど、人間的に尊敬できる先生」という位置づけでした。

そんな成田さんの突然死は、私の心に大きな衝撃を与えたんですね。

成田さんは毎回「自分の将来を具体的にイメージしなさい」と口を酸っぱくして言い続けていましたが、果たして彼は「自分が突然死する可能性」まで、きちんと人生の計画の中に入れていたのでしょうか?

死の直前の112回目の放送終了後、アシスタントの方と「今度は公開収録にして一般リスナーを呼びたいですね」と話をされていたそうなので、「まだまだこれからも生き続けるつもりだった」ことは明らかです。

そんな成田さんにとって「人生計画の中途挫折」はさぞや無念だったことでしょう。そんな無念な思いを抱えて死ぬぐらいだったら、最初から計画なんて立てずに「今日一日のことだけに全力で集中する」というマインドフルネス的な生き方を選んでいたほうが「死ぬ瞬間の後悔」は少なかったかもしれません。

かつて日本の武士(サムライ)は「武士道とは死ぬことと見つけたり」と言って「いつ死んでも後悔しないように腹をくくって生きること」を美徳としていました。遥か未来の計画を立てるのではなく、今日が人生最後の日だと思って「今、この瞬間」にすべてを出し尽くすことこそ最高の生き方だと考えていたんですね。

「計画を立てる」とは「明日も自分が生き続けていること」を前提にした考え方ですから、武士道やマインドフルネスとは相容れないライフスタイルになります。

「神の与えてくれた運命のシナリオ」を信じ、計画を立てずに「今日を精一杯生きること」に集中することこそが武士道、マインドフルネス、ヨーガ哲学、仏教、ヒンズー教に共通して解かれている「究極の真理」であり、「誰もが幸せになれる最も簡単な方法」でもあるのです。

今回はそんな「無計画に生きることの素晴らしさ」について詳しく語って行きたいと思います。

成田さんは常々「具体的な目標が設定できれば、潜在意識がカーナビのように自分の進むべき道を導いてくれる」とおっしゃっていました。自己啓発系の本によく書かれていることですので、この言葉自体はそれほど珍しくありません。

でも、前世から引き継ぐ「カルマ」に基づいて、我々人間には生まれながらにして与えられている「神の計画書」があります。つまり、「自分自身で目標設定をしなくても、運命のカーナビは生まれ落ちた瞬間から私たちを最終ゴール地点に向かってナビゲーションしてくれている」のです。

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