ある美術史家の講演会

数年前にある美術史家の講演会に行きました。2回ほどだったと記憶しています。

斬新な説を発表するスタイルだったので、当時はとても新鮮に見えたのでした。

彼の美術史家としての存在を否定する国立大学教授が居て、学生達に「あの男の講演を聞くな。関わったのが判った時点でゼミを追放する」と言ったという噂を聞きました。

何故なのかを自問自答した結果、私も彼からは距離を置くことにしました。講演会に行くことは二度とないでしょう。

10数年前、私は美術史を学ぶ学生でしたが、現在は離れて久しく最新の学説にも疎くなりました。つい数年前まで東京の美術館に足繁く通っていましたが、最近はそれすら難しくなりました。

言い訳を羅列することは止めましょう。
美術史にも原則がありまして、先行研究に当たること、史料を読み解くこと、実物を観ることは三大柱だと思います。

私が彼の学説を斬新と感じた理由は、彼の美術史論が先行研究の否定(もしくは無視)から入っているからでした。それを知った時、「講演会にはもう行かない」となりました。

彼の本業は美術館のギャラリートーカーだそうです。私も美術館でギャラリートーカーとしての彼の話を聴いたなら、斬新と感じることなくすんなりと受け入れられると思います。

美術に触れるきっかけとして美術館で、興味深いギャラリートークを聴いて「美術って面白い」と思い、専門的に学ぶ人が現れてと夢が膨らみます。

私が彼に違和感を抱いたのは先行研究無視だけでなく、自身の学説を否定されたら(他の研究者の学説は無視するのにも関わらず)、「断固として戦う」と何故か一人相撲を始めてしまうことでした。

議論することは戦うことじゃないのにです。
論文も出しているそうですが、読む気にもなりません。ごめんなさい。

というわけで、ギャラリートーカーとしての彼の器量は評価するけど、美術史家とは思わないよというお話でした(ΦωΦ)

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