すいかの話

小さい頃、「好きな食べ物」を問われると、かならず「すいか」と答えていた。

当時は本当に好きだったのだけれど、今思うと、なぜこんなにもたくさんのおいしい食べ物で溢れている中から、「すいか」だったのかと、小学生の頃のわたしに問いたくなってしまう。

「ハンバーグ」とか「いちご」とか、そういうみんなが好きなものを書くのが嫌だったのかもしれない。当時から、自我が強くて、目立ちたがりだったのだと思う。

好きな食べ物、という質問が好きだった。「すいか」と答えることで、自分を保てる気がした。

いつからか、「すいか」がそこまで好きではなくなった。好きな食べ物を聞かれても、「すいか」とは答えなくなった。

昔は夏に、祖父の家に行くと、わたしの好物であることも知ってくれていて、大きなすいかを切ってくれた。わたしは欲張って、2切れも3切れも食べた。今はもう、1切食べれば十分だ。

きっと、世の中のたくさんの食べ物を知ったから。「すいか」と答えるみみっちさに、なんとなく恥ずかしくなったから。

それでも、私はここで名乗る名前を何にしようか、と考えた時に「すいか」がふと浮かんだ。

昔も、ネット上のハンドルネームで「すいか」と名乗っていたことがあった。ただ、ひらがなやカタカナではなんだか単純で嫌だったので、「帥香」と書いていた。漢字の意味など全く考えていない。今調べたら、「帥」には、「軍を率いる主将、将軍」「一群を率いるもの、おさ、かしら」という意味があるらしい。おいおい、結構な名前を付けたものだ。

漢字は置いておいて、「すいか」、語感も好きだし、ひらがな3文字のバランスも好きだ。

水分だけがぎゅっとつまったあまい食べ物。すいかには栄養価はほとんどないと、聞いたことがある。(実際はカロテンが豊富なんだとか。誰だよ、栄養価ないなんて言ったやつ。)


これからここで書くことは私のどうしようもなかった恋の話。それでも今の私につながった恋がたくさんある。

無理につなげる気はなかったけど、すいかみたいな恋だったな。

何言ってるか自分でもよくわからないので、さっそく書いていこうかな。


すいか



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