「得意、不得意」ではなく、「苦になるか、ならないか」でもなく。

今の流行りでしょうか、
「不得意なことを努力して克服するより、得意を伸ばそう!」という考えが主流ですよね。
この考えと全く逆の生き方をしてしまった私は、この言葉を信じきれずにいます。

私は劇団員。
かつては毎日のように公演で全国行脚していましたが、出産を期に一時退職。
復帰後の今は、子どもがいるので、レギュラーではなく、夏休み冬休みなどに、ちょこっとだけ出演しています。

それ以外のシーズンは、経理事務。
役者と経理という、全く違う業務内容を掛け持ちしているので、時々「自分が何者なのか」わからなくなります。
自分にはどちらが適職なんだろうか、と。

実は、私は超あがり症。
人前でしゃべるのも歌うのも大の苦手。
むしろ、苦手を克服するために歌を習い始めたくらい。
苦手意識は今もなくならないし、もはや生涯を通じた苦行を続けているよう。
なぜ辞められないのか、自分でも謎ですが、
一生このコンプレックスと闘い続けないと、「人生の敗北者」になってしまいそうでコワイ。

毎回本番前になると、もう無理、絶対無理、
これで辞めよう、最後にしようと思う。
それでもまたやってしまうのは、ジェットコースターに乗ったあとに似てる。
どうもアドレナリン中毒らしい(笑)

一方で、成り行きで始めた経理事務は、
なんか、性に合ってる。
長時間座ってても全く苦にならないし、計算がピッタリ合うと快感。
独学で勉強した簿記は、3級は普通に合格できたし、2級もたぶん、理解はできる。

明らかに、事務の方が向いている。
「適職」だ。

若い頃、自分の適性を見極めて、「成功できる道」を選んでいたら今頃、社会的にまっとうな人生を送っていたかもしれない。
少なくとも、今より生活は楽になってたと思う。

それでも、今の道を選んでよかったと思うのは、
「乗り越える自分が好き」だからかもしれない。

事務仕事をしているのは、キチンとしていて、大人の言葉を話して、社会に馴染めるよう矯正された、作られた自分。よそ行きの仮面をつけて、本音を隠した自分。わりと、褒められる。

一方、舞台に出る自分は、本当に格好悪くて、下手くそで、なりふり構わなくて、怒られてばかりで、情け無い、素の自分。

どちらの自分にプライドを持てるかといったら、やっぱり後者なんです。
自分の本音を、自分で大切にして生きてる感じがするから。心の中の幼い原始の自分の声を、聞いてあげてる感じがするから。

どんな仕事でも、20年続けば、それなりに「適職」と呼んでもいいそうです。(誰が言ったかは忘れたけど。)

苦手と闘い続けてきた20年、
芝居は私の「天職」と呼ばせてもらおうか。

もう少し、自信が持てたらよいのだけど。
えーん。


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