若気の至り

5年前の話だ。

あの頃はまだ私も幼くて、自分の気分で簡単に人を傷つけた。

今だったらどういう風にあの時の状況を打開するんだろう。


私が大学生くらいの頃まではmixiがまだ生きていた。彼とはmixiで出会った。「おしゃれコミュニティ」略して「おしゃコミュ」なるものがあった。私は当時そこにコーディネート写真などを投稿していて、その投稿へのいいねやコメントで彼とつながったような気がする。

何年も友達だった。彼は私の仕事ぶりをほめてくれた。色々なことを彼に相談した気がする。彼は飛行機で行くしかないような遠くの地に住んでいて、会うことはなかったが、何故か「会ったことがない感覚」ではなくて、親しみを感じていた。私の考えをよく理解してくれて、いい兄貴だった。

5年前の5月。ちょうど今頃だ。彼が私の住んでいる方面に出張で数週間滞在することになった。びっくりした。「会いたいね」と話していた矢先に決まったことだった。

初めてのデートの日は、とても晴れていて日差しの強い暑い日だった。彼は仕事が忙しく、数週間の滞在期間中、休みもあまり多くなかったので、早い時間から遊びたいと言ってくれた。当時はやっていた、海の見える立地のパンケーキの美味しいお店で朝ご飯を食べるところからスタートすることにした。ただし彼は土地勘がない。泊まっていた所から、目的地までの電車乗り換えに迷い、1時間半くらい遅刻してきた。私は先にお店で受付をして、ラッキーなことに海が見える最高のロケーションのテラス席を確保したが、相方が来なくて、注文もできずにとても気まずい思いをした。

彼がお店についた。気さくな人だった。思っていたよりも、ワイルドな印象だった。パンケーキを食べてから歩いて周辺を散策した。日差しが強かったので、サングラスを貸してくれた。2ショットで写真を撮ってもらったり、お昼ご飯を一緒に食べたりして満喫した。彼が行きたいと言っていた場所があったので、電車でその方面に向かった。途中眠くなってしまったみたいで、彼が寄りかかってきた。職場の近くを通ったので、誰かに見られていないかハラハラしたのを覚えている。

水上バスに乗ったり、モノレールに乗ったり、おしゃれなカフェでふかふかのソファに横並びに座ってご飯を食べたり、カラオケに行ったりした。カラオケで、キスをした。私はもうすぐ終電の時間だった。彼は終電を逃していた。彼は翌日7時くらいから仕事だったが、まだ私といたいと言ってくれた。職場の最寄りまでタクシーで向かって、ホテルに入った。

生理だったが、次にいつ会えるかわからなかったから、セックスした。お酒も残っていて、ベッドに敷いたバスタオルは血まみれで、なんだか気持ち悪かった。


その後。彼は一度、彼の居住地に戻ってしまったが、また数週間後に、今度は数か月滞在すると行って再びこちらに来ることになった。

前回のデートから、それほど間は空かなかったと思うが、数週間ぶりに彼にあった。仕事が忙しく、休みの見通しもつかなかったので、彼の仕事後から翌日の仕事までの短い時間だ。ご飯は食べただろうか、すぐにお酒とつまみを買って、ホテルに行ったような気がする。することだけして、寝た。

これまでの関係性がとてもよかったのだ。私は彼を尊敬していたし、彼も私の話を親身になって聞いてくれた。会わなくても、良い関係が築けていたこともあって、このまま身体だけの関係になるのがとても嫌だった。

当時は気にしなかったけれど、生理なのにしたセックスもなんとなく後から後味が悪くなって、どんどん気分が下がってきた。これからの自分たちの関係のことを話すこともなく、向こうの都合で会う時だけ会って、することだけして。

彼が、夜中に私の住んでいる近くまで自転車で行きたいと言った。私はあまり気乗りせず、なんとなく断っていた気がするが、彼はそれを聞かず、うちに来た。その日は、求められた手を拒んでしまった。気まずい状態で朝を迎えて、一緒に家を出たが、私は一度も振り向かずに駅に向かった。

当然異変に気付いた彼からラインが来たので、これからのことを話さずにこの関係が続くことが嫌だと伝えた。彼もそれをわかってくれたし、これから築いていこうと言ってくれたけど、私にはそこからまた自分の気持ちを立て直すことが出来なかった。

ラインを無視した。冷たい態度で返した。

それから、彼とのやり取りはなくなった。今どこで何をしているかもわからない。もう5年も経ってしまった。

完全に、私の気まぐれであった。言葉を伝えなかったのは私だって同罪だ。嫌だったならもっと早くに伝えるべきだったし、直接話し合うべきだった。彼は本当に素敵な人だったと思う。優しい人だったと思う。

この当時、私は図に乗っていた。若かったし、自分にそれなりの自信もあったのだ。人との縁なんて簡単に切れる。ラインが途絶えればそれで終わりにできると思っていた。

向き合うべき時に向き合わなかったこと、その経験不足が、今も私を苦しめるときがある。真っ当な恋愛をしてこなかったなと、それを相手のせいにしがちだが、この時のことは、人として成長する機会を自らどぶに捨てたと思っている。

今更彼に連絡したいとは思わないけど、当時の彼に「ごめんね」と言えたらなあと思ってしまう。

当時よりは、ちゃんと血の通った人間になれているかなあ、わたし。

すいか


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