#19.恋人と過ごす時間、過ごした時間/September - "Cry for You" + Charli XCX - "Beg For You" feat. Rina Sawayama

おはようございます。9月ももう下旬にさしかかっています。時間の流れは容赦なく早い。今日は2曲を取り上げて、時間の過去と現在について考えをめぐらせます。いつも祝日にやってる特別版の代わりと言っちゃなんですが。

考えてみれば、今日は祝日と祝日とのあいだに挟まれた平日でもあります。年によっては祝日と土日の配置が絶妙になり、シルバーウイークなる大型連休的な頃。今年のカレンダーはあまり気の利かない並びなのが残念です。


時間というものは、わたしがわざわざ言うまでもなく不思議なものです。手に取ってその手触りや重さを実感することもできなければ、「これが時間だよ」と他人に向かって指し示すこともできないものです。けど、確実にここにあるような感覚を抱いていますね。

それにもうひとつ確実と思えるようなことがある。それは自分の持つ時間が、文字通り時々刻々と少なくなっているということ。例えば一日の時間だって、うっかりしているとあっという間になくなってしまった! と気づくのは日常茶飯事です。

だからこそ、時間を有意義に使いましょうという呼びかけというか説教というか、そういう正しい主張はよくわかります。わかってはいるんだけど、どうしてもね、生活していると24時間をムダなくきっちり使い切れるわけでもないのもよくわかる。

余談だけど、小説書くのもエッセイ書くのも時間のムダじゃないかよ! って言われると、まあそうですよ? としか言いようがないんだけどね。まあ、こればかりはしょうがない。他人からムダに見えても、その本人にとっては豊穣な時間というのも存在するので。

そんなふうに同じ時間でも自分と他人ではまったく捉え方も感覚も異なるのが時間の不思議なところ。

だから、恋人と付き合って別れたあと、恋人と費やした時間をムダと考えるか豊かな時間だと捉えるかで、その人の人間性がわかるってものですよ。おそらくは。

何事からも学びとる姿勢があれば、どれほどひどい別れ方をした恋人と費やした時間でも、ムダだとは思わないんじゃないかな。今度あんなひどい男みたいな奴と恋愛関係になって、またひどい目に逢ったら、指の一本でもへし折ってやる! みたいなね。

さて、septemberの"cry for you"も、恋人との別れを歌った一曲です。septemberというのは、この曲を発表したときのステージネームで、今はPetra Marklundという本名で歌っているようです。

September - "Cry for You"

この曲では「ずっと今しかない」、「永遠はけっして来ない」と繰り返しています。別れる以前から、恋人の心が自分から離れていたのはわかっていた。だから、恋人は二度と自分と会わないだろうと確信しています。

見方を変えれば、心の離れた恋人はもういなくなってスッキリした。これからは何をするにしても自由。

だから、この曲で繰り返される「ずっと今しかない」、「永遠はけっして来ない」というフレーズも、心身ともに軽くなった今この瞬間を楽しもうと自分に言い聞かせているようにも聞こえます。

この曲に出てくる"forever and ever"とは「永遠に」、もっと口語的にいうのなら「ずっとずっと」あたりになるのかな。また、"now or never"とは「今しかない」、ちょっと昔に話題になったコマーシャル風にいうと「今でしょ!」みたいな感じ。

だから恋人が去った悲しみに暮れて、この苦しみが永遠に続くかもしれないなんて思うより、今という瞬間はまさに今しかないんだから、過去を吹っ切って今を充実させていくしかない、せっかく身軽になったんだから、みたいな解釈をしたいと思います。

ちなみに、このSeptemberの"Cry for You"をサンプリングした曲が、Charli XCXの"Beg For You (feat. Rina Sawayama)"。

Charli XCX - "Beg For You" feat. Rina Sawayama [Official Video]

こちらのタイトルの"Beg For You"とは、直訳すれば「あなたに懇願する」。自分ひとりだけを置いて行かないでと懇願している、みたいな感じでしょうか。

歌い出しの部分で、恋人が飛行機に乗らなければいけないたびに、あなたを空港まで送っていっていいですか? とたずねているので、決定的な別れというよりも恋人が出張か何かでしばらく家を空けるのが寂しい、みたいな雰囲気です。

恋人同士で過ごす時間は、それだけかけがえのない濃密なもの。だからこそ、恋人とのしばしの別れが寂しい、だから少しだけでもそばにいてほしいというのはわかります。恋人とともに過ごす時間は、手に取って重さや温度をたしかめられそうなほど豊かさがある。

だからこそ、恋愛中のしばしの別れが寂しい、だから置いていかないで、みたいな感じで甘えているわけですよ。こういう人は恋人と別れたあと、恋人と費やした時間をムダと考えるか、それとも何か得るものがあったと考えるか。まあ、人によるんだろうけどさ。


※ひつじのはなし|Good Morning! Musicは、水月羊(the Maverick Black Sheep)が大胆不敵にも音楽(主に洋楽)エッセイを書こうという目論見と試みです。洋楽の曲を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。


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