#17.オレはとんでもないワルだぜ!/Chase & Status, Bou - Baddadan (ft. IRAH, Flowdan, Trigga, Takura)

おはようございます。昔はよく「不良」と呼ばれる存在がいましたが、いまも「不良」っているのかな。呼び方が違うだけで、確実に非行少年的な存在はいるんだろうけど。

わたしが住んでいる街は地方にあるので、暴走族も非行少年的な存在もちゃんといて、ときどきニュースになったり警察沙汰になったりしています。でも、そういう人たちを「不良」と呼んでる感じはない。

まあ、さすがに人間に対して「不良」って言い方もどうなのかという気もしますが。というわけで、今朝は新作です。


一定年齢以上の人なら「ワルに憧れる」という概念というか感覚は、説明抜きになんとなく理解できるんじゃないかな、おそらく。「ワルに憧れる」、つまりは学校の不良的な存在に憧れるし、学校の不良的なふるまいに惹かれる、みたいな感じになるかと思います。

学校の先生に反抗したり、夜の街を徘徊したり、大人の目を盗んでタバコを吸って酒を飲んだり。そんなふるまい自体と、そのふるまいを平気でできる人に憧れることが「ワルに憧れる」ってこと。

もっと古くなると、学生カバンを針金で巻いて熱湯かけてぺちゃんこにして、髪型をリーゼントにして長ランを着るみたいな。さすがにそういう不良は、今では本当に化石みたいなものだよね。田舎なんかに行けばまだ生き残ってるのかな。

とにかく話を戻すと、「ワルに憧れる」と言っても、本当に「ワル」になるんじゃなくて、ただ単に憧れるだけ。多くの生徒は本当に学校の校則に反抗したり、大人の目から逃れる勇気も度胸もないからね。わたしを含めて。

けれど、そういう校則や大人に対する反抗心や反発心みたいなものは、本物のワルだけじゃなくて、多くの生徒が持ってるから、そこから平気で逸脱する不良的な存在とふるまいに憧れるのかもしれないね。

そういうところでは不良もまた「オレってワルだからよぉ」と自己認識し、同時にまた自己顕示しているわけです。学校的なところだと、「ワル」というカテゴリーが一定の共通理解と認識のもとに確立されている。大げさに言うとそういうことになるんじゃないかな。

Chase & Status & Bou の"Baddadan"も、ある意味、そういう「オレってワルだからよぉ」といった自己認識と自己顕示をしている曲。

Chase & Status, Bou - Baddadan ft. IRAH, Flowdan, Trigga, Takura

バダダン!バダダン!バダダン!というリフレインがクセになるこの曲、「オレはとんでもないワルだぜ!」と言ってる曲です。

上記の公式動画を見ると、日本の不良なんかよりもずっとハンパない筋金入りの「ワル」を感じます。役者の演技なんだろうけど、不穏さと危険さがあふれ出ている。こんなところに日本の「不良」なんか投げ込んだら、飢えたライオンの餌食みたいなことになりそう。

この曲を作ったChase & Statusはイギリスの大学で出会った二人なので、本物の「ワル」というわけではないと言っていいと思う。けど、イギリスにもちゃんと、こんな感じの「ワル」はいるのだろう。

だから、この曲は深刻な格差による階層の固定化と、その格差による鬱屈が「ワル」を生み出している、みたいな問題意識だってあるかもしれないけど、さすがにそこまではこの曲単独からはわからない。

ところで、「ワルに憧れる」のは、学校に通うような年齢の人たちの特権的な意識ですね。大人になると、とりあえずは自由に夜の街を徘徊できるし、お酒もタバコも楽しめるから。それは体には悪いかもしれないけど、不良的な「ワル」のふるまいではないし。

だから、逆にいい大人が「オレってワルだからよぉ」と自己認識して自己顕示しても、なかなか「ワル」になるのも難しいものがありますね。いい年齢の大人が本物の「ワル」になるなら、会社のカネに手をつけるくらいしかない!?


※ひつじのはなし|Good Morning! Musicは、水月羊(the Maverick Black Sheep)が大胆不敵にも音楽(主に洋楽)エッセイを書こうという目論見と試みです。洋楽の曲を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。


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