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#39.自分で痛い目に遭って見つけないとね/FIZZ - The Secret To Life

おはようございます。すっかり桜の季節になりましたね。春爛漫です。春になったということで、新しい物事をはじめた人もいるのではないでしょうか。わたしもちょっとだけ新しいことをはじめました。

新しいことというよりは、学び直しみたいな勉強ですが。あとはそれを続けていけるかどうかが問題です。このnoteみたいに、だらだらと1年くらいは続くといいのですが。noteの記事なんか書いてないで、勉強しなさいという話だけどね。


「人生の秘訣は自分で見つけなければ意味がない」とイギリスの作家サマセット・モームは『人間の絆』という小説の中で書いてます。たしかに誰かの「人生の秘訣」なるものが自分にもそのまま当てはまるとは限らない。

それはある種の薬みたいなものだから、自分に効くものだとしてもそのまま他人に効くとは限らない。だって「人生の秘訣」が必要な場面なんて人それぞれだし。

たとえば「家族を大切にする」なんて言われても、家族関係が壊れている人にとってはなんの説得力も持たないよね。あるいは「行ったことのない場所に行く」って言われても、いきなり北極とか宇宙には行けないからね。まあこれは極端な例だけど。

だから、「人生の秘訣は自分で見つけなければ意味がない」との言葉にはそれなりの説得力があります。

ならば、わたし個人が持ち合わせている「人生の秘訣」とはなんだろうと考えたんだけど、すぐには答えられない。そりゃそれなりに今までの人生で失敗したり、痛い目にあったりしてるから、「人生の秘訣」みたいなものは暗黙知的にあるのだろうけど。

「人生の秘訣」を英語で言うと"The Secret To Life"。"Secret"には「秘密」との意味もあるけど、「秘訣」という意味もある。どちらも、自分の心の内側にそっとしまっておくもの、みたいなニュアンスがありますね。

だから「人生の秘訣」だって、本当はあまり他人にベラベラとしゃべり散らすようなものではなく、「自分の心の内側」にそっとしまっておいて、ときどき自分でそれを見返すくらいに留めておくくらいがいいのかもしれない。個人的な経験に基づくものだしさ。

その「人生の秘訣」というタイトルのFIZZの"The Secret To Life"という曲は、わりと抽象的な歌詞内容という印象を持ちます。

FIZZ - The Secret To Life

抽象的とは言葉にして説明するのが難しいということでもありますね。この曲のレトロポップな音楽性と抽象的な歌詞内容、それにどこか幻想的な公式動画は「人生の秘訣」なんて簡単に他人に見せられるものでもないと指し示しているようにも思えます、たぶん。

"The Secret To Life"は「人生の秘訣」と訳されますが、ここではこれをそのまま「人生の秘密」と訳しても、それなりに意味が通じそうな感じもします。自分の人生には秘密があるけれど、それをやたらに他人には見せない。ここで歌われている「あなた」にも。

「人生の秘訣」は「人生の秘密」でもある。やたらと他人に見せたり聞かせたりするものでもない。それはとても個人的なものだから。

けっきょくは、モームのいうように「人生の秘訣は自分で見つけなければ意味がない」。自分でいろんな失敗をして、いろんな痛い目に遭わないとわからないことってあるから。

そしてその経験をそっと胸の内にしまっておけば、「人生の秘訣」というものはそっと湧き水のようにしみ出してくるものなのかもしれない。それは「あなた」個人の内側をそっと温めて、これからの人生の糧になるのかもしれないよ。

とは思っているんだけど、同じような失敗を繰り返して、同じような痛い目に何度も遭うんだよね。いつも締め切り日ギリギリに追い込まれるように小説を書くとかさ。

これはもうどうしようもないのかな。教訓としては「時間に余裕を持って締め切りよりもずっと前に執筆に取りかかるようにしよう! そうすれば心にも余裕が生まれる! これが執筆の秘訣だ!」、なんてことはわかってはいるんだけどね。

ちなみに、サマセット・モームの『人間の絆』の原題は"Of Human Bondage"。この"Bondage"には、「拘束」や「束縛」、果ては「奴隷状態」といった意味があります。「囚われの状態」を示す言葉。どちらかといえばネガティブなイメージの意味。

一方、「絆」というと、今では「信頼や親愛関係による強い結びつき」みたいな意味が含まれていますよね。「家族の絆」というと、どちらかといえばポジティブなイメージがついてまわります。

けど、もともと「絆」の言葉に「牛馬などをつなぎとめておく綱」との意味があり、そこから「人と人との断ち切れないしがらみ」との意味に転じた。だから、「絆」という言葉には「拘束」や「束縛」のようにネガティブな意味が、本来は込められている。

以上を踏まえて考えると、サマセット・モームの小説・"Of Human Bondage"というタイトルを『人間の絆』と訳すと、現代ではちょっと組み合わせが悪い感じもしますね。昔はわざわざいろいろと説明しなくても通じるものがあったのかもしれないけど。

モームの"Of Human Bondage"は、たしかにいろんな人間との関わりを描きますが、どちらかといえばそれはネガティブな関わり。光文社の古典新訳文庫では、この作品の新訳のタイトルは『人間のしがらみ』。こちらの方がタイトルとしてはピッタリにも思えます。


※ひつじのはなし|Good Morning! Musicは、水月羊(the Maverick Black Sheep)が大胆不敵にも音楽(主に洋楽)エッセイを書こうという目論見と試みです。洋楽の曲を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。


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