#28.けれど、天使は甘やかしてくれない/Sub Focus, Dimension - Ready To Fly

おはようございます。

ところで、11月ってちょっと印象に欠けるところがある月ですよね。今では10月というとハロウィンだし、12月となるとクリスマス。それらの華やかな月に挟まれて、11月はちょっと肩身が狭い思いをしてるのかもしれない。

それぞれの月が集まる会議の場で、11月ももっと華やかなイベントが欲しいと訴える。1月、2月、3月あたりは「こいつ何言ってるんだ」みたいな顔だけど(正月、バレンタインデー、卒業式の時期だから)、6月あたりが同情的になってくれるかも?

と思ったら、ブラックフライデーがありましたね。これこそ商業主義ど真ん中イベントです。クリスマスやハロウィンだってそりゃ商業主義的な側面はあるかもしれないけど、それでもそこには商業主義では割り切れない宗教的色彩を帯びた神聖さがあるのもたしか。

けっきょく11月は肩身の狭い思いをいつまでも抱かざるを得ない月だという運命を背負っていくしかないのかもしれないね。

今朝は2023年1月25日にX(旧Twitter)へ投稿したツイートを、大幅加筆修正したものです。


空を飛びたいという願望は人々が長年抱いてきた願望です。それが気球や飛行線を生み出し、飛行機を作り出し、そして今や誰もが安全で快適な空の旅を楽しめる時代になりました。みたいな話は前もしたっけ? まあ細かいことはいいや。

もちろん、物理的に「空を飛ぶ」のもそうだけど、それ以上に抽象的、比喩的、イメージ的に「空を飛ぶ」ことも人々は望んでいますね。ここではない場所を求め、それも地上ではなく空の高みにまで飛んでみたい、みたいな願望。

もっと高みに上り詰めたい! というと、鼻息の荒いベンチャー企業の社長みたいなイメージになってしまいますが、たとえば小説を書く身として考えると、やっぱりすごい小説を書いて、みんなに読んでもらって驚かれたい、みたいな願望はあるのですよ。これでも。

そういう意味での「空を飛びたい!」という願望のイメージ、わかってもらえたでしょうか? もっと高みにのぼり詰めたいみたいな意味合いの「空を飛びたい」という願望は、多くの人々が抱いているんじゃないかな。多くは仕事や趣味の分野で。

それは場合によってはとても俗っぽい願望だけど、それでもそんな願望を抱いてるだけじゃ、いつまでも実際に高みにのぼることは難しい。それなりの努力や準備が必要になるわけです。小説なら執筆しなきゃ叶わないし、仕事も準備や段取りが必要となりますね。

それはたとえば恋愛関係においても同じかもしれない。二人の関係をもっと高みに持っていきたい、空を飛ぶようにもっと発展させたい。それは肉体的なものだけではなく、強く精神的に結びつきたい、そうすればもっと深く理解しあえる、みたいな願望を抱きますね。

その願望を叶えるためにも、仕事や趣味と同じでやっぱりいくらかの準備や段取りも必要となります。物事の行方をただ成り行きに任せても願いが叶うわけがない。それなりの準備や段取りができて、安心して空の高みに飛び立つことができるってものですよ。

Sub FocusとDimensionの"Ready To Fly"、タイトルを直訳すれば「飛ぶ準備はできている」みたいな意味になります。

Sub Focus, Dimension - Ready To Fly (Official Video)

この曲は「私の心は飛ぶ準備ができている。だから翼をください」と願う歌です。これだけだと小学校や中学校の合唱曲みたいな感じですが、この曲はそういった子どもっぽい純粋な願いを歌っているわけではなく、切実さみたいなものが潜んでいますね。

その切実さというのは、相手ともっとわかり合いたい、理解し合いたい、そのためには二人で空を飛ぶしかないといったような切実さ。

ある程度の年齢を積み重ねた上で、傷つき痛みを覚えたあとでもなお、それを求める切実さみたいな。この曲の冒頭にある"海の奥深くにある深い闇"みたいなものが、「私」の足元にどうしようもなく存在している。簡単には振り払えないほどに。

けれど、その一方で、空では天使たちが私を呼んでいる。足元で海の深い闇の広がる「私」が、天使に向かって翼が欲しいと願います。

ところがですね、天使という存在は人間へ翼を分け与える存在ではないのですよ。天使に「翼が欲しい」と願っても、天使だってそう簡単に翼なんてくれるわけでもなく。天使だってそうそう簡単に人間を甘やかす存在ではないのですね。

それは子どもが無邪気に「翼が欲しい」と歌うような純粋さは、大人だからもはや失われているからなのでしょう。だからこそ、大人はまず自分の力で足元に広がる海の深い闇に対処しなきゃいけないし、翼を手に入れる準備をしなければいけないわけです。

「私」はさらに願います。「今夜一瞬だけ必要だから、翼をください」と。一瞬だけ空を飛んで「私」は何を得ようとしているのか。あるいは何から逃げようとしているのか。けれど、天使は甘やかしてくれない。だから、切実に願うしかないのかもしれない。

もしかすると足元に広がる深い海へ飛び込もうとしながらも、ためらっているのかもしれない。そんな想像さえも広がりますが、この曲の中ではそこまで明かされてはいません。だからこそ、その切実さが想像させる何かを、聴く人それぞれが描く曲とも言えそうです。

いやまあ、「空を飛びたい」だとか「翼が欲しい」だとか「一瞬だけ必要」だとか、そこまで深い意味はなくて、単にセクシャルな意味かもしれないという可能性だってあるんだけどね。


※ひつじのはなし|Good Morning! Musicは、水月羊(the Maverick Black Sheep)が大胆不敵にも音楽(主に洋楽)エッセイを書こうという目論見と試みです。洋楽の曲を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。


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