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『女子攻兵』というやばい漫画のやばいところ

↑こちらの記事でも書いたように、女子攻兵という漫画がほんとうに大好き。

この記事では、この漫画の個人的に「たまらん」ところを書いています。
ネタバレあります。堪忍。
(でもネタバレ読んだ上で読んでも面白いと思う。)


タキガワとラヴフォックス

タキガワは成人男性で、女子攻兵のラヴフォックスはもちろん女の子の姿をしている。それも思春期真っ只中、キラキラの女子高生の姿である。
おっさんと女子高生が一つになった状態で物語が進んでいく。

タキガワは「女子攻兵は無敵だ」
「まるでその体が自分の体のように感じるんだ」と言う。

おじさんと女子高生という組み合わせは、言葉だけ聞くといかがわしさを感じることが多いが、この漫画において「おじさんと女子高生」はそういう関係ではなく描かれている。
かといって、別に女子高生を神聖視しているわけでもなく、単純に彼女たちのもつエネルギーや不安定な心に起因する思考回路の突飛さなどが表現されているように思う。

おじさんが女子高生を体感することで発せられる言葉から、女子高生のパワーをばちばちに感じてしまう。

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上は1巻の好きなコマのひとつ。
こういう描写が不意にでてくるからたまらん……。

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大きいラヴフォックスとタキガワの描写、大好き。

あと、全巻を通してたびたび描かれる「タバコを吸うラヴフォックス」の姿も大好き。

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女子高生が喫煙するという単純な話ではない。これはおじさんが女子高生型の兵器を介してタバコを吸っているシーンなのだ。やばいな〜


タキガワとキリコ

話が進んでくると、ツキコがラヴフォックスに対して勝手に呼んできた名前、「キリコ」という存在が現実味を帯びてくる。

タキガワの過去が語られる部分では、人混みの中でタキガワとキリコがすれ違うシーンがあったりする。
さらに、タキガワは女子攻兵に乗る前は刑事で、女子高生の自殺現場を捜査した際にキリコと思しき自殺死体と会っている。

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この辺り、最終巻に向けての混乱のきっかけになるエッセンスが散りばめられてて超面白い。
そして、この女子高生(キリコ?)が「首を包丁で刺して失血死」という死に方はクライマックスの伏線になっているというところもほんとうにすごい。

個人的に、このタキガワがキリコと思しき女子高生の自殺現場に立ち会う場面は、極めて重要なシーンだと思う。
女子攻兵に乗る前であるはずの刑事のタキガワは、ここで「この女の顔…何処かで見た気がする」と言う。

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一体、何がおこっているんだ?と一気に混乱しはじめる。
おじさんが女子高生の形をした兵器に乗る、という出オチのような設定というだけではすまなくなってきた。

さらにタキガワの妻が「次元兵器(女子攻兵)がどうして女の姿をしているのか知ってる」と言うシーンもある。

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読んでいると、女子攻兵はただの女子高生“型”ではなく、ほんとうに“女子高生”なの?と考え始める。
そして、タキガワよりも妻が女子攻兵の真理を理解している。
この作品には、「女」という強烈なキーワードがへばりついている。

女。女の頭の中。

女であるわたしは、この作品の些細なシーンでも強烈に女を感じずにはいられない。執着だったり、潔さだったり、錯乱だったりする。
作者の松本次郎 先生は男なのだけど、この漫画は果てしなく「女」である。

女の頭の中はおじさんだが、いかれているおじさん。
少女の頭がぱっかり開いて、男が降りてくる。
わたしは納得してしまう。これは女だ。
女子攻兵は女という生き物だったのか。

でも、なぜそう思うのか、口では説明できないのだ。
わたしもタキガワの妻と同じだ。

混乱のクライマックス

6巻の最後でツキコの居場所まであと一歩というところまで迫ったタキガワと部下たちは、海で溺れて救助される。
目を覚ますと、タキガワは「女子高生 キリコ」としての生活を送っていたことになっている。

両親もいる、高校にも通っている、そして親友のツキコもいる。

こうして大混乱の7巻が始まった。

タキガワがいくら戦争をしていて、自分は中尉で、今は任務中だという話をしてもだれも信じない。
自分は女子高生型の兵器で、女子高生ではないと説明しても周りにドン引きされるだけ。
挙げ句の果てに、精神を病んだ少女として精神病院に入院することになってしまう。

コックピットを開けて脱出しようとしても開かない。
キリコのままでいるしかない。というか、そもそも、コックピットなんてほんとうにあったの?

これまでの戦場でのできごと、女子攻兵のこと、戦争のこと、タキガワという男の過去のこと、全てをキリコがカウンセラーに話せば話すほど、キリコが精神を患った少女にしか見えなくなる。

やばいのは、これまでいちばんまともだと思っていたタキガワじゃん。
いや、タキガワなんて男、そもそもほんとうにいたの?

7巻を読み進めていくと、こちらまで危うくなる。

クライマックスはほんとうに鳥肌ものだ。
まだ読んでいない状態でこれを読んでいる方のために、そのシーンはあえて引用しない。
ぜひ、現実と妄想の駆け引きの結末を、自分の目で確認してほしい。
わたしは読んでいて、声が出るほど興奮してしまった。

間違いなく、「漫画を読む」以上の体験ができる。

『女子攻兵』という漫画を読み終わって、今この世界がわたしの妄想ではないということを証明できないと気がついた。

実は、わたしの体は精巧な作りもので、頭のなかのコックピットで臭いおじさんがわたしを操縦していて、おじさんがイカれてしまってわたしが成り立ち、こうして生活しているのかもしれない。

上に書いたようなことは極端な話だけど、生きていると少なからず何が正しくて、誰が正気で、何が真実なのかということと戦っているはずだ。
それを踏まえて7巻を読み進めていくと、きっとこのお話の結末にいくらか救われる気がする。

そして、もしかしたらこれはツキコとキリコの友情の物語なのかも、とも思う。
ツキコはタキガワとキリコに救われている。
キリコは死んだあと、女子攻兵になって絶対にこの目的を果たせる能力のあるタキガワを選んで、ツキコを助けに行ったのが、この物語なのかもしれない。
だって、キリコはツキコの親友だから。

ぜひ、この漫画を読んだ女の人の話が聞きたい。
もし読んだりすることがあれば、わたしにもこっそり感想を教えてください。

おわり。


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