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#うたの日
うたの日に出した短歌90
9/3 題「臭」
東京は夜中でもずっと明るい 匂いもあれば臭いもある
9/4 題「櫛」
絡まった髪の毛雑に櫛で梳く 手持ちの時間はけっこう短い
9/5 題「秋」
秋はもうすぐそこにいる 目を離すな 離せば最後すぐ見失う
9/6 題「黒」
白が200あれば黒も200あり 白黒の街がこんなにカラフル
9/7 題「蜻蛉」
あの頃はただの蜻蛉玉でさえ俺にとっての宝石だった
うたの日に出した短歌89
8/29 題「投」
どちらとも逸れた道を正せぬまま高架下で投げる変化球
8/30 題「目」
君の目は俺の全てを見透かしてその上全てを赦すような目
8/31 題「やで」
君は変 ヤマダ電機をヤデンと呼びマクドナルドをドナルドと呼ぶ
9/1 題「用」
夜中じゅう用もないのに電話する この世でいちばん楽しい時間
9/2 題「靴」
赤い靴履いたあの子と三日三晩ひたすらジルバを狂ったように
うたの日に出した短歌88
8/24 題「晩」
人としての営み全部見ぬふりで晩飯に食うコーンフレーク
8/25 題「北緯38度線」
基本的に人との間に壁なんて無い方がいいが例外はある
8/26 題「井村屋」
あずきバー束ねてラップでくるんだら完全犯罪への第一歩
8/27 題「性」
性格が日に日に悪くなってると知りつつ惰性で見るSNS
8/28 題「蹴」
道端の石つま先で蹴飛ばして側溝に落ちたら君の負け
うたの日に出した短歌87
8/19 題「線香」
もうずっと空き家なはずのあそこから決まった時間に線香の香り
8/20 題「瓶/缶」
寝る前に明日空き瓶がいるなんて急に言うから タッパーのジャム
8/21 題「風」
ミラノ風ドリアのミラノっぽいとこを探して食べる 卵もつける
8/22 題「鉢」
50%OFFで金魚鉢買った コーラたっぷり注いでみちゃお
8/23 題「導」
人間は導体だから雷が鳴ったらお家の中にいようね
うたの日に出した短歌85
8/8 題「八」
八面玲瓏な幼なじみの横で自分が汚すぎて笑える
8/9 題「野球」
高く打ち上げたボールが太陽と一瞬重なる 小さな日食
8/10 題「自由詠」
3時間前まで付けてたエアコンの残像だけで夜を乗り切る
8/11 題「自分の故郷を詠む」
産まれた病院も住んでいた実家もふるさとは跡形もなく消え
8/12 題「飯」
1人って最高 でかい天津飯にあんかけ無限にかけてもいいし
うたの日に出した短歌83
7/29 題「貝」
私たちほんとは対じゃないみたい 場に戻される蛤の殻
7/30 題「かき氷」
炎天下にガリガリ氷を削る音 目の覚めるような青いシロップ
7/31 題「うっかり」
知り合いに渡された趣味の合わぬ服 うっかり忘れたふりして帰る
8/1 題「画家」
真っ白なキャンバス前に削り出す赤青黄色の己の命
8/2 題「パンツ」
鬼のパンツはいいパンツ強いけど ツノが弱点そこを狙え
うたの日に出した短歌81
7/19 題「素麺/冷麦」
冷麦の方が好きなの、と言う君 両者の違いがわからない僕
7/20 題「夏休み」
宿題が終わらぬと泣く妹に出店の焼きそば買って帰る
7/21 題「海」
居酒屋で1年ぶりの海ぶどう 夏のノルマ1つ達成
7/22 題「汗」
リビングの大きな窓を開け放ち汗だくで食う辛いラーメン
7/23 題「スイカ」
息できないほどの熱気が包む街 画集の上に小玉スイカ
うたの日に出した短歌80
7/14 題「温」
思ったより麺すする音が短くてじんわり染みる白石温麺
7/15 題「暮」
いけるかな? 大丈夫かな? できるかな? 日暮みたいでちょっとうるさい
7/16 題「青」
短髪に青いシャツと黒いズボン ようやくわたしは私になれた
7/17 題「名」
あなたがよく言ってた私のあだ名 別の人で上書きしてる
7/18 題「暑」
今夏は沸騰するほどに暑くうちらはまるで枝豆気分
うたの日に出した短歌79
7/9 題「早」
店頭に並ぶ極早生みかんらが冬を無理やり引き寄せてくる
7/10 題「自由詠」
熱帯夜 僅かな涼を追い求めベッドの上を転げ回る
7/11 題「メダカ」
町からはメダカも子供もいなくなり老人ホームばかりが増えた
7/12 題「眩」
フレッシュな新入社員にあてられて眩しい顔で一日過ごす
7/13 題「溺」
生きたカニを醤油の海で溺れさせ味がしみるまで十分に待つ
うたの日に出した短歌78
7/4 題「陽」
陽炎が燃え盛る夏 現し世と隠り世が混ざり溶け合っている
7/5 題「給」
初任給で父に贈ったネクタイが神棚の上で埃を被る
7/6 題「南」
一日中ずっと明るい南極でいつまでも終わらない夏休み
7/7 題「星」
一等星みたく輝く君の瞳 視線の先に俺は居なくて
7/8 題「菜」
昼食に作ったサッポロ一番を鍋のまま菜箸のまま食う
うたの日に出した短歌77
6/29 題「坊主」
朝晩が涼しくなった頃増える微妙に伸びかけた坊主頭
6/30 題「半」
甘栗の渋皮上手くむけなくてまだ半分か、と一旦絶望
7/1 題「夏」
食パンにバターと甘夏マーマレード 今日も一日死ぬまで生きる
7/2 題「ナッツ」
ピーナッツチョコを一つ 口いっぱい広がる甘さと詰まる奥歯
7/3 題「相合傘」
折りたたみ傘の存在に目を瞑り君とひとつの傘さし帰る