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#36.いつか年齢を重ねて賢くなったとき/Avicii - Wake Me Up

おはようございます。いろいろとあわただしくなる年度末を迎えました。ただ、太陽の光が地上に出ている時間が少しずつ、でも確実に長くなってきてますね。冬の苦手なわたしとしては、本格的な春が来ることを待ち望んでいます。

ところで、春が来るといえば花粉症。2月も半ばを過ぎると、多くの人々が花粉症に悩んでいますね。けどですね、わたしには花粉症がないので、この時期は実に快適です。少しずつ暖かくなるし。いつかそのうちに花粉症が発症するのかな。

というわけで、今朝は旧作。2023年2月22日にX(旧Twitter)へ流した文章の大幅加筆修正版です。


ある種の人は若い頃に戻りたいという願望を抱いているみたいです。もちろん時間は後戻りできないので、若い頃に戻るのは不可能。だからこそ、永遠に叶わない願いのひとつとして「若い頃に戻りたい」といった願望があるのかもしれない。不老不死を願うみたいに。

わたし自身、「若い頃に戻りたいか?」と聞かれると、「もちろん!」と屈託なくこたえられる自信はない。若い頃って未熟で失敗だらけだし、若いがゆえにいろいろと痛い目にもあった。もちろん、若い頃だからこその楽しいこともそれなりにあったけど。

いつまでも若いままの自分でいたいと思うのは、人間の本能的な欲望なのかもしれないと思うことがあります。若いことって大変なことだらけだけど、やっぱり体力もあるし未来への可能性も大きく広がっているように見えるからかな。

ところで、「若い頃に戻りたい」と望むことと「若くなりたい」との願望のあいだには大きな隔たりがある、ような気がします。「若い頃に戻りたい」というのは、自分が二十歳だとか十代後半の頃にもう一度戻りたいという願望。まあ健全な願望のような気がします。

一方で「若くなりたい」と願うのは、少々いやらしいというか下心があるような気がする。同年齢の人間の中で自分だけが若々しさを保ちたいし、若々しく見られたいみたいな、他人と比較して優位に立ちたいといった願望が透けて見えるように感じるからかな。

そんなことを言いつつ、入浴後に化粧水や保湿クリームを顔に塗る自分はいったいなんなんだという気もしますが。これは若さを保ちたいというよりはスキンケアだからセーフ。そんなふうに自分に言い訳するところがまたいやらしさを感じますね。

ところで、若い頃に「早く年齢を重ねたい」「早く年を取りたい」と考えている人って、圧倒的に少数な気がします。当たり前だけど、若い頃は年齢を重ねた自分なんて想像もできないし、今の若い時間がいつまでも続くように思えるからね。

Aviciiの"Wake Me Up"は、自分がもっと年齢を重ねて賢くなってから「起こしてくれ」と願う曲。もっと言えば、若くて未熟な自分のまま、もう少しいさせてくれと願う内容だとも言えそうです。

Avicii - Wake Me Up (Official Video)

この曲では「年を取ってもっと賢くなってから目覚めさせてほしい」と歌います。今はまだ若くて夢を見ているところだから。そんなふうに若さを楽しんでいる曲でもあり、そしていつまでも若いままでいたいとも願っている曲でもある。

それでも曲の最後では、「ずっと本当の自分を探していた。自分が迷っていたことに気づかずに」と繰り返し主張します。いつまでも若いままでいたいという願望を抱きながらも、時間が経つに連れていつまでも若いままでいられないと、ふと気づくときがきた。

若いときの自分は自分自身をしっかり把握して、大人へと続く道を自分なりにちゃんと手綱を握ってまっすぐに進んできたと思っていたけれど、この若さもいつか失われるとふと気づいたとき、実は自分がずっと道に迷ってさまよっていたことにも気づいた。

だからこその一抹の寂しさ、みたいなものを感じるわけですね、この曲に。いつまでも若いときは続かない。いつか大人になるときが来る、みたいな確信がこの曲の根底にあるとも言えるから。

それはこの曲の主人公だけじゃなく。わたしをはじめみんなが通る道でもあります。まあ、中にはうっかりぼんやりしていて、いつまでも若いままのつもりの人もいるかもしれないけど。わたしはそういう年齢の積み重ねに気づかない人には痛い感じを覚えますが。

話を戻すと、この曲の主人公自身、若い自分はしばらく未熟なままでもいいと確信している。だから逆説的に「年をとってもっと賢くなってから目覚めさせてほしい」と訴えている。いつか必ず若さが失われるときが来ると確信しているからこそ。

だから、この曲はそういう若くて未熟な自分を肯定する曲とも言えそうです。今この瞬間の自分をめいっぱい生きよう、みたいな肯定です。未熟で失敗だらけでも、それがいつか自分の糧になるからね。

ある程度、年齢を重ねたわたしは思うんだけど、どんな年齢になってもけっきょくは未熟で失敗だらけでもあるんだよね。もちろん、年齢を重ねただけの経験や知識はあるから、以前と同じ失敗をしない(することもある)けど、基本的には人間はいつまでも未熟。

年齢を重ねても失敗は繰り返すし、それなりに痛い目には遭うし、大変なことばかりですよ。本当に年を取って賢くなることってあるのかな。

ところで、「ある程度、年齢を重ねたわたし」とさっき書いたけど、本当はいくつなんだよと思う方もいらっしゃるとは思います。わたしは心だけは永遠の十七歳ということで(冷や汗が流れ、目が泳ぐ


※ひつじのはなし|Good Morning! Musicは、水月羊(the Maverick Black Sheep)が大胆不敵にも音楽(主に洋楽)エッセイを書こうという目論見と試みです。洋楽の曲を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。


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